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Amitié amourouse 恋は薔薇のしらべ
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キスの仕方を誰かに教わったことはないけれど……。
唇は重ねればいいんだと、教えられなくても知っている不思議。
「アルノー、さん……」
ベッドにうつ伏せになって、陽色は羞恥に消え入りそうな声で、その名前を呼んだ。
ひんやりと柔らかな感触が、ゆっくりと背筋をたどった。
「なんで……そんな……こと、ッ」
恥ずかしすぎる、と陽色は身悶える。薄目を開けて振り返ると、自分の背中をあの白バラが撫でていた。アルノーの長い指がタクトのように茎を掴んで、柔らかな花びらを滑らせる。
まるで楽しむように。
「ッ、あ──」
「直に触れられるのが、まだ怖いって言うから……」
確かに、あまりにも性急すぎるとアルノーを責めはした。人肌のぬくもりに慣れていないから、それを察してほしかっただけなのに、アルノーは反省したふりをして、こんな意地悪な仕打ちをする。
溺れてしまうまで──欲望の水位がひたひたと上がりきるまで、あとどれくらいこの羞恥に耐えればいいのか……。
「陽色さんの肌は、バラの花びらみたいだ」
呟いて、アルノーは茎をつまんだまま、陽色の肌にそっと指先を滑らせる。背中から徐々に腰へ、さらにその先へと、柔らかな感触が移動していく。
「んっ」
思わず毛布を掴み、陽色はびくりと震えた。そして今更のように気づく。
バラを追うアルノーの視線は、そのまま自分を暴いていく視線に他ならないのだと。
アルノーの目に自分がどう映っているのか、陽色はどうしても意識しすぎてしまう。
「あ……!」
たっぷりと背中を愛撫された後、ぐったりと脱力すると、アルノーに裏返された。今度は胸を同じように撫でられる。
「っ!」
立ち上がった胸の頂に花弁が引っかかっただけの刺激に、馬鹿みたいに息が乱れた。
「も……うっ」
バラの花をぐしゃりと掴むと、まるで繊細な砂糖細工の花が壊れるように、ガクから外れた花びらが胸一面に散った。
「ぁ……」
汗ばみ、上下する肌に張りつく白い花弁が、やけに煽情的に感じられた。
「アル、ノー……」
陽色は誤魔化すように、舌足らずにアルノーを呼んだ。
アルノーが胸に顔を近づけ、唇から漏れる熱い吐息がわずかに花びらを揺らした。あたたかく湿った舌先で、尖りきった胸の先端をくすぐるように舐められると、びくびくと身体が跳ねた。
「あっ」
はらはらと床に舞い落ちる花びら。
──こんなの、いやらしすぎる……。
人見知りと奥手な性格のせいで、陽色にはこういう経験自体が、三年前、したたかに酔った上でのあの一度きりしかない。
記憶にすらない経験が、果たして経験と呼べるのかもわからず、身の内に高ぶる熱を、言葉にする術も知らず、陽色は息をつく間もなく襲いくる快感に耐えるばかりだった。
「あ……ぅ」
くびすじに唇を押し当てられて、次にはじわりと噛まれる。両脚の間に割り込んだ、アルノーの手の熱さにすくみ上ると、くすっとアルノーが笑った。きっと、こんな自分に呆れているのだと、陽色は涙目になる。
「陽色さん……」
耳朶に息を吹き込まれて、小さく震えながら、なんとか返事をした。
「はい」
「バラの中には、ひどく恥ずかしがり屋のバラがいて──」
またバラの話だ。
それでも、ああ、こんな他愛ない話をずっと続けてほしい、と陽色は思う。愛撫の手を止めてくれるなら、どんな話だっていい。
「今日咲くか、明日は咲くかと待っているのに、蕾がなかなか開かないんです」
陽色は、頑ななまでにきつく巻いた花びらを想像して、ぼんやりと頷いた。
「そんな時は、外側の花弁を二、三枚取り除いてあげると、まるで待っていたように、あっという間に花開くんですよ」
アルノーが陽色を胸に抱きなおし、ソファーが軋んだ。
「ん……」
安心させるようにただ抱きしめるアルノーの腕。接する肌の心地よいぬくもりに、陽色はため息をついて力を抜いた。このままアルノーの優しい声をずっと聞いていたい。熱を感じていたい。
頬にちゅっと音を立てて、アルノーが口づける。おそるおそる首を回すと、唇に唇が重なって、舌が滑り込んできた。
「ふ……」
少しずつ深くなる口づけに、息が続かなくなって、陽色は何度も唇を離しては、せわしなく重ねた。アルノーはあやすように舌先を触れ合せてくれる。つたない口づけ。
呼吸をうまく逃がして、上手にキスができるようになりたい。映画で見るようなキスがしたいな、と陽色は思う。
「キスだけずっと、してたい……」
思わず言葉にしたら、アルノーが呟いた。
「テ トロシュー」
すごく可愛い、と。
そして陽色の顎を掴み、荒々しく唇を貪った。
「んは…ッ……あぁっ!」
さっきまでバラの茎を掴んでいた綺麗なアルノーの手が、陽色の中心に伸び、緩く扱き始める。くちゃくちゃと濡れた音が響いて、陽色の頬が羞恥に染まる。
唇は重ねればいいんだと、教えられなくても知っている不思議。
「アルノー、さん……」
ベッドにうつ伏せになって、陽色は羞恥に消え入りそうな声で、その名前を呼んだ。
ひんやりと柔らかな感触が、ゆっくりと背筋をたどった。
「なんで……そんな……こと、ッ」
恥ずかしすぎる、と陽色は身悶える。薄目を開けて振り返ると、自分の背中をあの白バラが撫でていた。アルノーの長い指がタクトのように茎を掴んで、柔らかな花びらを滑らせる。
まるで楽しむように。
「ッ、あ──」
「直に触れられるのが、まだ怖いって言うから……」
確かに、あまりにも性急すぎるとアルノーを責めはした。人肌のぬくもりに慣れていないから、それを察してほしかっただけなのに、アルノーは反省したふりをして、こんな意地悪な仕打ちをする。
溺れてしまうまで──欲望の水位がひたひたと上がりきるまで、あとどれくらいこの羞恥に耐えればいいのか……。
「陽色さんの肌は、バラの花びらみたいだ」
呟いて、アルノーは茎をつまんだまま、陽色の肌にそっと指先を滑らせる。背中から徐々に腰へ、さらにその先へと、柔らかな感触が移動していく。
「んっ」
思わず毛布を掴み、陽色はびくりと震えた。そして今更のように気づく。
バラを追うアルノーの視線は、そのまま自分を暴いていく視線に他ならないのだと。
アルノーの目に自分がどう映っているのか、陽色はどうしても意識しすぎてしまう。
「あ……!」
たっぷりと背中を愛撫された後、ぐったりと脱力すると、アルノーに裏返された。今度は胸を同じように撫でられる。
「っ!」
立ち上がった胸の頂に花弁が引っかかっただけの刺激に、馬鹿みたいに息が乱れた。
「も……うっ」
バラの花をぐしゃりと掴むと、まるで繊細な砂糖細工の花が壊れるように、ガクから外れた花びらが胸一面に散った。
「ぁ……」
汗ばみ、上下する肌に張りつく白い花弁が、やけに煽情的に感じられた。
「アル、ノー……」
陽色は誤魔化すように、舌足らずにアルノーを呼んだ。
アルノーが胸に顔を近づけ、唇から漏れる熱い吐息がわずかに花びらを揺らした。あたたかく湿った舌先で、尖りきった胸の先端をくすぐるように舐められると、びくびくと身体が跳ねた。
「あっ」
はらはらと床に舞い落ちる花びら。
──こんなの、いやらしすぎる……。
人見知りと奥手な性格のせいで、陽色にはこういう経験自体が、三年前、したたかに酔った上でのあの一度きりしかない。
記憶にすらない経験が、果たして経験と呼べるのかもわからず、身の内に高ぶる熱を、言葉にする術も知らず、陽色は息をつく間もなく襲いくる快感に耐えるばかりだった。
「あ……ぅ」
くびすじに唇を押し当てられて、次にはじわりと噛まれる。両脚の間に割り込んだ、アルノーの手の熱さにすくみ上ると、くすっとアルノーが笑った。きっと、こんな自分に呆れているのだと、陽色は涙目になる。
「陽色さん……」
耳朶に息を吹き込まれて、小さく震えながら、なんとか返事をした。
「はい」
「バラの中には、ひどく恥ずかしがり屋のバラがいて──」
またバラの話だ。
それでも、ああ、こんな他愛ない話をずっと続けてほしい、と陽色は思う。愛撫の手を止めてくれるなら、どんな話だっていい。
「今日咲くか、明日は咲くかと待っているのに、蕾がなかなか開かないんです」
陽色は、頑ななまでにきつく巻いた花びらを想像して、ぼんやりと頷いた。
「そんな時は、外側の花弁を二、三枚取り除いてあげると、まるで待っていたように、あっという間に花開くんですよ」
アルノーが陽色を胸に抱きなおし、ソファーが軋んだ。
「ん……」
安心させるようにただ抱きしめるアルノーの腕。接する肌の心地よいぬくもりに、陽色はため息をついて力を抜いた。このままアルノーの優しい声をずっと聞いていたい。熱を感じていたい。
頬にちゅっと音を立てて、アルノーが口づける。おそるおそる首を回すと、唇に唇が重なって、舌が滑り込んできた。
「ふ……」
少しずつ深くなる口づけに、息が続かなくなって、陽色は何度も唇を離しては、せわしなく重ねた。アルノーはあやすように舌先を触れ合せてくれる。つたない口づけ。
呼吸をうまく逃がして、上手にキスができるようになりたい。映画で見るようなキスがしたいな、と陽色は思う。
「キスだけずっと、してたい……」
思わず言葉にしたら、アルノーが呟いた。
「テ トロシュー」
すごく可愛い、と。
そして陽色の顎を掴み、荒々しく唇を貪った。
「んは…ッ……あぁっ!」
さっきまでバラの茎を掴んでいた綺麗なアルノーの手が、陽色の中心に伸び、緩く扱き始める。くちゃくちゃと濡れた音が響いて、陽色の頬が羞恥に染まる。
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