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しおりを挟む箱の中の私とロベルトとロベルトの恋人は絵だと思ってたのに、普通に動いて話している。
まるで箱の中で生きてるように動いている。
あれは何なの………
意味がわからなくて恐怖で固まってると、急に頭が痛くなり私はその場で蹲る。
………………全て思い出したわ。
あそこにいる梨花はもう一人の私だわ。
そして今は小説の登場人物の1人である、悪役令嬢のエレーナ•ステファンでもある。
こんなことってあり得るの?
私は小説の世界の中に生まれ変わったんだよね?
梨花である私が亡くなった記憶はないけど、梨花は亡くなって私はエレーナとして転生したのかしら?
ここは私の記憶の一部のはず、小さい頃から仲良かった親友とあんな会話をした記憶がある。
梨花だった頃の私はファンタジー系の恋愛モノが大好きだった。
特に私が転生した世界が舞台になってる小説はお気に入りで、ロベルトとヒロインのことを推していた。
今ではロベルトのどこが良いのか理解できないけどね。
前世(?)の記憶を思い出したことで、大きな疑問が浮上してきた。
小説ではエレーナ•ステファンは一人っ子のはず、弟なんて居なかったはずなのにどうなってるの?
それにレオンだって出てこない。
小説の中の私は婚約者であるロベルトに夢中だった。
お父様とお母様も亡くなってなかった。
家族仲は冷え切っていて、両親は私に愛情が一切ないから、私は婚約者であるロベルトに執着してる設定だったけど、実際の我が家は両親はラブラブで子供に愛情深い人達だったわ。
2人は私の憧れの夫婦だった。
だからこそ私に冷たいロベルトに惹かれることは絶対になかった。
私の他にも身近に転生者が居るってこと?
でも誰?
両親があんなに性格が変わって、弟が生まれてるってことは、どちらかが転生者だったのかしら?
それともお祖父様かお祖母様のどちらかが転生者で、小さい頃の教育で両親の性格が変わったのかもしれない。
亡くなってしまった今では確認のしようはないけど、その可能性が高いわよね。
私が悪役令嬢…………
どうなるのかしら?
私はヒロインとロベルトの邪魔はしてないから断罪はなくなるわよね?
時期的に考えると、約1ヶ月後にある王妃様の生誕祭パーティーで婚約破棄をされる。
すごいタイミングで前世の記憶を思い出した。
出来るならもっと早く思い出したかったわね。
でも断罪される理由はないから、小説のようにはならないわよね?
ヒロインのことは虐めてませんし。
断罪出来るとしたら、アランとの関係に気が付いてそれを責めることだけど、そんなことをしたら周りからお前が言うなってなるだけなのよね。
ロベルトだって浮気をしてますし、私とロベルトではロベルトの方が罪が重いって思われる。
ロベルトは格上の我が家に婿にくる、お互いに婚姻の条件に愛人が居ても構わないってなってるなら、それぞれの家の決まりってことで周りから非難されたりしないけど、それなのに同じことをしてるのに私を責めたら、非常識ってロベルトが責められて評判が下がるだけなのよね。
私はロベルトに恋人が居るのを確認してから、アランと付き合い始めたから、このことで責められるいわれはないわ。
どっちが先だったなんて言い始めたら、決定的な物証がないと堂々巡りになってしまいますけどね。
1つ疑問があるとしたら、たまに浮上してくる噂話なのよね。
何故か数ヶ月に1回の間隔で、私がロベルトの恋人に嫌がらせをしてるって噂が浮上してくる。
だけど私はロベルトの執着してませんから、周りも間違いや勘違いだってなって噂は消える。
私自身がロベルトに婚約解消の提案をしてる場面も、複数人の人が見てるから余計に勘違いって思ってもらえてるのよね。
今まではそんな噂が流れて誰にメリットがあるのか分からなかった。
ロベルトがそんな噂を流すわけがない、だってメリットがないんですもの。
婚約解消したらロベルトは婿入り先が無くなって庶民になるだけ、ロベルトの恋人が流してるって疑ったときもあるけど、それもメリットがないのよね。
ロベルトと私が婚約解消して、2人が結婚することになったとしたら、彼女には兄がいるから継ぐ家がないので、2人は庶民になるしかない。
それだったら日陰の存在になってしまうけど、ロベルトの愛人になったほうが良い暮らしは出来そうよね。
だけど彼女が転生者ならどうなるのかしら?
もしかしたら小説のように無理矢理シナリオを進めようとするかもしれない。
だけど小説では最終的にどうなったのか私には記憶がない。
私が知ってるのは断罪されてる場面だけだから、完結する前に私は亡くなってしまったのかもしれないわね。
私の有責で婚約破棄したとして、ロベルトとヒロインが結ばれたとして、多額の慰謝料は貰えるかもしれないけど、庶民になることにかわりはないわよね?
だってロベルトとヒロインは我が家の血は流れてないから、我が家の跡取りには絶対になれない。
血の繋がりもない家の当主になんてなれない。
不明な点が多すぎるわね。
色々と考えることに疲れてしまい、目の前にいる2人を懐かしい気持ちになりながら眺めていると、私の体は動かなくなり、体がどんどん透けていくのを眺めてることしか出来なかった。
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