断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。

みちこ

文字の大きさ
9 / 12

しおりを挟む

 ここは何処だろ?

 私は初めて見る場所なのに、何故か懐かしく感じる部屋に佇んでいる。

 部屋の中を見回してると、ドタドタと階段を上ってかる足音が聞こえてきて、私は慌てて隠れる場所を探す。

 今の私って絶対に不法侵入よね?

 公爵家の娘である私が不法侵入で捕まるなんて、家に泥を塗ってしまうわ。

 これから家を継ぐことになるんだから、そんなことが起きては絶対に駄目よ。

 隠れる場所が見つからないまま、部屋のドアが開いてしまう。

 部屋に見慣れない服を着た女の子が2人入ってくる。

 終わった…………

 目を瞑って叫ばれるのを覚悟するけど、何時まで経っても叫び声は聞こえてこない。

 それどころか2人の会話が続いていた。

「ねぇ~、紹介した小説どこまで読んだ?」

「私はロベルトが婚約破棄を決意したところだよ」

「じゃあ終盤に差し掛かってるね。あの小説のアニメが始まったけど見た?」

「まだ見てないよ~~。だって小説より先にアニメが進んだらやだもん」

「大丈夫だよ。アニメの最新話はロベルトがモニカへの気持ちを自覚した場面だから、まだまだだから小説を読み終わるほうが先だよ」

「じゃあ見ようかな?」

 ロベルト?

 モニカ?

 それって私の婚約者と婚約者の恋人と同じ名前だわ。

 偶然でもすごいわね。

 それと2人には私の姿が見えていないみたいだわ。

 何がどうなってるのかしら?

 自分がどこに居てどうなってるのか理解できずに、何処に向かえば帰れるのか分からないから、何かヒントがあるかもしれないと思い2人の観察を続けてると、手のひらサイズの何かを大きい箱に向けると、大きい箱から人の姿が浮かび上がる。

 絵のようだけど絵では決してなかった。

 私の知ってる絵はあんなふうに動いたりはしない。

 ここは一体何なの?

 見たこと無いものばかりあって、見たこと無い服を着てる女の子たち。

 私は不思議な世界に迷い込んでしまったの?

「梨花はもうアニメ見てるんでしょ?」

「見たよ~」

「今回は当たり?小説のイメージ通りだった?たまに外れがあるでしょ」

「私はイメージ通りかな?モニカは可愛いし、ロベルトもカッコいいよ。声も理想通りかも」

「へぇ~、じゃあ、悪役令嬢のエレーナはどうなの?」

 私の名前?

 悪役令嬢って何?

 こんなに偶然って重なるの?

「無駄に美人過ぎかな?悪役令嬢なのに儚げな美人だよ。セクシー系かな?」

「セクシー系なのに儚げな美人なの?ちょっと矛盾してるよね?儚げな美人ってセクシー系とは程遠いイメージなんだけど?」

「それが矛盾してないの!!色白で華奢だから儚げな美人なんだけど、胸は大きいし、左目の下に泣き黒子があるからセクシー系なの」

「あ~~、それなら理解できるかも。泣き黒子があるだけでセクシー系に見えるよね。華奢なのに胸が大きいのもポイントかも」

 …………胸が大きくて、左目の下に泣き黒子。

 名前も一緒で容姿も一致するなんて、どれぐらいの確率なのかしら?

「これこれこれ!!どう?タイトル画面だけでも理想通りじゃない?これで性格も良かったらエレーナもモテると思うんだよね~」

「確かにそうかも~~、でもエレーナの気持わかるな~、自分の婚約者に女がベタベタしてたら、普通は苦言ぐらいは言うよね?虐めや嫌がらせがヤバすぎるけど」

「それはそうかも。でも好きな人に婚約者が居て、婚約者と仲悪いって有名だったら、近付きたいってモニカの気持ちも分かるんだよね~、一般庶民の私には婚約者と仲悪いって言うのが理解できないけど~」

「そうなんだよね。婚約してるならお互いに好きって言うのが普通だもんね。お金持ちとかだとよくある事なのかな?」

 彼女達の話を聞きながら、私は大きい箱にうつる絵から目が離せなくなった。

 箱には私とロベルトとロベルトの恋人の絵が写し出していた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

妹ちゃんは激おこです

よもぎ
ファンタジー
頭からっぽにして読める、「可愛い男爵令嬢ちゃんに惚れ込んで婚約者を蔑ろにした兄が、妹に下剋上されて追い出されるお話」です。妹視点のトークでお話が進みます。ある意味全編ざまぁ仕様。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

姑に嫁いびりされている姿を見た夫に、離縁を突きつけられました

碧井 汐桜香
ファンタジー
姑に嫁いびりされている姿を見た夫が、嬉しそうに便乗してきます。 学園進学と同時に婚約を公表し、卒業と同時に結婚したわたくしたち。 昔から憧れていた姑を「お義母様」と呼べる新生活に胸躍らせていると、いろいろと想定外ですわ。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

処理中です...