王族の子【4】~古き血族の少年の物語

藤雪花(ふじゆきはな)

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赤毛の王妹

13、図書館での密会

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彼女は燃えるような赤い髪を三編みにして、片胸に流していた。
女子寮から森を抜け、王立図書館に向かう。
この図書館は外部からの閲覧者も受け入れているので、王都国立生でないものとの密会には最適の場所だった。
しかもここは、王宮の森と隣接して、王宮からの利用にも便利である。

彼女の相手は、恋人ではない。
恋人候補はみな、赤毛に恐れをなして逃げていくことがほとんどだった。
彼女の相手は、本棚の間に立ち手元の本を見る振りをしながら、別のところを見ていた。
その視線の先に目をやると、黒髪の若者が本を山積みにして、なにやら調べものをしている姿があった。

彼女の待ち合わせの男は、
「こんにちは。お兄さま。
いえ、今は王さまにおなりになられたのね」

バーライト王は、どこか名残惜しげに視線をはずして、ガーネリアンに向かい合った。

「こんにちは。ガーネリアン、息災で何より」

この学校に入学して6年。
ガーネリアンは初級科から中等科にあがっていたが、バーライト兄から呼び出されたのは初めてだった。

「で、なんの用なのですか?」

ガーネリアンは赤毛の兄から用件を聞く。
聞きながら腹が立ってくるのを感じる。
バラモンの赤毛の王も王弟もまったく馬鹿者だと思う。

ムハンマド兄は自分の愛人を男子寮にいれて王都国立で勉強させ、ついでに何かと用事をみつけては、毎週足しげく通っているという。
そして、兄は兄で、今回の密談の内容は、その黒髪の子が女子のクラスを受けるならば、その様子を仔細に報告してほしい、そして、さらに助けてやってほしい、ときた。
うまく助けてやってくれるならば、ガーネリアンの望みをかなえよう、とのことだ。

兄は私の望みを知っているのか?
王位交代の時に黒髪の娘を巡ってなにかあったとは聞いているが、ガーネリアンには、この状況がさっぱり理解できない。
男子寮にいるのは、男だからでしょう?
女子のクラスを受けるのは、将来妻を想定しているからでしょう?
これは並び立つのか?普通に考えてありえないと思う。

ただはっきりしているのは、ムハンマド王弟の愛人だとしても、バーライトはまだ手放した黒髪をあきらめていないかも、ということだ。

火の精霊の加護の力ってやっかいよね
恋の情熱の炎を消してくれないみたいだから!

今や、王族の娘である自分よりも華やかな話題で学校中の話題をさらっている、黒髪のことをガーネリアンは好きではない。

燃えてしまえばいいのに!
なんて思うのだった。
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