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5.招かれざる客
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学園での生活も1週間が過ぎ去り2週間が過ぎ去り……所々でノエルとの強制鬼ごっこ(とても嫌)や垣間見える金髪王太子(凄く嫌)を躱しつつも平穏に過ごしていた。
当然、周囲への評価を考えてノエルを面と向かって無視なんかはしないし、虐めたりなんかもしていない。授業中や昼休み時間であればセオドアを必ず交えてはいるものの仲良くは見えていると思う。
俺が逃げ回るのは主に帰り際だ。何せ帰りはセオドアが運動系のクラブに入ったことにより、いないということもり1対1になりやすい。現状でセオドアはゲーム内での取り巻きとは違い、親友ともいえる友人枠。要するに何か不利益な噂が流れることがあっても、セオドアという第三者を挟むことにより自身の正当性を高める材料になりえる。しかし1対1だと、俺がノエルを虐めているという噂がもしも立った時、録画録音でもしていない限りは言った言わないの水掛け論になりかねない。
そういう理由もあって、セオドアがいないときはとにかく接触を避けたいわけで……セオドアを利用しているようで心苦しくはあるが、本当に申し訳ないけれど雌堕ちエンド回避のためには仕方ないと割り切っている。
そんなわけで、放課後はクラブにも入らず──入ろうとも考えたががノエルが無邪気に『リアムと一緒のクラブに入ろうかな』なんて言ったのでその考えは即効捨てた──有無を言わさず直帰するか、学園内で個室を保有するキースの元に逃げている。
「大丈夫かい?」
そして本日の放課後も、俺はキースの元に逃げていた。
教師に与えられた個室はそれなりに広く、壁には一面の書架があり、大きめの執務机もあった。快適ソファの応接セットなんてのも設置されていたので、俺は専らそこで勉強したり本を読んだりして過ごしている。だが、今日は先ほどまでノエルと楽しくない鬼ごっこに興じていたものだから若干疲れてしまい柔らかいソファに沈んでグダグダしている真っ最中だった。
そんな俺へと甘めのカフェオレが入ったマグカップ(いつの間にかあった俺専用)をキースが手渡してくれる。室内には簡易な水場もあり、こうしたお茶を楽しむことができるのは非常に素晴らしい。俺は手渡されたそれをちびちびと飲みながら頷く。
「なんとか……ありがとう、兄様」
礼を述べるとキースが俺の頭を優しく撫でながら、しかし、と続けた。
「たまにここへ駆け込んでくる日があるけれど……何をしているんだい?」
「えっと……まあ、こう……友人と追いかけっこみたいな……」
全然楽しくない感じの、と続けそうになった言葉はカフェオレと一緒に飲み込んだ。
俺の返答に、キースは怪訝そうに眉をしかめた。
「追いかけっこね……ねえ、リアム」
「はい?」
名前を呼ばれて、顔を上げるとキースが俺の顔を覗き込むように首をかしげる。頭にあった手が頬へと落ちてその場所を包んだ。
「学園内で虐められたりはしていないよね?」
あー、そりゃな……俺は雌落ちな運命が関わっている点もあって、ノエルやレジナルドからは割と必死に逃げており、この部屋に飛び込むこともよくある。何も知らないキースからすれば不可解だろうし、そんな風に見えてもおかしくないかもしれない。かといってキースは正しくキースであると思われるので雌堕ちエンド回避しています!とも宣言できるわけじゃない。頭がおかしいと思われるのも避けたい事態。ただ、俺の行動で『弟が虐められている』とこの兄が判断し、過保護な両親に連絡されると、リアム可愛いさ故に侯爵家の力を行使する事態は周りに迷惑になることなので避けたい。家族が気遣ってくれるのは嬉しいことではあるが、気をつけねばならないな……。
改めて自身の行動にちょっくら反省をしながら、俺は兄を安心させるべく笑顔を浮かべる。
「あ、いやいや。楽しく過ごしてますよ。クラスで友人もできたし、セオ……セオドアもいるので」
まあ、実際のところ。若干どころかオタク気質が垣間見えるノエルとは話してみるとウマが合う部分もあり、決して嫌な相手ではないのだ。セオドアはもちろん、言うことなしで一緒にいて楽しい人物だし、クラスメイトも昔からの知り合いがいることもあって、問題がない。結局、ゲーム内ではリアムの高慢さや立ち回りが問題だった部分も大きかったのだと思う。
そう言った俺にキースは、一つ息を吐く。
「まあ、リアムがそう言うならば信じるけどね……何かあったら必ず言うんだよ?父上や母上から君を預かっている以上、僕には責任があるのだから」
俺の頬をキースの手が撫でる。俺は、大丈夫ですよ、と付け加えて頷いた──その時、ドアがノックされて開かれた。
「やあ、やはりここにいたのか、リアム。侯爵家の兄弟愛は麗しそうだ」
入口の向こうで俺たち二人へそう告げたのはにっこりと微笑んだレジナルドだった。
※
レジナルドを向いにして、俺とキースが下座に座る。
いくら学園内が平等とは言え、そういうところは気遣わなければならない。
にこにこと浮かべた猫かぶり笑顔でレジナルドの様子を俺はじっと窺う。
レジナルドは、ふ、と小さく笑ってから懐から何やら取り出し俺の前に置いた。
それは封筒で、王家の紋で封蝋されている。
「今度の休みに、城で私主催で学園内で親交のある生徒を呼んで茶会を催すんだ。その招待状だよ」
「え……」
恐る恐るその封筒を手に取って表面を見ると、リアム・デリカート、と宛名されていた。
うわ……うっわ……!まってまってまって!これ、ノエルとレジナルドがゲーム内で親交を深める茶会じゃん?!
ゲームでのイベントじゃねーーーーーーか!しかも、俺の記憶が正しいならばこの茶会にはキースを除く攻略者が勢揃いする。
えーーーーーーー?!なんで俺が誘われる?!親交なんてねーーーよ!
今回、俺はレジナルドとは、あの図書館以降接点を持たないように努めてきたのだ!
…………断れないやつ?!
隣のキースを見ると、眉根が寄っていた。
「いくらなんでも今度の休みとは……少し唐突すぎないですか、レジナルド殿下」
「いや?無論、前々から用意はしていたよ。ただ、これを渡すためにリアムを探しはしたが、どうも出会えなくてね。侯爵家に出すことも考えたが同じ学園にいるのだから、手渡した方が早いと思ったものだから、こんな急になってしまった次第だよ」
レジナルドはにっこりと俺へと笑いかけた。……逃げてたのがばれてる気がするなこれ……。キースは恐らく俺が出たくないことを察して言ってくれたのだろうが、こう返されてしまうと反論の余地がない。これが侯爵家へのお誘いであれば、家族の誰かが出席すれば問題ないものの、宛名はしっかりと俺個人宛てだ。出席をすべきのは俺であって、家族の誰かではダメなわけだ。
速攻で病欠も考えたけれど、時期的にやや難しい。なぜならこの茶会の後、すなわち次の日は学園ではじめての試験が行われるからだ。
学園は貴族子女が通うものではあっても、王立を名乗るだけあって易しいわけではない。試験の結果は成績や進級にも響くし、追試がないわけではないが、漏洩防止もかねて問題が難しくなると専らの評判。俺は入学前に行われた試験で成績的に上位グループには属しているものの、ずば抜けて頭がいいわけでもなく……故に難しくなった問題に挑むよりは少しでも易しい方を受けたいという気持ちは少なからずある。
……茶会には病欠で、次の日に回復したからテストには出まーす!はなんとも怪しいよな……子供のズル休み構図だもんな……。
それにこうして王太子直接の誘い、ともなればいくら学園内の非公式な場といえども事態が大きい。断ればまずいやつなんじゃなかろうか……何せこのリアムさんの運命は過酷だ。加えて俺1人の行動が侯爵家の今後に波及するのは避けねばならない。
実際のリアム断罪ルートだと攻略者のキースを除き、両親は侯爵位を剥奪された上で、罷免されて平民落ちで最後は生活に馴染めず……というような件だった気がする。今は家族で超がつくほど仲良しなので、とにかくそこも避けたい。
「……多くの方が参加されるのですか?」
仮にボイコットせずに参加するとして、茶会の問題はここだ。
恐らくゲームのシナリオ的にノエルは招待を受けているだろうし、この茶会イベントでもリアムはノエルを虐めるシーンがある。人数が少ないならば、1人になってしまい、ノエルとなんらかの強制補正で2人きりになった際、あらぬ疑いをかけられたら破滅する。
それを考えると、試験を捨ててでも茶会は欠席するべきだ。
ただし、人数が多ければまだ少しはマシだ。もしいつも一緒にいるセオドアが招待されていなくても、1人にならないよう貴族内での既知に始終くっついていればなんとかなるだろう。……既にこの事態がゲーム補正な気がせんでもない……。
俺の質問にレジナルドは、ああ、と頷いた。
「ざっと20人ほどはいると思うよ。ご参加いただけるかな?」
20人か……攻略対象者とノエルを除いても、それなりの人数ではある。とにかく誰かにくっついて過ごせば……。
首を傾げたレジナルドに、俺は緩く息を吐く。大っぴらにため息をつきたい気分だったが堪えて、頷いた。
「……はい。参加させてイタダキマス」
うまく笑顔も作れたと思う。光栄です、と付け足した声はちょっと棒だったかも知れないけれど。レジナルドは俺の回答に満足そうに笑みを深めて立ち上がる。
「当日は楽しみにしているよ、リアム・デリカート」
わざわざフルネームで呼んだのには、お前の肩には侯爵家を背負っているんだぞ、という意味が込められていそうだ。くっそっくっそくっそ!日程と言い、誘い方と言い、この宛名と言い……どうも引っかかる。ゲーム内のレジナルドは脳内お花畑の恋愛脳っぽかったのに、腹黒くないか、あれ……。試験前に茶会なんかすんじゃねーよ!
レジナルドが去ってから、俺はまたソファへと身を沈めた。疲れが半端ない。キースが心配そうに俺の頭を先ほどよりもより一層優しくなでる。胃が痛い。誰か胃薬を処方してくれ。
もうやだぁ……。
当然、周囲への評価を考えてノエルを面と向かって無視なんかはしないし、虐めたりなんかもしていない。授業中や昼休み時間であればセオドアを必ず交えてはいるものの仲良くは見えていると思う。
俺が逃げ回るのは主に帰り際だ。何せ帰りはセオドアが運動系のクラブに入ったことにより、いないということもり1対1になりやすい。現状でセオドアはゲーム内での取り巻きとは違い、親友ともいえる友人枠。要するに何か不利益な噂が流れることがあっても、セオドアという第三者を挟むことにより自身の正当性を高める材料になりえる。しかし1対1だと、俺がノエルを虐めているという噂がもしも立った時、録画録音でもしていない限りは言った言わないの水掛け論になりかねない。
そういう理由もあって、セオドアがいないときはとにかく接触を避けたいわけで……セオドアを利用しているようで心苦しくはあるが、本当に申し訳ないけれど雌堕ちエンド回避のためには仕方ないと割り切っている。
そんなわけで、放課後はクラブにも入らず──入ろうとも考えたががノエルが無邪気に『リアムと一緒のクラブに入ろうかな』なんて言ったのでその考えは即効捨てた──有無を言わさず直帰するか、学園内で個室を保有するキースの元に逃げている。
「大丈夫かい?」
そして本日の放課後も、俺はキースの元に逃げていた。
教師に与えられた個室はそれなりに広く、壁には一面の書架があり、大きめの執務机もあった。快適ソファの応接セットなんてのも設置されていたので、俺は専らそこで勉強したり本を読んだりして過ごしている。だが、今日は先ほどまでノエルと楽しくない鬼ごっこに興じていたものだから若干疲れてしまい柔らかいソファに沈んでグダグダしている真っ最中だった。
そんな俺へと甘めのカフェオレが入ったマグカップ(いつの間にかあった俺専用)をキースが手渡してくれる。室内には簡易な水場もあり、こうしたお茶を楽しむことができるのは非常に素晴らしい。俺は手渡されたそれをちびちびと飲みながら頷く。
「なんとか……ありがとう、兄様」
礼を述べるとキースが俺の頭を優しく撫でながら、しかし、と続けた。
「たまにここへ駆け込んでくる日があるけれど……何をしているんだい?」
「えっと……まあ、こう……友人と追いかけっこみたいな……」
全然楽しくない感じの、と続けそうになった言葉はカフェオレと一緒に飲み込んだ。
俺の返答に、キースは怪訝そうに眉をしかめた。
「追いかけっこね……ねえ、リアム」
「はい?」
名前を呼ばれて、顔を上げるとキースが俺の顔を覗き込むように首をかしげる。頭にあった手が頬へと落ちてその場所を包んだ。
「学園内で虐められたりはしていないよね?」
あー、そりゃな……俺は雌落ちな運命が関わっている点もあって、ノエルやレジナルドからは割と必死に逃げており、この部屋に飛び込むこともよくある。何も知らないキースからすれば不可解だろうし、そんな風に見えてもおかしくないかもしれない。かといってキースは正しくキースであると思われるので雌堕ちエンド回避しています!とも宣言できるわけじゃない。頭がおかしいと思われるのも避けたい事態。ただ、俺の行動で『弟が虐められている』とこの兄が判断し、過保護な両親に連絡されると、リアム可愛いさ故に侯爵家の力を行使する事態は周りに迷惑になることなので避けたい。家族が気遣ってくれるのは嬉しいことではあるが、気をつけねばならないな……。
改めて自身の行動にちょっくら反省をしながら、俺は兄を安心させるべく笑顔を浮かべる。
「あ、いやいや。楽しく過ごしてますよ。クラスで友人もできたし、セオ……セオドアもいるので」
まあ、実際のところ。若干どころかオタク気質が垣間見えるノエルとは話してみるとウマが合う部分もあり、決して嫌な相手ではないのだ。セオドアはもちろん、言うことなしで一緒にいて楽しい人物だし、クラスメイトも昔からの知り合いがいることもあって、問題がない。結局、ゲーム内ではリアムの高慢さや立ち回りが問題だった部分も大きかったのだと思う。
そう言った俺にキースは、一つ息を吐く。
「まあ、リアムがそう言うならば信じるけどね……何かあったら必ず言うんだよ?父上や母上から君を預かっている以上、僕には責任があるのだから」
俺の頬をキースの手が撫でる。俺は、大丈夫ですよ、と付け加えて頷いた──その時、ドアがノックされて開かれた。
「やあ、やはりここにいたのか、リアム。侯爵家の兄弟愛は麗しそうだ」
入口の向こうで俺たち二人へそう告げたのはにっこりと微笑んだレジナルドだった。
※
レジナルドを向いにして、俺とキースが下座に座る。
いくら学園内が平等とは言え、そういうところは気遣わなければならない。
にこにこと浮かべた猫かぶり笑顔でレジナルドの様子を俺はじっと窺う。
レジナルドは、ふ、と小さく笑ってから懐から何やら取り出し俺の前に置いた。
それは封筒で、王家の紋で封蝋されている。
「今度の休みに、城で私主催で学園内で親交のある生徒を呼んで茶会を催すんだ。その招待状だよ」
「え……」
恐る恐るその封筒を手に取って表面を見ると、リアム・デリカート、と宛名されていた。
うわ……うっわ……!まってまってまって!これ、ノエルとレジナルドがゲーム内で親交を深める茶会じゃん?!
ゲームでのイベントじゃねーーーーーーか!しかも、俺の記憶が正しいならばこの茶会にはキースを除く攻略者が勢揃いする。
えーーーーーーー?!なんで俺が誘われる?!親交なんてねーーーよ!
今回、俺はレジナルドとは、あの図書館以降接点を持たないように努めてきたのだ!
…………断れないやつ?!
隣のキースを見ると、眉根が寄っていた。
「いくらなんでも今度の休みとは……少し唐突すぎないですか、レジナルド殿下」
「いや?無論、前々から用意はしていたよ。ただ、これを渡すためにリアムを探しはしたが、どうも出会えなくてね。侯爵家に出すことも考えたが同じ学園にいるのだから、手渡した方が早いと思ったものだから、こんな急になってしまった次第だよ」
レジナルドはにっこりと俺へと笑いかけた。……逃げてたのがばれてる気がするなこれ……。キースは恐らく俺が出たくないことを察して言ってくれたのだろうが、こう返されてしまうと反論の余地がない。これが侯爵家へのお誘いであれば、家族の誰かが出席すれば問題ないものの、宛名はしっかりと俺個人宛てだ。出席をすべきのは俺であって、家族の誰かではダメなわけだ。
速攻で病欠も考えたけれど、時期的にやや難しい。なぜならこの茶会の後、すなわち次の日は学園ではじめての試験が行われるからだ。
学園は貴族子女が通うものではあっても、王立を名乗るだけあって易しいわけではない。試験の結果は成績や進級にも響くし、追試がないわけではないが、漏洩防止もかねて問題が難しくなると専らの評判。俺は入学前に行われた試験で成績的に上位グループには属しているものの、ずば抜けて頭がいいわけでもなく……故に難しくなった問題に挑むよりは少しでも易しい方を受けたいという気持ちは少なからずある。
……茶会には病欠で、次の日に回復したからテストには出まーす!はなんとも怪しいよな……子供のズル休み構図だもんな……。
それにこうして王太子直接の誘い、ともなればいくら学園内の非公式な場といえども事態が大きい。断ればまずいやつなんじゃなかろうか……何せこのリアムさんの運命は過酷だ。加えて俺1人の行動が侯爵家の今後に波及するのは避けねばならない。
実際のリアム断罪ルートだと攻略者のキースを除き、両親は侯爵位を剥奪された上で、罷免されて平民落ちで最後は生活に馴染めず……というような件だった気がする。今は家族で超がつくほど仲良しなので、とにかくそこも避けたい。
「……多くの方が参加されるのですか?」
仮にボイコットせずに参加するとして、茶会の問題はここだ。
恐らくゲームのシナリオ的にノエルは招待を受けているだろうし、この茶会イベントでもリアムはノエルを虐めるシーンがある。人数が少ないならば、1人になってしまい、ノエルとなんらかの強制補正で2人きりになった際、あらぬ疑いをかけられたら破滅する。
それを考えると、試験を捨ててでも茶会は欠席するべきだ。
ただし、人数が多ければまだ少しはマシだ。もしいつも一緒にいるセオドアが招待されていなくても、1人にならないよう貴族内での既知に始終くっついていればなんとかなるだろう。……既にこの事態がゲーム補正な気がせんでもない……。
俺の質問にレジナルドは、ああ、と頷いた。
「ざっと20人ほどはいると思うよ。ご参加いただけるかな?」
20人か……攻略対象者とノエルを除いても、それなりの人数ではある。とにかく誰かにくっついて過ごせば……。
首を傾げたレジナルドに、俺は緩く息を吐く。大っぴらにため息をつきたい気分だったが堪えて、頷いた。
「……はい。参加させてイタダキマス」
うまく笑顔も作れたと思う。光栄です、と付け足した声はちょっと棒だったかも知れないけれど。レジナルドは俺の回答に満足そうに笑みを深めて立ち上がる。
「当日は楽しみにしているよ、リアム・デリカート」
わざわざフルネームで呼んだのには、お前の肩には侯爵家を背負っているんだぞ、という意味が込められていそうだ。くっそっくっそくっそ!日程と言い、誘い方と言い、この宛名と言い……どうも引っかかる。ゲーム内のレジナルドは脳内お花畑の恋愛脳っぽかったのに、腹黒くないか、あれ……。試験前に茶会なんかすんじゃねーよ!
レジナルドが去ってから、俺はまたソファへと身を沈めた。疲れが半端ない。キースが心配そうに俺の頭を先ほどよりもより一層優しくなでる。胃が痛い。誰か胃薬を処方してくれ。
もうやだぁ……。
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