異世界村役場のお仕事~怪力少女の同僚は、転生チートおじさん~

上田ハル

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第3幕 ゴブリン一家のお引っ越し

第4話 バン、仕事を探す

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「村にいるからには、何かしら仕事をしてもらわなければなりません。日がな一日、村をぶらぶら歩いていますよ、あのゴブリンは」

 村長室に呼び出しを受けたバーナードとリリーは、「そうですよね」と同意を示してうなずいた。議会でも、村で暮らすなら働いてね、税金納めてね、あと人と家畜を襲わないでね、ということで村民になる承認を得たのだ。

「何かないんですか、ゴブリンができる仕事は」
 ブリジットは、ピンクの縁の眼鏡の奥から、じろりとリリーたちを睨みつけた。

「いろいろ試しているところです。何しろゴブリンですからね、人間とはいろいろ仕様が違いますので、互いに勝手がわからず、試行錯誤の最中です」

 バーナードの言うとおり、バンは、いろいろな仕事を手伝ってみた。

 最初はバーナードの大工の助手だった。しかし、大工道具の多さに混乱し、「俺には無理っす……」と作業の前に挫折した。

 次に塗装職人のリリーの父親に預けてみたが、ペンキのにおいがどうしても駄目で(頭痛くて目がチカチカするっす)、仕事にならなかった。

 刃物などの研ぎ職人のクララの父親に頼んでみたが、力任せに道具を扱い(任せてくれっすー!)、額に青筋を立てた職人につまみ出された。

 木こりにも挑戦したが、何があったのか総務課は知らされていないが、「うん、そうだね、運搬のときだけ頼もうかな」とにこやかに断られた。

 狩人はうってつけだと思われたが、動きが人間と違いすぎて、獲物より狩人のほうを恐慌状態に陥れた。

「本人は働く気もありますし、当初心配されていたような手癖の悪さなどはありませんので、あとは合う仕事があれば、というところです」

「そう。いつまでもゴブリン3体の生活費を村から出し続けることには村人からの反発もあります。なるべく早くそうしてちょうだい」

 村長室を出た後、リリーとバーナードは、互いに顔を見合わせた。

「どうしたもんかな」
「夜間警備も駄目だったんですよね」
「ああ。家族で早寝早起きが染みついているとかで、夜は起きていられないんだそうだ」
「健康的なご一家ですね」

 ゴブリンは夜行性なのかと思っていたリリーは意外な気がしたが、そもそもゴブリンの生活がしんどくて人間の村に来た一家である。ゴブリンにもいろいろあるのだなあ、とリリーはまたひとつ、この世界について新たな知見を得た気持ちになった。

「そうだなあ。夜間警備は、それこそ彼にうってつけだと思ったんだがなあ」
「体力も力もありそうだし、素早そうだし、目も耳も鼻も良くて、ほんとにぴったり! って感じなんですけどね。それに、ルナともうまくいってそうな感じでしたよね」
「そうだなあ。……ルナか。彼女は若いが頼もしいな、いろいろと」

 バーナードのその言い方に、リリーはちょっと笑った。

 総務課へ向かって歩きながら、リリーたちは、ほかにバンを受け入れてくれそうな仕事先をあれこれ考えた。しかし、相手がゴブリンということもあり、なかなか「じゃあ、うちでやってみたら?」と言ってくれる相手はいない。

「バンは、やる気はあるんだよなあ」
「人間のいろんな仕事を知れるのは楽しいとも言っていましたね」

「悪いやつじゃないんだよなあ」
「そうですよね。むしろいい人っていうか。すごく正直で真っ直ぐっていう感じがします」
「そうだよなあ。どこかに彼に合う職場があればなあ」

 困った、困った、と言い合いながら、2人は総務課に着いた。扉に手をかけたバーナードが、そのままの姿勢で固まった。

「バーナード?」
「リリー、バンは、早寝早起きだと言っていたんだよな」
「はい。ずっと前からの習慣だって言ってました」
「だよな。ぴったりな仕事があるぞ」
「え、何ですか?」
「早寝早起きで、体力もある――畑仕事だ」
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