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バラモン王都国立学校
1、バーライトからの親書
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ムハンマド王弟はぐちゃっと今読んだ兄王からの手紙を握り潰した。
褐色の精悍な顔は沸き上がる怒りをそのまま写していた。
黒髪の恋人リリアスは、先程までのご機嫌なムハンマドの豹変ぶりに少し驚く。
顔に傷のある彼の護衛のバラー、吟遊詩人のノアール、リリアスの護衛のバードも、ムハンマドの様子の変化に驚いて、状況を把握しようとする。
彼らは、船旅を終えてようやく辺境の彼らの国バラモンの町に入り、休んでいたところだった。
宿にはいると、彼らを待ち構えていた王都アルゴンからの使者が、バラモン国王の親書をムハンマドに手渡したのだ。
バラモン国王バーライトは弟ムハンマドの一挙一動把握していると、常に牽制をかける。
バーライトは先月、ムハンマド王弟と王位を争い、前王の死により無血にて、王位を継承していたが、バラモンの国民に人気のあるムハンマドを好きにはさせないようだった。
対決の日、兄バーライトが王位を得、弟ムハンマドは王位を諦めるかわりに黒髪のリリアスをバーライトから奪っていた。
「リリアスを、また、取り上げようというのか!?」
リリアスは目を丸くする。
ノアールは、軽く失礼しますと断りをいれてから、ムハンマドの手から赤い龍の紋章の入った手紙を取りあげた。
このままだと、怒りまくる赤毛の王弟の手の中で灰になるかもしれなかった。
それには記されていた。
元気か?
ムハンマドよ、お前が常々言っていたように、国力増強には人を養うことが大事だと王になった今、強く私も思う。
そのために、若者には数年間の義務教育を課すことにしようと思うのだが、どうだろうか?
王族の結婚相手にも、一定以上の教養水準を求めようと思う。
外交の場に王族の隣に立つのに、無教養だと、バラモンの品位を疑われるであろう?
判定規準を統一し、王族関係や有力貴族、またそれらの結婚相手にはバラモン王都国立学校の卒業か特別試験の合格をもって、しようと思うのだがどうだろう?
もちろんバラモンにあまねく学校を設立することを進めている。(中略)
王族と、結婚相手になる他国の姫などにもすべからく試験を受けていただく。
後宮に入るのにも必要と思っているのだが、
早急に返事をくれないか?
お前の意見を聞きたい。
この義務教育や特別試験の通達は、今年から適用の予定なので、なるだけ早くよろしく。
バーライトより
「これは、義務教育の実施ですか!国の改革に積極的ですね」
とノアールは感心する。
「僕を取り上げようとしているってどういうこと?」
リリアスはピンと来ていない。
「バーライトはお前に試験を受けさせて、あわよくば数年、バラモン王都国立学校に入れさせて、私からあなたを取り上げようとしているのだ」
「試験?学校?」
リリアスは16歳。
樹海の森に住んでいたときは、神官になるための勉強はしてきた。
ただ、同年代はおらず、学校というものに通ったことはない。
少し前まで、現王バーライトの専属マッサージ師として働きながら王都アルゴンに住んでいたときに、町で見かける同年代の若者が制服を来て、学校に通う姿を知っている。
そのときは、高名な医者やマッサージ師に付き従い、勉強はしていたが、同年代の仲間が切磋琢磨する場を経験したことがない。
リリアスの護衛役のバードはリリアスの声に含まれる期待とわくわく感を読み取った。
(リリアス、変なことを言い出すんではないぞ、俺は絶対に学校にはいかないぞっ)
バードは念話する。
風の精霊の加護を持つバードは、耳もとの風を震わせて、声に出さずに会話ができる。
リリアスはそれを無視した。
「まずは試験を受ければいいの?」
「まず、試験を受けて水準に達していれば、何の問題もない。達していなければ学校に通わねばならない」
ムハンマドは、リリアスが水準に達しないとは思わないが、バーライトの思惑に従うのがいやなのだ。
あわよくば、引きはなそうという意図も見え見えである。
バーライトから取り戻したリリアスをもう一時でもそばから離したくなかった。
「ムハンマドは学校を出ているの?」
リリアスは聞く。
「バラモン王都国立学校出だ。主席で卒業した」
「ムハンマドの学校生活を見てみたかったな?」
うらやまし気にリリアスは言う。
そんなもの見せれるか!とムハンマドは思う。
学校というものは、生涯の悪友を見つけ、考え付く限りの悪行を働かせ、大人になる前のしばしの猶予を、思う存分に楽しむところだ。
(注意、ムハンマド意見です)
ノアールの手の中でバーライトからの不幸の手紙が音をたてて燃える。
慌ててノアールは手を離した。
ムハンマドは赤毛の王族。
バラモンの国王族の赤毛の男には、火の精霊の加護の力をもっていることが多い。
精霊の加護を持っているものは、その力を借りることができる。
「危ないっ」
リリアスは、火の周囲の空気から酸素を取り除いた。
一瞬で火が消え、こげた手紙がリリアスの足下に滑り込んだ。
リリアスは、世界を構成する空、風、火、水、土の全ての精霊の加護と、神の祝福を受けた、加護6つを持っている。
かつ、そのからだは、古の血族の中でも大変珍しい両性未分化のプロトタイプである。
別の見方をすれば、男性でもあり、女性でもある両性具有なので、リリアスは、きれいな男子にも、凛とした女子にもどちらにも受け取れる。
その秘密を知るものはごく身近なものだけ。
リリアスは16歳。
将来、王弟ムハンマドの伴侶として彼の横に立つためにも、教養とやらを身に付けるのも良さそうだった。
「まずは試験だね!」
新たな面白さを見つけたのだった。
褐色の精悍な顔は沸き上がる怒りをそのまま写していた。
黒髪の恋人リリアスは、先程までのご機嫌なムハンマドの豹変ぶりに少し驚く。
顔に傷のある彼の護衛のバラー、吟遊詩人のノアール、リリアスの護衛のバードも、ムハンマドの様子の変化に驚いて、状況を把握しようとする。
彼らは、船旅を終えてようやく辺境の彼らの国バラモンの町に入り、休んでいたところだった。
宿にはいると、彼らを待ち構えていた王都アルゴンからの使者が、バラモン国王の親書をムハンマドに手渡したのだ。
バラモン国王バーライトは弟ムハンマドの一挙一動把握していると、常に牽制をかける。
バーライトは先月、ムハンマド王弟と王位を争い、前王の死により無血にて、王位を継承していたが、バラモンの国民に人気のあるムハンマドを好きにはさせないようだった。
対決の日、兄バーライトが王位を得、弟ムハンマドは王位を諦めるかわりに黒髪のリリアスをバーライトから奪っていた。
「リリアスを、また、取り上げようというのか!?」
リリアスは目を丸くする。
ノアールは、軽く失礼しますと断りをいれてから、ムハンマドの手から赤い龍の紋章の入った手紙を取りあげた。
このままだと、怒りまくる赤毛の王弟の手の中で灰になるかもしれなかった。
それには記されていた。
元気か?
ムハンマドよ、お前が常々言っていたように、国力増強には人を養うことが大事だと王になった今、強く私も思う。
そのために、若者には数年間の義務教育を課すことにしようと思うのだが、どうだろうか?
王族の結婚相手にも、一定以上の教養水準を求めようと思う。
外交の場に王族の隣に立つのに、無教養だと、バラモンの品位を疑われるであろう?
判定規準を統一し、王族関係や有力貴族、またそれらの結婚相手にはバラモン王都国立学校の卒業か特別試験の合格をもって、しようと思うのだがどうだろう?
もちろんバラモンにあまねく学校を設立することを進めている。(中略)
王族と、結婚相手になる他国の姫などにもすべからく試験を受けていただく。
後宮に入るのにも必要と思っているのだが、
早急に返事をくれないか?
お前の意見を聞きたい。
この義務教育や特別試験の通達は、今年から適用の予定なので、なるだけ早くよろしく。
バーライトより
「これは、義務教育の実施ですか!国の改革に積極的ですね」
とノアールは感心する。
「僕を取り上げようとしているってどういうこと?」
リリアスはピンと来ていない。
「バーライトはお前に試験を受けさせて、あわよくば数年、バラモン王都国立学校に入れさせて、私からあなたを取り上げようとしているのだ」
「試験?学校?」
リリアスは16歳。
樹海の森に住んでいたときは、神官になるための勉強はしてきた。
ただ、同年代はおらず、学校というものに通ったことはない。
少し前まで、現王バーライトの専属マッサージ師として働きながら王都アルゴンに住んでいたときに、町で見かける同年代の若者が制服を来て、学校に通う姿を知っている。
そのときは、高名な医者やマッサージ師に付き従い、勉強はしていたが、同年代の仲間が切磋琢磨する場を経験したことがない。
リリアスの護衛役のバードはリリアスの声に含まれる期待とわくわく感を読み取った。
(リリアス、変なことを言い出すんではないぞ、俺は絶対に学校にはいかないぞっ)
バードは念話する。
風の精霊の加護を持つバードは、耳もとの風を震わせて、声に出さずに会話ができる。
リリアスはそれを無視した。
「まずは試験を受ければいいの?」
「まず、試験を受けて水準に達していれば、何の問題もない。達していなければ学校に通わねばならない」
ムハンマドは、リリアスが水準に達しないとは思わないが、バーライトの思惑に従うのがいやなのだ。
あわよくば、引きはなそうという意図も見え見えである。
バーライトから取り戻したリリアスをもう一時でもそばから離したくなかった。
「ムハンマドは学校を出ているの?」
リリアスは聞く。
「バラモン王都国立学校出だ。主席で卒業した」
「ムハンマドの学校生活を見てみたかったな?」
うらやまし気にリリアスは言う。
そんなもの見せれるか!とムハンマドは思う。
学校というものは、生涯の悪友を見つけ、考え付く限りの悪行を働かせ、大人になる前のしばしの猶予を、思う存分に楽しむところだ。
(注意、ムハンマド意見です)
ノアールの手の中でバーライトからの不幸の手紙が音をたてて燃える。
慌ててノアールは手を離した。
ムハンマドは赤毛の王族。
バラモンの国王族の赤毛の男には、火の精霊の加護の力をもっていることが多い。
精霊の加護を持っているものは、その力を借りることができる。
「危ないっ」
リリアスは、火の周囲の空気から酸素を取り除いた。
一瞬で火が消え、こげた手紙がリリアスの足下に滑り込んだ。
リリアスは、世界を構成する空、風、火、水、土の全ての精霊の加護と、神の祝福を受けた、加護6つを持っている。
かつ、そのからだは、古の血族の中でも大変珍しい両性未分化のプロトタイプである。
別の見方をすれば、男性でもあり、女性でもある両性具有なので、リリアスは、きれいな男子にも、凛とした女子にもどちらにも受け取れる。
その秘密を知るものはごく身近なものだけ。
リリアスは16歳。
将来、王弟ムハンマドの伴侶として彼の横に立つためにも、教養とやらを身に付けるのも良さそうだった。
「まずは試験だね!」
新たな面白さを見つけたのだった。
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