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第二章 婚約者編
第十話 僕のための屋敷②
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馬車の中での会話は思った以上に弾んだ。
フリードリヒ様は、新しいものが好きみたいで異世界の話を熱心に聞きたがった。今まであまり聞いて来なかったから興味がないのかと思っていたんだけど……。僕が首を傾げると、フリードリヒ様は、どこか気まずそうに笑った。
「……元の世界の話を聞くとトーマが辛くなると思ったんだ。一度この世界に召喚されてしまえば、後はこの世界で暮らすしかない。元の世界に帰れる方法も、絶対に無い訳ではないが……難しいだろう」
あぁ、なるほど。
フリードリヒ様は、僕に気を遣って出来る限り元の世界を連想させるよう話を避けてくれていたんだね。ホームシックみたいになると思っていたんだろう。
「だから、興味はあったんだが話題は避けていた。実際、話題を出してみてもトーマはあまり楽しそうには見えなかったしな」
「え、僕嫌そうでした?」
「嫌というか……思い出したくないように俺には見えた」
あぁ。確かにそれはあるかもしれない。
こっちの世界の経験も中々に最悪だけど、元々の世界も幸せだったとは言い難い。どちらの世界が好きかみたいな二択でも迷う程度の環境だったし、正直今はあまり戻りたいとは思っていない。
テレビとかの文明はちょっと懐かしいし惜しいけど、僕は別にTVがないと死ぬみたいなレベルの執着はないから、なくてもまぁ我慢できる。
間近で見る舞台や歌もとても素敵だし、あまり機会はないけど乗馬とかもできるような環境だから、代わりになるものも多い。
アウトドアが嫌いなら厳しいかもしれないが、僕は割と好きだしね。
それにこの世界にはフリードリヒ様がいるのだ。フリードリヒ様となら多分大抵のことが楽しく思える気がする。
しかし、僕に気を遣っていて聞けなかったなんて、フリードリヒ様には本当に悪いことをしてしまった。
「僕の場合、懐かしくなって帰りたいとかそういうのじゃないんです。確かに全く思いださないというわけではないですけど……」
一応、元の世界で良い思い出が全くないわけじゃない。両親の仲が悪くなかった小さい頃は、それなりに幸せだったと思う。友達もいたし。
大人になってからも、面白い映画を見たりして喜んだり、友人ではないけどよくしてもらったこともある。
「トーマの家族は……?」
どこか遠慮したように聞かれて、僕は首を左右に振った。
「あ、生きてはいますよっ」
サーっと顔色の変わったフリードリヒ様に、僕は慌てて訂正をする。今のは僕が悪い。これでは、まるで両親がすでに鬼籍に入ってるみたいな誤解を生むところだった。
「二人とも存命なんですが、うちの家族は、もうそれぞれの人生を歩んでるって言うか……あまり良い家族ではなかったんですよね」
いや、でも長く会っていなかったし、こちらに来て何年も経つから、もしかしたらもう死んでる可能性はあるかも……?
まぁ、どちらにせよ、今となってはあまり興味はないけど。
何せ、異世界に召喚されてもされなくても、もう会うことは無かっただろう人たちだ。虚しさは感じるのかもしれないけど、ただそれだけだと思うし。
「だから、未練とかはあんまりないんです。食べ物とかはちょっと恋しいとは思いますが、それくらいですね。アルテミス帝国に居た頃は確かにかなり悲惨なこともありましたけど、ミネアたちに会えましたし、それに、クリフォトに来てからは……フリードリヒ様に会えたから」
「そ、そうか……」
僕がそう言うと、フリードリヒ様の頬がほんのり赤く染まった。ちなみに僕もちょっと顔が熱かったりする。
フリードリヒ様は、新しいものが好きみたいで異世界の話を熱心に聞きたがった。今まであまり聞いて来なかったから興味がないのかと思っていたんだけど……。僕が首を傾げると、フリードリヒ様は、どこか気まずそうに笑った。
「……元の世界の話を聞くとトーマが辛くなると思ったんだ。一度この世界に召喚されてしまえば、後はこの世界で暮らすしかない。元の世界に帰れる方法も、絶対に無い訳ではないが……難しいだろう」
あぁ、なるほど。
フリードリヒ様は、僕に気を遣って出来る限り元の世界を連想させるよう話を避けてくれていたんだね。ホームシックみたいになると思っていたんだろう。
「だから、興味はあったんだが話題は避けていた。実際、話題を出してみてもトーマはあまり楽しそうには見えなかったしな」
「え、僕嫌そうでした?」
「嫌というか……思い出したくないように俺には見えた」
あぁ。確かにそれはあるかもしれない。
こっちの世界の経験も中々に最悪だけど、元々の世界も幸せだったとは言い難い。どちらの世界が好きかみたいな二択でも迷う程度の環境だったし、正直今はあまり戻りたいとは思っていない。
テレビとかの文明はちょっと懐かしいし惜しいけど、僕は別にTVがないと死ぬみたいなレベルの執着はないから、なくてもまぁ我慢できる。
間近で見る舞台や歌もとても素敵だし、あまり機会はないけど乗馬とかもできるような環境だから、代わりになるものも多い。
アウトドアが嫌いなら厳しいかもしれないが、僕は割と好きだしね。
それにこの世界にはフリードリヒ様がいるのだ。フリードリヒ様となら多分大抵のことが楽しく思える気がする。
しかし、僕に気を遣っていて聞けなかったなんて、フリードリヒ様には本当に悪いことをしてしまった。
「僕の場合、懐かしくなって帰りたいとかそういうのじゃないんです。確かに全く思いださないというわけではないですけど……」
一応、元の世界で良い思い出が全くないわけじゃない。両親の仲が悪くなかった小さい頃は、それなりに幸せだったと思う。友達もいたし。
大人になってからも、面白い映画を見たりして喜んだり、友人ではないけどよくしてもらったこともある。
「トーマの家族は……?」
どこか遠慮したように聞かれて、僕は首を左右に振った。
「あ、生きてはいますよっ」
サーっと顔色の変わったフリードリヒ様に、僕は慌てて訂正をする。今のは僕が悪い。これでは、まるで両親がすでに鬼籍に入ってるみたいな誤解を生むところだった。
「二人とも存命なんですが、うちの家族は、もうそれぞれの人生を歩んでるって言うか……あまり良い家族ではなかったんですよね」
いや、でも長く会っていなかったし、こちらに来て何年も経つから、もしかしたらもう死んでる可能性はあるかも……?
まぁ、どちらにせよ、今となってはあまり興味はないけど。
何せ、異世界に召喚されてもされなくても、もう会うことは無かっただろう人たちだ。虚しさは感じるのかもしれないけど、ただそれだけだと思うし。
「だから、未練とかはあんまりないんです。食べ物とかはちょっと恋しいとは思いますが、それくらいですね。アルテミス帝国に居た頃は確かにかなり悲惨なこともありましたけど、ミネアたちに会えましたし、それに、クリフォトに来てからは……フリードリヒ様に会えたから」
「そ、そうか……」
僕がそう言うと、フリードリヒ様の頬がほんのり赤く染まった。ちなみに僕もちょっと顔が熱かったりする。
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