私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤

文字の大きさ
30 / 178
第1章 薬師大学校編

30話 対策

しおりを挟む
 ヨクは舞から聞いた事をここだけの話とし、王にのみ話したのだ。

「何とも信じられない話であるな・・・
 それにしても、異世界につながる洞窟が現れてからというもの、驚きの日々であるな・・・」

 オウギ王は胸がいっぱいになったようで、大きなため息をついたのだ。

「全くその通りでございます。
 まだまだ私も引退するわけにはいきませんな。」

 ヨクはオウギ王の言葉に頷いたのだ。
 そして、舞を襲った三人組についても内密に捜査をする事になったのだ。
 どんな者達が関係しているかわからないため、本当に信頼のおける者のみに捜査の指示をしなければならないと二人は思ったのだ。
 そして人選はシウン大将に任せる事としたのだ。

 オウギ王と王室の薬師達は何度も話し合いを重ねていた。
 薬師達の話し合いの場には、黒い影の集団の弱点は光である事だけを話したのだ。
 実際、舞とカクが先日遭遇した影達は、温室での強い光で消滅させる事が出来たのだ。
 今この人間の国に、どの程度進入しているかは不明ではあるが、対策は考えるべきであったのだ。
 少なくとも、明るい日の元では安心である事がわかっただけでも進展なのだ。
 そして魔人の世界とつながる洞窟の入り口に、光の鉱石からなる灯りを増やす事にしたのだ。
 少なくともその光がある限り、黒い影達はこちらにくる事は無いのではと思ったのだ。
 その光の鉱石からなる灯りは、昼夜問わず、ずっと輝きを放っており、その場所は夜とは思えない明るさとなったのだ。


              ○

              ○

              ○


 その夜、ヨクとカクが家に帰ると、多数の蔓が何重にも絡み合いながらお屋敷全体を包み込んでいたのだ。
 入り口の扉と窓はそのままになっており、問題なく入る事は出来たのだ。
 
「あ、お帰りなさい。
 お屋敷がすごい事になってごめんなさい。」

 舞は申し訳なさそうに二人を迎えたのだ。

「舞、家がすごい事になっているね。
 驚いたよ。」

 カクは不思議そうに窓から外を覗いたのだ。

「これは、精霊の守りという事だね。
 それに風の盾も使われてるようだが。」

 ヨクは問題の答えを言うように、嬉しそうに話したのだ。

「さすが、その通りよ。
 風の盾をシウン大将から借りたの。
 そして、精霊に蔓でお屋敷の防御をお願いしたのよ。
 これで不審者が来ても安心よ。
 私の為に二人に迷惑をかける事になるかも・・・
 ごめんなさい。」

 舞がそう言うと、ヨクが笑いながら話したのだ。

「舞、私たちは家族も同然なのだよ。
 そんな事は気にするで無い。
 もっと我らを頼りにするのだぞ。
 舞は頑張りすぎるからのう。
 ただ、危ない事だけはするで無いぞ。
 舞に何かあったら、快くこちらに送り出してくれた父上やマサユキに顔向けできんからな。」

「ええ、もちろんよ。」

 舞はヨクの言葉が本当に嬉しかったのだ。

 そして舞は三人組に襲われた時に言われた言葉について、自分の思う事を話したのだ。

「あの三人組は『災いをもたらす黒髪の娘って』私の事を言ってた。
 ・・・やっぱりブラックが言う通り、五百年前の事が関係してると思うの。
 その時、私の世界からここに来たハナさんが、魔人達を討伐しようとする集団に軟禁されたと聞いているのよ。
 その時は、王家やケイシ家の人達も拘束されたって・・・
 ハナさんは作りたくも無い闇の薬を、魔人を倒す為に作るように強要されたと聞いているわ。
 もしかしたら、同じ事を繰り返そうとしている集団がいるのかも知れない。
 もちろん、私はそんな薬は作らないけれどね。
 ・・・だから、二人も本当に気を付けてほしいの。」

 舞は、襲ってきた三人組の件をシウン大将に任せてあると聞いたので、ヨクには以前魔人討伐を掲げた者達の子孫やその思想を受け継いだ者がいないかを探してもらいたいと話したのだ。

「わかった、舞。
 その件はこちらに任せておくれ。」

 ヨクはそう言って微笑んだのだ。
 舞は頷いたが、どうしても暗躍している者達を自分で探したかったのだ。
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜
ファンタジー
※ 2019年ファンタジー小説大賞 148 位! 読者の皆様、ありがとうございました! 裕福な商家の生まれながら身分は平民の悪役令嬢に転生したアンリが、ユニークスキル「クリエイト」を駆使してシナリオ改変に挑む、恋と冒険から始まる成り上がりの物語。 ※2019年10月23日 完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...