14 / 39
赤毛の王妹
13、図書館での密会
しおりを挟む
彼女は燃えるような赤い髪を三編みにして、片胸に流していた。
女子寮から森を抜け、王立図書館に向かう。
この図書館は外部からの閲覧者も受け入れているので、王都国立生でないものとの密会には最適の場所だった。
しかもここは、王宮の森と隣接して、王宮からの利用にも便利である。
彼女の相手は、恋人ではない。
恋人候補はみな、赤毛に恐れをなして逃げていくことがほとんどだった。
彼女の相手は、本棚の間に立ち手元の本を見る振りをしながら、別のところを見ていた。
その視線の先に目をやると、黒髪の若者が本を山積みにして、なにやら調べものをしている姿があった。
彼女の待ち合わせの男は、
「こんにちは。お兄さま。
いえ、今は王さまにおなりになられたのね」
バーライト王は、どこか名残惜しげに視線をはずして、ガーネリアンに向かい合った。
「こんにちは。ガーネリアン、息災で何より」
この学校に入学して6年。
ガーネリアンは初級科から中等科にあがっていたが、バーライト兄から呼び出されたのは初めてだった。
「で、なんの用なのですか?」
ガーネリアンは赤毛の兄から用件を聞く。
聞きながら腹が立ってくるのを感じる。
バラモンの赤毛の王も王弟もまったく馬鹿者だと思う。
ムハンマド兄は自分の愛人を男子寮にいれて王都国立で勉強させ、ついでに何かと用事をみつけては、毎週足しげく通っているという。
そして、兄は兄で、今回の密談の内容は、その黒髪の子が女子のクラスを受けるならば、その様子を仔細に報告してほしい、そして、さらに助けてやってほしい、ときた。
うまく助けてやってくれるならば、ガーネリアンの望みをかなえよう、とのことだ。
兄は私の望みを知っているのか?
王位交代の時に黒髪の娘を巡ってなにかあったとは聞いているが、ガーネリアンには、この状況がさっぱり理解できない。
男子寮にいるのは、男だからでしょう?
女子のクラスを受けるのは、将来妻を想定しているからでしょう?
これは並び立つのか?普通に考えてありえないと思う。
ただはっきりしているのは、ムハンマド王弟の愛人だとしても、バーライトはまだ手放した黒髪をあきらめていないかも、ということだ。
火の精霊の加護の力ってやっかいよね
恋の情熱の炎を消してくれないみたいだから!
今や、王族の娘である自分よりも華やかな話題で学校中の話題をさらっている、黒髪のことをガーネリアンは好きではない。
燃えてしまえばいいのに!
なんて思うのだった。
女子寮から森を抜け、王立図書館に向かう。
この図書館は外部からの閲覧者も受け入れているので、王都国立生でないものとの密会には最適の場所だった。
しかもここは、王宮の森と隣接して、王宮からの利用にも便利である。
彼女の相手は、恋人ではない。
恋人候補はみな、赤毛に恐れをなして逃げていくことがほとんどだった。
彼女の相手は、本棚の間に立ち手元の本を見る振りをしながら、別のところを見ていた。
その視線の先に目をやると、黒髪の若者が本を山積みにして、なにやら調べものをしている姿があった。
彼女の待ち合わせの男は、
「こんにちは。お兄さま。
いえ、今は王さまにおなりになられたのね」
バーライト王は、どこか名残惜しげに視線をはずして、ガーネリアンに向かい合った。
「こんにちは。ガーネリアン、息災で何より」
この学校に入学して6年。
ガーネリアンは初級科から中等科にあがっていたが、バーライト兄から呼び出されたのは初めてだった。
「で、なんの用なのですか?」
ガーネリアンは赤毛の兄から用件を聞く。
聞きながら腹が立ってくるのを感じる。
バラモンの赤毛の王も王弟もまったく馬鹿者だと思う。
ムハンマド兄は自分の愛人を男子寮にいれて王都国立で勉強させ、ついでに何かと用事をみつけては、毎週足しげく通っているという。
そして、兄は兄で、今回の密談の内容は、その黒髪の子が女子のクラスを受けるならば、その様子を仔細に報告してほしい、そして、さらに助けてやってほしい、ときた。
うまく助けてやってくれるならば、ガーネリアンの望みをかなえよう、とのことだ。
兄は私の望みを知っているのか?
王位交代の時に黒髪の娘を巡ってなにかあったとは聞いているが、ガーネリアンには、この状況がさっぱり理解できない。
男子寮にいるのは、男だからでしょう?
女子のクラスを受けるのは、将来妻を想定しているからでしょう?
これは並び立つのか?普通に考えてありえないと思う。
ただはっきりしているのは、ムハンマド王弟の愛人だとしても、バーライトはまだ手放した黒髪をあきらめていないかも、ということだ。
火の精霊の加護の力ってやっかいよね
恋の情熱の炎を消してくれないみたいだから!
今や、王族の娘である自分よりも華やかな話題で学校中の話題をさらっている、黒髪のことをガーネリアンは好きではない。
燃えてしまえばいいのに!
なんて思うのだった。
1
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます!
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる