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第4章 夏祭り
第4話 栗の丘1
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「夏祭りにお越しの皆さん、栗の丘の舞台での出し物の時間が迫ってまいりました。皆様、お誘い合わせの上、ぜひ栗の丘までお越しください!」
副村長ラリーの声が、村に響いた。
恐らく、迷子のお知らせを聞いて、マートに風の魔法で拡散させているのだろう。マートのぶすっとした顔が簡単に想像できて、リリーは、イシシッっと笑った。
ライオたちと別れた後、リリーはまたヴィヴィアンと2人で屋台の間をうろうろした。ヴィヴィアンは、懐かしい、懐かしいと言いながらあちこちの屋台を覗き、今年からできた幽霊マークのグッズを真剣に物色(この巾着、かわいい。でも子どもっぽいかな……)したりして、故郷の村の夏祭りを楽しんでくれているようだった。
「リリー、ヴィヴィアン!」
リリーとヴィヴィアンが栗の丘に向かっていると、人ごみの中から2人を呼ぶ声がした。見ると、デイジーがクララの手を引っ張って、こちらに向かって走って来ていた。
「栗の丘に行くんでしょ? 一緒に行こうぜぃ」
「ちょっと、デイジー。いい加減、手、放してよ……」
うんざりした顔のクララと、元気いっぱいのデイジーと並んで歩きながら、リリーたちは栗の丘に向かった。
栗の丘には、祭り用の舞台が設置してある。舞台は高さ1.5メートルほどで、大人が両手を広げて5人ほど立てばいっぱいになる程度の広さである。昔は演劇もやっていたというが、今は夏祭りの出し物で利用されている。
丘には、もう見物客が思い思いの場所でくつろいで、演目が始まるのを待っていた。リリーたちも適当な場所に腰を下ろした。芝生に座るとき、ヴィヴィアンはハンカチを敷いて、その上に座った。
「リリー、今日はエミリーは来てるんかい?」
リリーの左隣に座ったデイジーが声をかけてきた。
「うん。今朝は体調もよさそうだったし、あの子、出し物を楽しみにしてたから。ひいおばあちゃんが連れてきてくれることになってるよ」
「そっか。それなら安心だねぃ」
もしかしたら、木陰がある特等席の辺りにもういるのかもしれない。リリーは首を伸ばして、村のシンボルである大きな栗の木のほうに顔を向けた。
人ごみの中に、白髪を短く整えた曾祖母の、すっきりした横顔が見えた。リリーの視線に気づいたわけでもないだろうが、曾祖母がこちらを向いた。曾祖母はにこっと笑ってこちらに手を振り、隣にいたエミリーにも伝えたようで、エミリーは立ち上がってリリーに大きく手を振った。
元気そうだ。よかった。笑顔で手を振るリリーに気づいて、デイジーもヴィヴィアンもクララも、リリーのひいおばあちゃんとエミリーに手を振った。
舞台に、真っ白なスーツを着たラリーが現れた。うわさによれば、毎年新調しているとのことである。
「お待たせいたしました。これより、我が村が誇る出し物大会を開催いたします! 出演者はだいたい村人ですが、飛び入り参加ももちろん歓迎! 見るも楽しい、やるも楽しい出し物大会の始まりです! 皆様、最後までどうぞお楽しみくださいませ!」
「ラリーってこういうの、ほんと好きだよね」
あきれたようなヴィヴィアンに、クララがひょいと肩をすくめた。
「こういうときの挨拶とか、普通は村長がやりそうなもんだけどね」
「まあ、ブリジットがやってもさぁ、いまいち盛り上がらんのと違う?」
デイジーの発言に、みんなで笑う。
「確かに、あの常にぶすっとした顔で『出し物大会、始めます』とか真面目に言われても、ワクワクはしないかも」
クララの言葉に、だよねー、とみんなが頷く。
「あのお2人さんは、あれでちょうどバランスが取れてるってことだねぃ」
「そうだね、デイジー。あの2人って、結構いいコンビだよね」
リリーはデイジーの指摘に感心した。犬猿の仲と言われているが、あの2人はお互いに足りないところを補っていると言えなくもない。本人に言えば、絶対に嫌な顔をするのだろうが。
「あんたとマートみたいにね、リリー」
デイジーが、にやっとした。
「えー!? そうなの、リリー?」
大きな声のヴィヴィアンに、リリーは慌てた。
「そんなことないよ! マートさんは面白いけど、補い合ってるってことは」
「あー、確かにいいコンビかも」
クララが目を宙にやりながらそんなことを言った。
「え、なになに? 何があったの?」
妙に食いつくヴィヴィアンに、リリーが「ないないない! 何にもない!」と焦る。アハハハ、とみんなに笑われて、リリーは真っ赤になってむくれた。
副村長ラリーの声が、村に響いた。
恐らく、迷子のお知らせを聞いて、マートに風の魔法で拡散させているのだろう。マートのぶすっとした顔が簡単に想像できて、リリーは、イシシッっと笑った。
ライオたちと別れた後、リリーはまたヴィヴィアンと2人で屋台の間をうろうろした。ヴィヴィアンは、懐かしい、懐かしいと言いながらあちこちの屋台を覗き、今年からできた幽霊マークのグッズを真剣に物色(この巾着、かわいい。でも子どもっぽいかな……)したりして、故郷の村の夏祭りを楽しんでくれているようだった。
「リリー、ヴィヴィアン!」
リリーとヴィヴィアンが栗の丘に向かっていると、人ごみの中から2人を呼ぶ声がした。見ると、デイジーがクララの手を引っ張って、こちらに向かって走って来ていた。
「栗の丘に行くんでしょ? 一緒に行こうぜぃ」
「ちょっと、デイジー。いい加減、手、放してよ……」
うんざりした顔のクララと、元気いっぱいのデイジーと並んで歩きながら、リリーたちは栗の丘に向かった。
栗の丘には、祭り用の舞台が設置してある。舞台は高さ1.5メートルほどで、大人が両手を広げて5人ほど立てばいっぱいになる程度の広さである。昔は演劇もやっていたというが、今は夏祭りの出し物で利用されている。
丘には、もう見物客が思い思いの場所でくつろいで、演目が始まるのを待っていた。リリーたちも適当な場所に腰を下ろした。芝生に座るとき、ヴィヴィアンはハンカチを敷いて、その上に座った。
「リリー、今日はエミリーは来てるんかい?」
リリーの左隣に座ったデイジーが声をかけてきた。
「うん。今朝は体調もよさそうだったし、あの子、出し物を楽しみにしてたから。ひいおばあちゃんが連れてきてくれることになってるよ」
「そっか。それなら安心だねぃ」
もしかしたら、木陰がある特等席の辺りにもういるのかもしれない。リリーは首を伸ばして、村のシンボルである大きな栗の木のほうに顔を向けた。
人ごみの中に、白髪を短く整えた曾祖母の、すっきりした横顔が見えた。リリーの視線に気づいたわけでもないだろうが、曾祖母がこちらを向いた。曾祖母はにこっと笑ってこちらに手を振り、隣にいたエミリーにも伝えたようで、エミリーは立ち上がってリリーに大きく手を振った。
元気そうだ。よかった。笑顔で手を振るリリーに気づいて、デイジーもヴィヴィアンもクララも、リリーのひいおばあちゃんとエミリーに手を振った。
舞台に、真っ白なスーツを着たラリーが現れた。うわさによれば、毎年新調しているとのことである。
「お待たせいたしました。これより、我が村が誇る出し物大会を開催いたします! 出演者はだいたい村人ですが、飛び入り参加ももちろん歓迎! 見るも楽しい、やるも楽しい出し物大会の始まりです! 皆様、最後までどうぞお楽しみくださいませ!」
「ラリーってこういうの、ほんと好きだよね」
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「こういうときの挨拶とか、普通は村長がやりそうなもんだけどね」
「まあ、ブリジットがやってもさぁ、いまいち盛り上がらんのと違う?」
デイジーの発言に、みんなで笑う。
「確かに、あの常にぶすっとした顔で『出し物大会、始めます』とか真面目に言われても、ワクワクはしないかも」
クララの言葉に、だよねー、とみんなが頷く。
「あのお2人さんは、あれでちょうどバランスが取れてるってことだねぃ」
「そうだね、デイジー。あの2人って、結構いいコンビだよね」
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「あんたとマートみたいにね、リリー」
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「えー!? そうなの、リリー?」
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「そんなことないよ! マートさんは面白いけど、補い合ってるってことは」
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