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本 編
11. 甘く苦い
しおりを挟む心地良いあったかいものに包まれながら、意識が浮上して来た。
神様が居る聖域のような、静謐で厳かな済んだ空気に安心する。この国、凄く空気がいいよな……
あれ……俺、何してたんだっけ……?
自分が何処にいるのか解らなくなる。
確か……テーマパークに来たんだった……ジェイと一緒にランチを食べた……その後、セレイアさんに誘われて禅乃兄さんとジェイと四人で、ヘルハウスのアトラクションに来たんだ。
そうだ。ゾンビが目の前に居て……骨の手に尻を撫でられたっ……! ヘルハウスの中だっ!
そこまで思い出して、がばりと身体を起こした。
「おっ……とっ!」
ジェイが頭を後ろに反らしていた。行き成り頭を上げた俺の頭突きを回避したらしい。
辺りを見渡すと太陽の光が降り注ぐ外の世界で、ほっとした。ヘルハウスの中ではないみたいだ……
へなへなと力が抜けて、元の場所に戻った。どうやら、ベンチに座ったジェイの膝を枕にして横向きで寝ていたみたいだ。
「雪乃、気分は悪くないか?」
ジェイに聞かれて、頷いた。
「俺、どうしたの……どのくらい寝てた……?」
あの後、どうしたんだろう。外に居るってことは、ジェイが俺を運んでくれたのかな。
「雪乃が気を失ったから、俺がここまで運んだ。――そうだな……二、三十分くらい経ったかな。何か飲むか?」
ジェイが俺の頭を優しく撫でて来る。
「ん、大丈夫。――また、ジェイに迷惑掛けちゃったね……ごめんね」
自分が情けなくなって謝った。横向きで寝ていたから、ジェイの顔は見えない。
「迷惑なんかじゃない」
ジェイは、俺の髪を弄びながら苦笑混じりに言った。
「……ありがとう……禅乃兄さん達は?」
「ゼーノの番も気を失ったからな。別の場所で休んでいるよ」
「そっか……」
やっぱり、アレは怖すぎだよな……俺が臆病な訳じゃないよな。気合の入った特殊メイクだったし、雰囲気満点の暗闇で見るから……尚更、リアルだった……もう二度と入りたくない。
ジェイの太腿に片手を乗せながら、何となく撫でる。
太陽の光で暖かいはずなのに、身体の芯が恐怖のせいで冷えてるようだ。
暫く、ぼんやりとしながらジェイの太腿を撫でて、ジェイはジェイで、俺の頭を撫でたり髪をいじって遊んだりしていた。
段々、気持ちが落ち着いて来ると、今の状態がおかしいことに気付く。
あ、あれ……何で、こんな……恋人みたいなことしているんだろ?
それに気付いたら、恥ずかしくなってきた……
もそもそと身体を起こして離れようとしたら、腰を抱かれた。
「雪乃、離れたら駄目だろ?」
そうだった……でも、今は恥ずかしい。
ジェイが俺を覗き込んで来て、頬が熱を持つ。ジェイのエメラルドの眼に見詰められて、眼が合わせられなくて視線を下げると、ジェイの唇が目に入った。
そういえば……俺……ジェイとキスした……初めて誰かと……キスした……
――全然……嫌じゃなかった……
ジェイの形の良い唇を見ながら、この口とキスしたんだ……と、ぼーっとして見てしまう。
ジェイの唇が弧を描き、近付いて来て……俺の唇にチュっと触れた。
「――もっと、キスする?」
驚いていたら、ジェイが悪戯っぽく尋ねてくる。
途端に、顔から火が出るほど熱くなった。
「……どうして、キス……するの……?」
ジェイは外国の人だから、もしかしたら挨拶のキスだったりするのかな? 挨拶でディーブキスまでするの? それは……何か、嫌だな。
「雪乃とキスをしたいから、する」
「……え?」
「俺がキスしたいのは、雪乃だけ。雪乃としかキスしたくない」
思わず、ジェイの眼をまじまじと見詰めてしまう。
俺とだけ……?
「キスをしたのは、雪乃が初めてだ」
初めて……? アルファなのに?
ジェイのエメラルドの眼をじっと見ていたら、また、唇にチュっとされた。
「……俺も……初めてなんだけど」
無意識にそんなことを呟いていた。
ジェイは驚いた顔をして、その後は満面の笑みで頷いた。
「俺とキスするのは、嫌か?」
嫌?……嫌、じゃない……でも……
言い倦ねていると、ジェイの唇が俺の唇を塞いで深く口付けて来る。
「ンっ……」
ジェイの胸の服を掴んで押し返そうとするけど、びくともしない。
口内を動き回る舌に舌が絡まる。
どうしよう……困ったことに、全然……嫌じゃなくて、もっとして欲しい……
昨日、会ったばかりなのに……何でジェイの傍は、こんなにも心地良いんだろう。何で……昨日の今日で、こんな……キスをしているんだろう。
ジェイが、アルファだから?
俺が……機能が止まっているとはいえ、オメガだから?
だけど、ジェイには何処かに運命の番がいる。
どんなに心地良くても、ジェイは俺の――
俺の、アルファじゃ、ない。
そう思ったら、こんなことをしたら駄目だと思った。
「ん゙ん゙っ~~っ!」
俺は、暴れた。ジェイの腕に力が入って俺を押さえ付けようとするけれど、全力で暴れた。その間もジェイの舌は、執拗に俺の口内を動き回る。また、唾液を飲み下さないといけなくなった。
苦しくて、ゴクリと飲んでしまった。他人のものを飲むなんて嫌なはずなのに、嫌じゃない……
でも、駄目だ。これ以上、ジェイを知りたくない。
俺が更に暴れると、その内、ジェイが諦めて離れていった。
お互いに、荒く息を吐く。
「――ジェイ……恋人じゃないんだから、こんなことしたら駄目だ……」
顔を背けて言った。自分でも、驚くほど声に力が入らなかった。離れる訳にはいかないから、ジェイの手を握って身体の距離を取る。
「雪乃。だったら、恋人ならいいのか?」
背中に、ジェイの低い声が刺さるようだった。握っている手をギュっと握り返してくる。
「――――駄目」
「何故だ?」
「ジェイが、アルファだから」
二人の間に沈黙が落ちた。
背中に感じるジェイの気配が、重く伸し掛かって来るような錯覚を覚える。
きっと、じっと俺を見据えている。
何だか、落ち着かない……
「雪乃? どうかしたのか?」
声を掛けて来たのは、史人さんを連れた仁乃兄さんだった。
「……仁乃兄さん……」
思わず、仁乃兄さんに手を伸ばす。
仁乃兄さんは、史人さんと腕を組んだまま傍に来てくれて俺を抱き締めてくれたので、ジェイと握っていた手はそのままにして、片手でしがみ付いた。
「随分と、皇帝臭いな。――お前、雪乃に何をした?」
仁乃兄さんの冷ややかな声が、ジェイに掛けられた。
「…………」
ジェイと仁乃兄さんが睨み合っている。
あ、まずい。
「仁乃兄さんっ……何も、されてないよ! ヘルハウスで俺が気を失ったから、ジェイが介抱してくれていたんだ……!」
咄嗟に、ジェイを庇うようなことを言ってしまう。
でも、大神一族に睨まれたら、ジェイは……
仁乃兄さんが俺を覗き込むようにして、確認するようにじっと見て来る。
「落ち着きなよ、仁」
史人さんが、仁乃兄さんを宥めてくれる。
「雪乃くん。良かったら、私達と一緒に回らないかい?」
史人さんの提案に、ほっとして頷いた。
正直、今はジェイと二人っきりになりたくない。
「史人さん達は、何処に行くの?」
「私達は北欧神話の神様、ウルとスカジの氷の館に行くんだよ。ボーガンで射的が出来るんだって。トータルのスコアで景品が貰えるらしいんだ」
史人さんが、穏やかに微笑んだ。
「楽しそうだね。――ジェイも……いい?」
ジェイを振り返ると、彼は無表情で頷いた。
……怒らせちゃったかな。
アトラクションに着くまで、俺とジェイは話をしなかった。手も繋ぐだけに留めた。
腕を組んで、べったりとくっ付いていたのがおかしかったんだ。これが、正常な距離だ。
……なのに……何処か、身体が寒かった……
ウルとスカジの氷の館に着くと、そこは氷をイメージしたような内装だった。壁やオブジェは、氷山や雪を被った木々で飾られていた。
二人掛けの動くシートに座って、渡された玩具のボーガンで飛び出して来た狐や兎の絵が描かれたボードを撃ち抜いて行くアトラクションだった。
矢の数は決まっていて、ボードに当たると点数が加算される。一緒に乗った二人の合計点で、貰える景品が変わるみたいだ。
最初に、貰える景品が置かれている場所を見た。
一言も喋らなくなったジェイに、何だか、居た堪れない気持ちになる。
ジェイは、ずっとこういう所に来たことがないんだから、ちゃんと楽しんでもらいたい。
いつまでも気不味いままじゃ、駄目だよな……
せめて、友達として遊んで楽しめるようにしなくちゃな。
景品のコーナーを眺めていると、金色の毛並みがキレイなライオンが目に留まる。手に嵌めるパペットだった。小さな王冠を被って、眼の色がジェイと同じエメラルド色だ。まるで、ジェイみたい。
そう思ってジェイを見ると、ジェイは黒い狼のパペットを見ていた。狼の眼は薄い碧色だ。
「ジェイ、それが気に入ったの?」
「ああ……雪乃に似てる」
俺を強い眼差しで、じっと見詰めて来るジェイに困ってしまう。
「――じゃあ、得点が高めだけど……これを狙ってみる?」
友達としての距離を意識して、ベータの友達に話すように聞いてみる。
ジェイは、俺をじっと見詰めたまま頷いた。
アトラクションが始まると、俺もジェイも思った以上に本気になった。最初の方は簡単で、進むに連れて難易度が上がって行った。
前半は俺が頑張って、後半はジェイに任せた。やっぱりアルファはハイスペックで、俺が八割強だったにも拘らず、ジェイはパーフェクトだった。
最後に飛び出して来た高速で不規則に動く狐をジェイが仕留めた時には、気不味くなっていたことも忘れて、思わず雄叫びを上げてジェイに抱き着いて喜んだ。
野球の優勝を決める最終決戦で、応援していたチームがサヨナラホームランで逆転勝利したくらいの興奮状態だった。
結果、パペットよりも上の景品が貰えたのだけれど、ジェイが交渉してパペットを二つ貰うことが出来た。ライオンと狼のパペットだ。
ジェイはとてもご満悦で、狼のパペットを手に嵌めて俺をじっと見詰めながら……俺に似ていると言った狼のパペットに――意味深にキスをした。
思わず、頬が赤らんだ。美麗なイケメンがやると破壊力が凄い……
気不味い雰囲気を払拭した俺達は、仁乃兄さん達と別れてフリーフォールに乗ることにした。別れ際に、仁乃兄さんにぎゅむぎゅむと抱き締められてマーキングされた。
そして、太いペン型のスタンガンを渡された。
昨日、父さんがくれたやつと同じものだ。
昨日貰ったものは、湖に落ちた時に水で濡れてしまって使えなくなったんだよね……
ジェイが凄く嫌な顔をしていた。
その後は、色んなアトラクションを回って歩きながら、網状になった大きなドーナッツ……ファンネルケーキを食べたり、レモネードを飲んだり、カットフルーツを食べたりしながらテーマパークを満喫した。
恋人の距離を改めようと思っていたのに、アトラクションに興奮したり、食べ物に感動していたりしている内に、いつの間にかジェイにぴったりと腕を絡めて歩いていた。
何ていうか……自然にそうなってしまっていた。
空が茜色に染まって来た辺りで、休憩がてらに観覧車に乗った。結構、高さのある大きな観覧車だ。
流石に、歩き疲れていたこともあって、少しぐったりとしていた。
茜色に、夜の帳が下り始めている景色は、何処かもの悲しく感じてしまう。
疲れもあって、暫くは無言で景色を眺めた。
ちょっと、はしゃぎ過ぎたかな……
でも、ジェイが居てくれて良かった。そうじゃなかったら、皆には番が居るから、どのアトラクションも俺一人で乗らなくちゃならなかった。
きっと兄さん達は、俺に気を使って一緒に行動してくれただろうし、俺を一人にはしなかったと思う。
だけど、そうされると俺がお邪魔虫みたいで、きっと……こんなには楽しめなかったと思う。
実は、旅行に来る前からそのことが引っ掛かっていて、憂鬱だった。
番なんて、もう要らないとは思っているけれど、目の前で運命の番達と仲睦まじくしている家族達や、他の父さんの会社の人達を見るのは……結構、辛い……
世界の中で、自分だけが取り残されたように感じてしまう。独りぼっちなんだと、まざまざと突き付けられる。だから――
「ジェイが居てくれて、良かった……」
無意識に呟いてしまっていた。
「雪乃?」
不思議そうに首を傾げるジェイに苦笑した。
「ジェイが一緒に来てくれなかったら、俺だけ独りだったから……だから、一緒に来てくれて……ありがとう」
組んでいる腕の肩に頭を着けて、お礼を言った。
今日が凄く楽しかったのは、ジェイが傍に居てくれたから。
何となく照れ臭くて、ライオンのパペットを手に嵌めて前脚を動かして遊んでみる。
「雪乃……俺は、雪乃が好きだ。俺を恋人にして欲しい」
ジェイが真剣な顔で告白して来た。
きっと、今は本心なんだろう。
アルファの執着は、尋常じゃない。出逢ってからの時間なんて関係ない。
俺の運命の番だった彼だって、俺と出逢うまでは番にした彼女に執着心丸出しのマーキングをしていた。でも、俺という運命の番を知って、彼女を切ろうとした……
……結局は、そういうことだ。運命の番が現れれば、ジェイだって運命の番を選ぶ。
「駄目だよ」
ジェイの顔は、見れない。
「何故だ?」
「…………」
きっと今は、何を言ってもジェイは納得しない。
運命の番を知らないから……あの、狂いそうな衝動を……ジェイは、まだ知らない。
「雪乃」
ジェイが焦れて、答えを催促してくる。
俺は、ジェイの前にライオンのパペットを突き出した。
「ジェイ。ライオンはね、駄目なの」
パペットを動かして、ライオンが頭を抱える。
「――どういう意味だ……?」
ジェイが困惑して眉間に皺を寄せた。
「ライオンはね、ハーレムを作るから駄目なの」
俺は、もう片方の手に狼のパペットを嵌めた。
「狼はね、一人しか愛せないの」
二つのパペットに、泣いているような仕草をさせる。
「――俺が、雪乃以外に番を作ると言いたいのか?」
ジェイの眉間の皺が、益々、深くなる。
「運命の番が居るアルファは、駄目なの」
「…………」
黙り込んでしまったジェイを見て、苦笑する。
俺だって、ジェイに惹かれている。
今日は、ジェイのお陰で凄く楽しかったし……とても、甘い時間だった。
でも、甘い甘い時間の後に待ち受けているのは、運命の番という強烈な苦み。
苦くて、苦くて、飲み込めないほどの……
強烈で……熾烈で……苛烈な……苦みだけ……
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