未来スコープ ― 四分の百年―

エピソード16：静かなる社会の断絶 Ver.12

遥真に裏切られ、絶望の淵に立たされた柚希。しかし、本当の苦しみはここから始まった。

（どうして…）

柚希は、遥真との別れと、会社から届いたメールの内容に打ちひしがれ、数日間、自宅に引きこもっていた。

部屋は散らかり放題で、窓の外は、どんよりと曇った空が広がっている。

柚希は、重い足取りで、数日ぶりに会社へ向かった。

しかし、彼女の出社を、誰も歓迎しなかった。

廊下を歩く社員たちは、柚希の存在を無視し、まるで、透明人間であるかのように振る舞う。

エレベーターに乗ると、中にいた同僚が、さりげなく、だが明らかに、柚希から距離を置いた。

その冷たい視線が、まるでナイフのように、心を突き刺す。

（なぜ…？どうして、私だけ…）

その答えは、すぐに明らかになった。

柚希のデスクには、一通の通知が置かれていた。

「業務再編による人員整理のご案内」

柚希は、震える手でそれを開いた。

『貴方の業務は、AIによる自動化が可能と判断されました。つきましては、本日をもって、雇用契約を終了させていただきます』

「え…？」

柚希は、その場に立ち尽くした。

周囲の同僚たちは、柚希の不幸を「自業自得」と見なす、冷たい視線を向けていた。

その日から、柚希の再就職活動が始まった。

しかし、どの企業に応募しても、面接の連絡すら来ない。

柚希は、自分が「制度非適応者」としてブラックリスト化されていることを、知る由もなかった。

面接官からは、「適性不足」という曖昧な理由で不採用の通告を受ける。

柚希は次第に追い詰められていく。

家賃の支払いが滞り、所持品を売却して、わずかな食料を買う日々。

心も体も、極限状態だった。

（私は…この街に、いらない人間なの？）

その頃、政府関連の業務に従事する隼人は、密かに柚希の動向を監視していた。

彼の端末には、柚希の行動が、リアルタイムで表示されていた。

再就職活動の失敗。

家賃の滞納。

所持品の売却。

隼人は、無表情でそのデータを見ていた。