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第二章 婚約者編
第十話 僕のための屋敷①
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僕の住居としてあてがわれた屋敷は、思った以上に立派な建物だった。
王宮の敷地内だし、防犯とかの兼ね合いもあってそこそこ立派な屋敷ではあるだろうなとは思っていたけれど、想像し以上にかなりしっかりした造りだし、はっきり言ってすごくお洒落で驚いた。
内装もすごく綺麗で、一流ホテルの内装みたいな雰囲気だった。廊下に飾られている絵画やオブジェはかなり高価なものなんだろうけれど、とても上品なものばかりなこともあってか、素直に素敵だなぁと思える。
あまりに成金! みたいな感じだと僕も引いていたかもしれないけれど、むしろ僕の好みに近いものが多いので、安心感さえあった。
……実は僕が移り住むにあたって、フリードリヒ様が僕好みの内装にするよう注文してくれていたみたいなんだよね。本人は照れて言わないだろうからと、使用人の女性がこっそりと教えてくれた。僕の好みはもう把握したと自信満々に注文していましたという情報もくれたけど……同じ男として、あまり知られたくはなかったんじゃ? と、正直ちょっとフリードリヒ様に同情してしまった。
(まぁ、でもこの屋敷にはフリードリヒ様が本当の意味で信頼できる人しかいないって言ってたしな)
馬車の中で、フリードリヒ様は事前に色々なことを教えてくれた。
……いや、まぁ……正確には、教えてくださいと僕が聞いたんだけど。
「さすがに何も知らずに王宮の敷地内に入るというのは……問題だと思います」
ミネアたちに問題を出して貰って、歴史とマナーは子供でも知っていてもおかしくはないレベルまではとりあえず問題なく覚えることはできたけれど、さすがにそれだけじゃ足りないだろう。
下手なことをしたら、フリードリヒ様にどんな悪い噂がたつか分からない。
フリードリヒ様は僕を守ってくれるとは言ってくれているし、その気持ちは本当に嬉しい。
けれど、僕だってフリードリヒ様の力になりたかった。
そのくらいの覚悟は僕にだってある。
最初は苦い顔をしていたフリードリヒ様も、僕がそう切々と言うと、渋々ではあったが話すことを了承してくれた。
王族内の力関係、主要な貴族たち、派閥や敷地内での足の引っ張り合いなど、次々と出てくる話を聞けば、中々に王宮というのがハードモードな場所だというのが分かる。
今まで得た知識だけじゃ絶対に足りなかったな。僕はほっと息を吐いた。警戒しなければいけないことも多そうだし。
馬車で質問をして本当に正解だった。
「僕、頑張ります」
「……その気持ちは嬉しいが、無理はしないでくれ。トーマに下手に心配をかけたくないのもあって言わなかったのは事実だが、実際にトーマに覚悟があっても、奴らは対応できないことをふっかけようとしてくる可能性はある。その場合、無知なふりをしていた方が良いこともあるんだ。中途半端な知識は逆に足元をすくわれるからな。本気で学ぶなら数年は必要だろう。俺や兄の目があるから、あまり無謀なことはしかけてこないだろうが……」
さすがに殴り掛かってくるような輩はいなくても、嫌がらせをされたり嫌味くらいは十分あり得ると心配そうに言われて、僕は大丈夫ですと笑う。
「誇れることではありませんが、割とそう言うところは打たれ強いので、僕。元の世界でも長年耐えていましたし……」
嫌味を受け流したりするのは割と得意だったのでそう言うと、フリードリヒ様は少し顔を引き攣らせた。そういえば、こういう話、今までにはっきりとフリードリヒ様には言わなかったかも。
隙あらば僕語りみたいなのはある意味不幸自慢になりそうだったから控えていたんだけれど……これから互いのことを知って行くという話なら、少しずつ小出しにして話していったほうが良いのかな?
フリードリヒ様が知りたいならだけど……。
「今の僕……フリードリヒ様の想像していた感じと大分違いますか? もし、僕の内気なところが好きだというなら、出来る限り善処はします」
好きな相手の好みに合わせるというのは嫌いじゃない。今までもそうしてきたし、それ自体は割と楽しんでいたと思う。
それに、内気な性格というのも嘘ではないしね。
さすがに外交的なことをいきなり求められて対応できるほどの高いコミュニケーション能力は持ち合わせてはいないし、不得意だ。
「いや、今のままで良い。正直驚きはしたが……少し気が強いトーマも可愛いからな。しかし、なんだ。もしかしたら、俺よりもトーマの方が精神面は強いのかもしれないな」
確かに……と、僕は思わず頷く。
俺様で不遜なイメージのあるフリードリヒ様だが、所々触れてはいけないような繊細な部分が見え隠れしているような人だ。
ルーイの件は殆ど克服しているとはいえ、油断は出来ない気がするし、僕は割と受け流せるようになったから、もしかするかも。
「フリードリヒ様は、意外とデリケートですからね」
「デリ……?」
「繊細って意味です」
フリードリヒ様は、異世界の言葉か? とかなり興味深そうな様子だった。そういえば……この世界って、今更だけど翻訳機能的なのはどういう働きをしているんだろう。すごく気になる。
同じ言語に聞こえてるから、異世界の言葉はこの世界ではすべて統一に変換されているのかな?
王宮の敷地内だし、防犯とかの兼ね合いもあってそこそこ立派な屋敷ではあるだろうなとは思っていたけれど、想像し以上にかなりしっかりした造りだし、はっきり言ってすごくお洒落で驚いた。
内装もすごく綺麗で、一流ホテルの内装みたいな雰囲気だった。廊下に飾られている絵画やオブジェはかなり高価なものなんだろうけれど、とても上品なものばかりなこともあってか、素直に素敵だなぁと思える。
あまりに成金! みたいな感じだと僕も引いていたかもしれないけれど、むしろ僕の好みに近いものが多いので、安心感さえあった。
……実は僕が移り住むにあたって、フリードリヒ様が僕好みの内装にするよう注文してくれていたみたいなんだよね。本人は照れて言わないだろうからと、使用人の女性がこっそりと教えてくれた。僕の好みはもう把握したと自信満々に注文していましたという情報もくれたけど……同じ男として、あまり知られたくはなかったんじゃ? と、正直ちょっとフリードリヒ様に同情してしまった。
(まぁ、でもこの屋敷にはフリードリヒ様が本当の意味で信頼できる人しかいないって言ってたしな)
馬車の中で、フリードリヒ様は事前に色々なことを教えてくれた。
……いや、まぁ……正確には、教えてくださいと僕が聞いたんだけど。
「さすがに何も知らずに王宮の敷地内に入るというのは……問題だと思います」
ミネアたちに問題を出して貰って、歴史とマナーは子供でも知っていてもおかしくはないレベルまではとりあえず問題なく覚えることはできたけれど、さすがにそれだけじゃ足りないだろう。
下手なことをしたら、フリードリヒ様にどんな悪い噂がたつか分からない。
フリードリヒ様は僕を守ってくれるとは言ってくれているし、その気持ちは本当に嬉しい。
けれど、僕だってフリードリヒ様の力になりたかった。
そのくらいの覚悟は僕にだってある。
最初は苦い顔をしていたフリードリヒ様も、僕がそう切々と言うと、渋々ではあったが話すことを了承してくれた。
王族内の力関係、主要な貴族たち、派閥や敷地内での足の引っ張り合いなど、次々と出てくる話を聞けば、中々に王宮というのがハードモードな場所だというのが分かる。
今まで得た知識だけじゃ絶対に足りなかったな。僕はほっと息を吐いた。警戒しなければいけないことも多そうだし。
馬車で質問をして本当に正解だった。
「僕、頑張ります」
「……その気持ちは嬉しいが、無理はしないでくれ。トーマに下手に心配をかけたくないのもあって言わなかったのは事実だが、実際にトーマに覚悟があっても、奴らは対応できないことをふっかけようとしてくる可能性はある。その場合、無知なふりをしていた方が良いこともあるんだ。中途半端な知識は逆に足元をすくわれるからな。本気で学ぶなら数年は必要だろう。俺や兄の目があるから、あまり無謀なことはしかけてこないだろうが……」
さすがに殴り掛かってくるような輩はいなくても、嫌がらせをされたり嫌味くらいは十分あり得ると心配そうに言われて、僕は大丈夫ですと笑う。
「誇れることではありませんが、割とそう言うところは打たれ強いので、僕。元の世界でも長年耐えていましたし……」
嫌味を受け流したりするのは割と得意だったのでそう言うと、フリードリヒ様は少し顔を引き攣らせた。そういえば、こういう話、今までにはっきりとフリードリヒ様には言わなかったかも。
隙あらば僕語りみたいなのはある意味不幸自慢になりそうだったから控えていたんだけれど……これから互いのことを知って行くという話なら、少しずつ小出しにして話していったほうが良いのかな?
フリードリヒ様が知りたいならだけど……。
「今の僕……フリードリヒ様の想像していた感じと大分違いますか? もし、僕の内気なところが好きだというなら、出来る限り善処はします」
好きな相手の好みに合わせるというのは嫌いじゃない。今までもそうしてきたし、それ自体は割と楽しんでいたと思う。
それに、内気な性格というのも嘘ではないしね。
さすがに外交的なことをいきなり求められて対応できるほどの高いコミュニケーション能力は持ち合わせてはいないし、不得意だ。
「いや、今のままで良い。正直驚きはしたが……少し気が強いトーマも可愛いからな。しかし、なんだ。もしかしたら、俺よりもトーマの方が精神面は強いのかもしれないな」
確かに……と、僕は思わず頷く。
俺様で不遜なイメージのあるフリードリヒ様だが、所々触れてはいけないような繊細な部分が見え隠れしているような人だ。
ルーイの件は殆ど克服しているとはいえ、油断は出来ない気がするし、僕は割と受け流せるようになったから、もしかするかも。
「フリードリヒ様は、意外とデリケートですからね」
「デリ……?」
「繊細って意味です」
フリードリヒ様は、異世界の言葉か? とかなり興味深そうな様子だった。そういえば……この世界って、今更だけど翻訳機能的なのはどういう働きをしているんだろう。すごく気になる。
同じ言語に聞こえてるから、異世界の言葉はこの世界ではすべて統一に変換されているのかな?
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