断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。

みちこ

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 ラッセルの安全は確保出来るかもしれないけど、問題はロベルトとの婚約よね。

 ロベルトは婚約解消を賛成するかもしれないけど、ロベルトの母親と王妃様は猛反対する可能性がある。

「私とロベルトの婚約解消はどこまで話が進んでたのですか?」

「妻とサレルノ侯爵夫人には、婚約解消の提案をしたところだったんだ。2人はどっち付かずって感じの返答だったな」

「そうなんですか?ラッセルが生まれたことで、跡取りになる可能性が低くなったので賛成すると思ってましたわ。あの人達は私個人を気に入ってる訳ではありませんでしたから」

 ロベルトを溺愛してる2人は、ロベルトに近付く異性に良い感情がなかった気がする。

 私に対しても棘々しかったのよね。

 自分達が私を選んだくせに、私を嫌うって理不尽よね。

 ロベルトを公爵家の当主にするために私は必要だけど、異性としては近づいて欲しくないって感じかしら?

「ローラとルークが後継者を公表してなかったから、エレーナとの婚約を完全に切り捨てることは出来なかったんだろうな。もしもエレーナが次期当主に選ばれたら、勿体ないって思ったんだと思う」

 そう言うことなのね。

 確かにお父様達はまだ次期当主を発表してなかった。

「何で公表しなかったんでしょうか?」

「ラッセルを当主にするのに迷ってたからだろうな」

 伯父様はそう言って、ずっと黙って話を聞いてたラッセルの頭を撫でる。

 ずっと大人しかったから忘れてたけど、この場にはラッセルも居たのよね。

 ラッセルにも私の気持ちを知られてしまったんだわ。

「俺が頼りなかったせいなの?俺が強かったら姉上はアラン兄と結婚出来たの?俺が姉上を不幸にしてたの?」

 ラッセルの顔が真っ青になる。

 ラッセルは責任感が強いから、自分が許せないのかもしれない。

「ラッセル違うわ!!貴方は何も悪くないの。お父様は貴方に期待をしてたわ。ラッセルが自分の後を継いでくれたら、凄く嬉しいってよく言ってたのよ」

「でも父上は俺を跡取りにするのに迷ってたって」

「確かに迷っては居たよ。ラッセルは感受性豊かだから、もしもこのまま当主になったら、ラッセルが傷つく日が来るんじゃないかって、ルークとローラはとても心配してたんだ」

 その気持ちよく分かる。

 ラッセルは人の痛みも自分のことのように受け止めることがある。

 人としては優しくて良いことだけど、当主になるならその優しさが邪魔になるときもある。

 相手のことを考えすぎるせいで、大勢を助けるために1人の者を見捨てないといけない時に、優しすぎるラッセルでは見捨てることが出来ないかもしれない。

 当主は時に冷徹じゃないといけない時がある。

「俺の性格では、当主は無理ってことなの?俺は父上みたいな当主になりたい。皆が笑顔で暮らせるように支える人になりたい」

「ラッセルの優しさは人としては長所なのよ。だけど当主になるには短所になってしまう可能性があるの」

 でも当主として優しさを捨てて良いわけでもない。

 優しい一面が一切ない人に人はついてこない。

 当主として、領民に慕われることはないわ。

 当主が暴君では絶対に許されない。

 領民は恐怖から従うだろうけど、困った時に協力をしてもらえなくなる。

「なら俺はどうしたらいいの?今の俺ではダメなんでしょ?俺は自分のせいで姉上の人生を潰したくない。変わらないといけないなら、俺は今の性格だって変えてみせるよ。俺は男として姉上を守らないといけないんだ」

 ………この子はいつからこんなに頼もしくなったのかしら?

 ちょっと前まで甘えん坊で、私の後ろに隠れて居たような弟だったのに、最近は反抗期で昔みたいに甘えてくれなくなっていたけど、辛いことや寂しい時は私のそばに来て安心してた弟だったのに、弟もちゃんと成長してましたのね。

「ラッセルは偉いな。でも焦る必要はない。人には向き不向きがあるんだ。ラッセルにはまだ5年はあるんだから、それまでにどうするかゆっくり考えなさい」

「それだと姉上をずっと束縛することになります。俺が継ぐかどうかで、姉上の結婚もガラッて変わりますよね?」

 確かにラッセルの言うことは間違ってない。

 もしも私が跡取りになるなら、婿を適当に選ぶのは良くない。

 跡取りになるなら途中で離縁するわけではないから、死ぬまでずっと私の夫になる相手を選ぶ必要がある。

 アランを完全に諦める必要もある。

 アランの妻になる人と私の夫になる人が、愛人を賛成派なら問題ないかもしれないけど、そんな都合がいい話は少ない。

 貴族は愛人が居て当たり前って考えではあるけど、それが内心で思ってるかは別問題ですもの。

 逆にラッセルが継ぐまでの中継ぎだったとしても、相手選びは慎重に選ばないといけない。

 離縁することは確実になるだろうから、その時に相手がゴネられたら困る。

 離縁する時に相手のメリットが必要になる。

 大抵は金銭面で何とかなると思うけど、相手が侯爵家の婿って地位に執着する可能性もあるのよね。

 どちらを選んでも面倒臭いことに違いはないわね
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