29 / 178
第1章 薬師大学校編
29話 精霊のプレゼント
しおりを挟む
舞と精霊がお屋敷に着くと、すでにシウン大将から風の盾が届けられていた。
「すごい、もう届いてるわ。」
私は、相変わらずシウン大将は仕事も早く、とても信頼できる人だと思ったのだ。
「じゃあ、私の蔓でお屋敷を囲みますね。
舞、種を一粒ください。」
私は胸元の小袋の中の種を、精霊に一粒渡したのだ。
種を受け取った精霊は目をつぶって、何か考えているようだった。
少しすると、精霊の手の中の種からウネウネと大小入り混じった蔓がどんどん出て来たのだ。
それは絡み合いながらお屋敷の壁面に伸びて行き、あっという間に全体を包み込んだのだ。
そしてシウン大将から借りた風の盾を精霊の指示のもと蔓達が運び出し、お屋敷の入り口や窓の近くに蔓と一体化されたのだ。
それが行われたのは数分の事で、精霊の凄さをまた実感したのだ。
もともと風の盾は、勢いよく向かってくるものなどを風を吹き起こし跳ね返す力があるのだ。
効果を上手く調整する事も出来ると、シウン大将から聞いていたのだ。
もしも、精霊の蔓により不審者を見つけた時は、その盾の効果を最大に設定する事で撃退する事が出来るのだ。
「ありがとう、すごいわ。
これで安心できる。」
私だけでなくカクやヨクも一緒に住んでいるわけで、彼らを危険にさらすわけにはいかないのだ。
そして私と精霊はお屋敷の中に入ると、精霊が私にプレゼントがあると言ってくれたのだ。
「実は舞が弓矢の練習をしている事を知ったので、ある物を作ったのです。」
精霊はそう言って、左手を見せてくれた。
私は何もなかった手のひらを見ていると、そこに小さな弓矢が浮かび上がってきたのだ。
そしてあっという間に大きくなり、それは精霊と同じように優しく輝いていたのだ。
私はそれを手に持ってみると、城にあったものよりも軽くとても使いやすそうだったのだ。
「私からのプレゼントです。
普通の弓矢とは違い、そんな簡単には壊れませんよ。
それに普段は小さな状態ですが、願えば元の大きさになるので、持ち運ぶのもにもいいですよ。」
「とっても素敵だわ。
もし出来たら一つお願いがあるの・・・」
私はある加工ができないか聞いてみたのだ。
「もちろん出来ますよ。
舞の使いたいようにしましょう。
でも、私がいるのですから、無理はしないでくださいね。
・・・私に舞を守らせてください。」
精霊に弓矢を渡すと、あっという間に私の希望するものに変えてくれたのだ。
私は意外な精霊のプレゼントと、精霊の言葉がとても嬉しかったのだ。
攻撃のためではなく、弓矢を誰かを守るために使いたかったのだ。
○
○
○
魔人の国では黒い影の集団に対する対策を考えていた。
魔人は自分自身で結界を作る事は出来るが、弱っている状況やもともと魔力が弱い魔人では太刀打ちできないかも知れないのだ。
だから、人間だけの問題では無かったのだ。
「ブラック様、どうでしょうか?」
ブラックにある物を見てもらうために魔人の国の職人達が集まっていた。
そこには巨大な水晶を思わせる、青く光る綺麗な石が五つ置かれていたのだ。
それを見てブラックは満足げだった。
「良い出来ですね。」
実はブラックが魔力を込めた石を六つ用意したのだ。
その石を上手く加工して、街を囲むように五ヶ所に配置し、一つは城に置く予定なのだ。
そしてブラックの力で、それらを上手く繋ぎ街全体を結界で囲む事にするのだ。
もしすでに黒い影の集団が入り込んでいるのであれば、それには効果が無いのであるが、少なくとも新たな集団が入るのを阻止できるはずなのだ。
一時的な結界であれば、魔力を込めた石を使わなくても作る事は出来るのだが、ブラック自体の魔力の消耗につながるので持続する事は出来なかった。
だから、舞に渡したペンダントをヒントに作る事にしたのだ。
そしてこの街からの出入りは数カ所のみに限定し、検問を強化する事にしたのだ。
ネフライトはブラックの了解を得たので、職人達に設置の指示をし、早急に取り掛かるように話した。
そして後日、設置した魔力の石を使い、最後の仕上げを行う事としたのだ。
ブラックは一つだけ心配な事があった。
・・・あの黒い集団であれば、この結界で十分なのだ。
しかし、舞の話に出た『大地と闇から生まれし者』がいるなら、こんな私の結界では何も守る事ができないのかも知れない。
それでも、私の今できる事を最大限やらなければいけないと思ったのだ。
私は魔人の王なのだ。
国の者たちを守る責任があるのだ。
「すごい、もう届いてるわ。」
私は、相変わらずシウン大将は仕事も早く、とても信頼できる人だと思ったのだ。
「じゃあ、私の蔓でお屋敷を囲みますね。
舞、種を一粒ください。」
私は胸元の小袋の中の種を、精霊に一粒渡したのだ。
種を受け取った精霊は目をつぶって、何か考えているようだった。
少しすると、精霊の手の中の種からウネウネと大小入り混じった蔓がどんどん出て来たのだ。
それは絡み合いながらお屋敷の壁面に伸びて行き、あっという間に全体を包み込んだのだ。
そしてシウン大将から借りた風の盾を精霊の指示のもと蔓達が運び出し、お屋敷の入り口や窓の近くに蔓と一体化されたのだ。
それが行われたのは数分の事で、精霊の凄さをまた実感したのだ。
もともと風の盾は、勢いよく向かってくるものなどを風を吹き起こし跳ね返す力があるのだ。
効果を上手く調整する事も出来ると、シウン大将から聞いていたのだ。
もしも、精霊の蔓により不審者を見つけた時は、その盾の効果を最大に設定する事で撃退する事が出来るのだ。
「ありがとう、すごいわ。
これで安心できる。」
私だけでなくカクやヨクも一緒に住んでいるわけで、彼らを危険にさらすわけにはいかないのだ。
そして私と精霊はお屋敷の中に入ると、精霊が私にプレゼントがあると言ってくれたのだ。
「実は舞が弓矢の練習をしている事を知ったので、ある物を作ったのです。」
精霊はそう言って、左手を見せてくれた。
私は何もなかった手のひらを見ていると、そこに小さな弓矢が浮かび上がってきたのだ。
そしてあっという間に大きくなり、それは精霊と同じように優しく輝いていたのだ。
私はそれを手に持ってみると、城にあったものよりも軽くとても使いやすそうだったのだ。
「私からのプレゼントです。
普通の弓矢とは違い、そんな簡単には壊れませんよ。
それに普段は小さな状態ですが、願えば元の大きさになるので、持ち運ぶのもにもいいですよ。」
「とっても素敵だわ。
もし出来たら一つお願いがあるの・・・」
私はある加工ができないか聞いてみたのだ。
「もちろん出来ますよ。
舞の使いたいようにしましょう。
でも、私がいるのですから、無理はしないでくださいね。
・・・私に舞を守らせてください。」
精霊に弓矢を渡すと、あっという間に私の希望するものに変えてくれたのだ。
私は意外な精霊のプレゼントと、精霊の言葉がとても嬉しかったのだ。
攻撃のためではなく、弓矢を誰かを守るために使いたかったのだ。
○
○
○
魔人の国では黒い影の集団に対する対策を考えていた。
魔人は自分自身で結界を作る事は出来るが、弱っている状況やもともと魔力が弱い魔人では太刀打ちできないかも知れないのだ。
だから、人間だけの問題では無かったのだ。
「ブラック様、どうでしょうか?」
ブラックにある物を見てもらうために魔人の国の職人達が集まっていた。
そこには巨大な水晶を思わせる、青く光る綺麗な石が五つ置かれていたのだ。
それを見てブラックは満足げだった。
「良い出来ですね。」
実はブラックが魔力を込めた石を六つ用意したのだ。
その石を上手く加工して、街を囲むように五ヶ所に配置し、一つは城に置く予定なのだ。
そしてブラックの力で、それらを上手く繋ぎ街全体を結界で囲む事にするのだ。
もしすでに黒い影の集団が入り込んでいるのであれば、それには効果が無いのであるが、少なくとも新たな集団が入るのを阻止できるはずなのだ。
一時的な結界であれば、魔力を込めた石を使わなくても作る事は出来るのだが、ブラック自体の魔力の消耗につながるので持続する事は出来なかった。
だから、舞に渡したペンダントをヒントに作る事にしたのだ。
そしてこの街からの出入りは数カ所のみに限定し、検問を強化する事にしたのだ。
ネフライトはブラックの了解を得たので、職人達に設置の指示をし、早急に取り掛かるように話した。
そして後日、設置した魔力の石を使い、最後の仕上げを行う事としたのだ。
ブラックは一つだけ心配な事があった。
・・・あの黒い集団であれば、この結界で十分なのだ。
しかし、舞の話に出た『大地と闇から生まれし者』がいるなら、こんな私の結界では何も守る事ができないのかも知れない。
それでも、私の今できる事を最大限やらなければいけないと思ったのだ。
私は魔人の王なのだ。
国の者たちを守る責任があるのだ。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。
彩世幻夜
ファンタジー
※ 2019年ファンタジー小説大賞 148 位! 読者の皆様、ありがとうございました!
裕福な商家の生まれながら身分は平民の悪役令嬢に転生したアンリが、ユニークスキル「クリエイト」を駆使してシナリオ改変に挑む、恋と冒険から始まる成り上がりの物語。
※2019年10月23日 完結
新作
【あやかしたちのとまり木の日常】
連載開始しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる