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第1章 薬師大学校編
38話 リョウの憂鬱
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リョウ=コウカは、ずっと悩んでいた事があった。
ある団体の上層部の方から、あの黒髪の娘をどうにか連れて来るようにと、指示を受けていたのだ。
私はとても躊躇していた。
だが、私が行動しない事に痺れを切らし、他の者に強行手段を取らせていたのだ。
もちろんそれは失敗に終わったのだが。
だが私がこのまま動かないと、また他の者達に指示をする事になるだろう。
・・・それだけは避けたいと思ったのだ。
ちょうど半年くらい前、友人から一緒に集会に出ないかと誘われたのだ。
魔人の国につながる洞窟が出現してから、正直私は国の方針に納得がいかなかった。
もちろん、魔獣や魔人達が現れた時に、圧倒的な力の差を目の前で見て、頭ではわかっていたのだ。
だからこそ、王のとった態度は理解できるのだ。
国民、いや人間の世界を守る為にも共存を選ぶしか無かったこと。
だが私の中には、釈然としないものがずっとあったのだ。
・・・そんな時に誘われたのだ。
あの方達が掲げている思想・・・魔人は排除すべき存在という事に共感はできたのだ。
この団体の中心となる方達は、五百年前の人魔戦争の時に魔人達に傷つけられた人達の子孫だった。
魔人達が別の世界に行ってしまった後の五百年は人間同士の大きな争いも無く、本当に平和な世界だったようだ。
だが、今回洞窟が現れた事で、あの方達も行動を起こしたのだ。
そして少しずつではあるが、同志を集め始めたのだ。
この世界から魔人達を追い出し、人間だけの世界にする事に賛同する者達を。
・・・それがあの方達の希望。
洞窟が現れた時の魔獣や魔人による脅威。
魔人の王とこの国の王が共存を考えても、誰もがそう思わなければ、以前のような戦いになってしまうかも知れない。
洞窟を閉鎖し、この五百年間と同じように魔人の世界とは隔絶する事が一番だと思うのだった。
だが・・・人間のみの世界を作り出す為に、彼女を利用する事には疑問があったのだ。
『黒髪の娘が現れる時災いが起きる』と、あの方達は言っているが、どういう意味なのか?
彼女は魔獣から人間を守り、魔人との共存が可能である事を身をもって表している人なのだ。
彼女が普通の女性でない事は、会った時から感じてはいたのだ。
しかし、災いをもたらすとはとても思えない。
五百年前を知るものがいなければ、本当の事はわからないか・・・
知っている者は、魔人だけなのかも知れない。
だとするなら・・・
私は決断したのだ。
○
○
○
舞は閉じ込められた部屋の中をウロウロ歩いて考えていた。
本当にリョウが私を陥れたのだろうか。
状況を考えればそうなのだが・・・
しかし、あのケイトやライトの兄なのだ。
それに、私は彼が怪我人の治療に、一生懸命対応していた姿を知っているのだ。
何か理由があるのかも知れない・・・
今、種から精霊を呼んで、ここから出るのは簡単だろう。
だがそれでは、リョウの真意や裏で暗躍している者を見つける事はできない。
この部屋見る限り、私に危害を与える気は無いのだろう。
それならば、少し状況を見ようと思ったのだ。
まずは、私をここに閉じ込めた理由を知りたかったのだ。
どこまで私の事を知っている者がいるのかを確認したかったのだ。
そう考えていた時、ドアがギーッと重い音を立ててゆっくり開いたのだ。
ある団体の上層部の方から、あの黒髪の娘をどうにか連れて来るようにと、指示を受けていたのだ。
私はとても躊躇していた。
だが、私が行動しない事に痺れを切らし、他の者に強行手段を取らせていたのだ。
もちろんそれは失敗に終わったのだが。
だが私がこのまま動かないと、また他の者達に指示をする事になるだろう。
・・・それだけは避けたいと思ったのだ。
ちょうど半年くらい前、友人から一緒に集会に出ないかと誘われたのだ。
魔人の国につながる洞窟が出現してから、正直私は国の方針に納得がいかなかった。
もちろん、魔獣や魔人達が現れた時に、圧倒的な力の差を目の前で見て、頭ではわかっていたのだ。
だからこそ、王のとった態度は理解できるのだ。
国民、いや人間の世界を守る為にも共存を選ぶしか無かったこと。
だが私の中には、釈然としないものがずっとあったのだ。
・・・そんな時に誘われたのだ。
あの方達が掲げている思想・・・魔人は排除すべき存在という事に共感はできたのだ。
この団体の中心となる方達は、五百年前の人魔戦争の時に魔人達に傷つけられた人達の子孫だった。
魔人達が別の世界に行ってしまった後の五百年は人間同士の大きな争いも無く、本当に平和な世界だったようだ。
だが、今回洞窟が現れた事で、あの方達も行動を起こしたのだ。
そして少しずつではあるが、同志を集め始めたのだ。
この世界から魔人達を追い出し、人間だけの世界にする事に賛同する者達を。
・・・それがあの方達の希望。
洞窟が現れた時の魔獣や魔人による脅威。
魔人の王とこの国の王が共存を考えても、誰もがそう思わなければ、以前のような戦いになってしまうかも知れない。
洞窟を閉鎖し、この五百年間と同じように魔人の世界とは隔絶する事が一番だと思うのだった。
だが・・・人間のみの世界を作り出す為に、彼女を利用する事には疑問があったのだ。
『黒髪の娘が現れる時災いが起きる』と、あの方達は言っているが、どういう意味なのか?
彼女は魔獣から人間を守り、魔人との共存が可能である事を身をもって表している人なのだ。
彼女が普通の女性でない事は、会った時から感じてはいたのだ。
しかし、災いをもたらすとはとても思えない。
五百年前を知るものがいなければ、本当の事はわからないか・・・
知っている者は、魔人だけなのかも知れない。
だとするなら・・・
私は決断したのだ。
○
○
○
舞は閉じ込められた部屋の中をウロウロ歩いて考えていた。
本当にリョウが私を陥れたのだろうか。
状況を考えればそうなのだが・・・
しかし、あのケイトやライトの兄なのだ。
それに、私は彼が怪我人の治療に、一生懸命対応していた姿を知っているのだ。
何か理由があるのかも知れない・・・
今、種から精霊を呼んで、ここから出るのは簡単だろう。
だがそれでは、リョウの真意や裏で暗躍している者を見つける事はできない。
この部屋見る限り、私に危害を与える気は無いのだろう。
それならば、少し状況を見ようと思ったのだ。
まずは、私をここに閉じ込めた理由を知りたかったのだ。
どこまで私の事を知っている者がいるのかを確認したかったのだ。
そう考えていた時、ドアがギーッと重い音を立ててゆっくり開いたのだ。
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