転生悪役令息の俺、婚約破棄して脇役第二王子を射止めたい!

櫻坂 真紀

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「……ずいぶん遅かったな。お前の事だ。どうせ見た目を気にし、あれこれ使用人に文句をつけていたんだろう?」

「あの、お待たせして、本当にすみません。」

「全く……そんな見た目などよりも、もっと中身を気に掛けたらどうだ?少しは彼を見習え、あのノアを。彼はな、お前と正反対でとても慎ましやかな性格で、賢く有能な自分をむやみにひけらかさず──」

「……。」

 な、何だ……この会話。
 俺、朝から何でこんなにダメ出しされてるの──!?

 そりゃあ、お待たせしたのは悪かったけどさ……俺、朝ごはん抜いてダッシュで玄関まで行ったのに。
 それでサリュー様の顔を見るなりひたすら謝り倒したのに……何、この仕打ちは?

 でも、仕方ないよな……。
 だって俺、悪役令息アルトだもん──!

※※※

 サリュー様のこの態度からすると、サリュー様ルートでストーリーは三分の一まで進んでる感じ……?

 確か……サリュー様ルートは、こうだった。

 サリュー様と悪役令息アルトは、現在婚約関係を結んでいる。
 
 アルトは、サリュー様の事が大好きだ。
 でもサリュー様は、アルトの事を何とも思っていない。

 そんな時、ローズ学園に一人の少年が転校してくる。
 それがこのゲームの主人公、ノアだ。

 ノアと出会ったサリュー様は、次第に彼に心惹かれる様になる。
 そしてそれとは反対に、アルトとは距離を置くようになっていくんだ。
 
 それを知ったアルトは、ノアを恨むように……。
 
 ま、まさかアルトってば、もうノアを虐めちゃってるとかないよね?
 
 虐めてるなら、すっごくマズい──!
 
 だってアルトはその虐めが原因で、第二王子のカイル様にも嫌われ、見向きもされない男になるんだもん!
 
 まぁ……虐めなんてしてる最低野郎は、そうされても仕方ないけど。
 
 でも俺は違う……外見はゲームの中の悪役令息アルトでも、中身はそうじゃないから、絶対に虐めなんてしない!

 と、俺が固く思っていても、ここはゲームの世界だしな……思わぬハプニングがあるかも知れない。

 もしそうなったとして……カイル様に嫌われた挙句、完全無視の空気扱いされるなんて……俺にそんな未来が訪れるのは、何としてでも回避せねば──!

※※※

「……おい、聞いているのかアルト!」
 
「あぁ、はい。申し訳ありません。」

 ま……まだ話してたの、この人。

「全く、人の話を聞かない愚か者が!」

 いや、話聞かなかった俺も悪いけど、サリュー様……俺たち、まだ婚約してるんだよな?
 なのにその人物の前で、ず──っと他の男の話するってどうなの?
 
 まさかサリュー様……ゲームで描かれてなかっただけで、あなた毎朝こんな話をアルトにしてたんじゃないだろうな?
 
 それは駄目だよ、アルトは昔からずっとあなた一筋、あなたが好きだったんだから。
 こんな事されてたら、彼の心が捻くれて、虐めをしようなんて考えに行きついてもおかしくない。
 
 ……そりゃ、実際やるのは悪い事だよ?
 でもそんな原因作っておいて、あっさり他の男に乗り換えるって、けっこう酷いよね。

「いや、聞いてますけど?よく分かりましたよ、あなたがいかにノアに惹かれているか。でも、俺と彼は全くの別人です。彼の良い所が、俺と違っていても、俺がそれを持っていなくても当たり前です。彼の良い所は見習いたいとは思いますが……彼と全く同じになろうとは思いません。それに、あなたはまだアルトの婚約者でしょ?だったらノアと比べるんじゃなく、彼の良い所を見つけてあげてはどうです?」

「……な!?ア、アルト……お前、どうしたというんだ。俺にそんな言い方するなんて……!」

 全く……アルトはな、きっとあなたの事が好きだから、今まで何も言えずにいたんだ。
 ずっと一緒に居るあなたが、何でそんな事も分からないんだよ──!
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