48 / 178
第1章 薬師大学校編
48話 侵食された集団
しおりを挟む
舞は少し離れた場所で学長の演説や、外から聞こえる学長を支持する声に耳を傾けていた。
学長が演説を行った後には、他の者も学校外に向けて何かを話すように促されていた。
だが、よく見ると彼等の表情は学長と違い曇っていたのだ。
緊張や不安からなのか、とても今から何かを話そうとする表情には見えなかったのだ。
私はこの温室の入口にいる武器を持った兵士達をどうにかしなければと思ったのだ。
そして精霊からもらった弓矢を大きくすると、温室の入口の床に狙いをつけた。
勢いよく矢が放たれると、さっきも使用した薬を到達させる事が出来たのだ。
床でその薬が破裂すると、明るい光の霧が舞い上がり、あっという間にその周辺にいた人達に吸収されたのだ。
すると、入口にいた武器を持った兵士達を中心に、ゆっくりと倒れ出したのだ。
彼等に少し眠ってもらうことにしたのだ。
それを見た周りの人達は驚いてこちらを振り向き、ざわつきだしたのだ。
その状況に学長も私に気付き、声をかけて来たのだ。
「これはこれは、お嬢さん、どうしてここに?
地下で大人しくしていると思っていたのですがね。
まだ、お嬢さんの出番では無いですよ。」
学長はそう言い、驚く表情をするどころか、私を見て微笑んだのだ。
つまりは、私があの場所から抜け出す事は予想していたのだろう。
「残念ながらあの場所は好きになれなかったので、外に出させてもらいました。
仮面の人物はあなただったのですね。
・・・その方達は望んでここにいるようには見えませんが。」
私はそう言って、演説を促されていた人達をチラッと見たのだ。
彼等は思い詰めたような顔で、下を向いていたのだった。
「ここにいるのは、私の考えに賛同してもらった人達だけですよ。
学内の人達にも、先程わかってもらったのだよ。
無理にこちらに来ている人など、一人たりともおりませんよ。
それに、下を見てみなさい。
外でも私に賛同する者達が沢山いるでは無いかね。
今こそ、変化をもたらす時なのだよ。
そして、お嬢さん・・・あなたの力が必要なのですよ。
魔人に災いをもたらす娘さん。」
学長はそう言って私に手を差し出したのだ。
そう言う学長の顔は、不気味に微笑んでいたのだ。
「私が賛同する事が無いのは、わかっているはずでしょう?
だから、手を貸すこともないわ。
これが本当にあなたの希望なの?」
私はそう言って学長を睨んだのだ。
しかしその時、そのやりとりを見ていた周りの人達の冷たい視線を感じたのだ。
彼等は急に、まるで誰かに操られているかのように、ブツブツと何か言いながら私の近くに集まりだしたのだ。
そしてさっきまで別の場所で感じた嫌な気配を、彼等の中に感じたのだ。
『お前は間違っている』
『我らが指導者の指示に従うのだ・・・』
そこにいる多くの者がそう言いながら、私を囲みだしたのだ。
胸ポケットにいた精霊は肩に移動し辺りを見回したのだ。
「舞、気をつけて。
一瞬で暗闇から黒い影が現れ、この人達に入り込んだみたいだ。」
精霊はそう言って、周りを囲みだした人達に何か仕掛けようとしたのだ。
「ダメ、この人達は普通の人間よ。」
私は精霊に待つように話したのだ。
やはり黒い影の集団は、この世界にまだ存在していたのだ。
学長を見ると、この状況になる事がわかっていたかのように、驚くどころか顔を緩めていたのだ。
まさか・・・
とにかく私は彼等に捕まりたくは無かったが、傷つけることもしたくなかった。
どうしたものかと考えていた時、バサっと大きな音を立てて何かが頭上に現れたのだ。
見上げると、ドラゴンの翼を持ったアクアだったのだ。
アクアは集団に囲まれている私の元に急降下し、私を抱えるとすぐに上昇して空中に止まったのだ。
「舞、なんで相変わらず危ないところにいるのだ?」
私を抱えながらアクアは不思議な顔をしたのだ。
「アクアこそなんで?」
「ユークレイスと仕事でこっちに来たのだ。
人間の城に行く途中で、気になる事があってな。」
真面目そうに答えるアクアを見ると、とてもおかしかったのだ。
「アクアも仕事をしているのね。」
「当たり前だ。
舞は失礼だな。」
こんな状況であったが、アクアとそんな会話が出来て、私はとても安心したのだった。
学長が演説を行った後には、他の者も学校外に向けて何かを話すように促されていた。
だが、よく見ると彼等の表情は学長と違い曇っていたのだ。
緊張や不安からなのか、とても今から何かを話そうとする表情には見えなかったのだ。
私はこの温室の入口にいる武器を持った兵士達をどうにかしなければと思ったのだ。
そして精霊からもらった弓矢を大きくすると、温室の入口の床に狙いをつけた。
勢いよく矢が放たれると、さっきも使用した薬を到達させる事が出来たのだ。
床でその薬が破裂すると、明るい光の霧が舞い上がり、あっという間にその周辺にいた人達に吸収されたのだ。
すると、入口にいた武器を持った兵士達を中心に、ゆっくりと倒れ出したのだ。
彼等に少し眠ってもらうことにしたのだ。
それを見た周りの人達は驚いてこちらを振り向き、ざわつきだしたのだ。
その状況に学長も私に気付き、声をかけて来たのだ。
「これはこれは、お嬢さん、どうしてここに?
地下で大人しくしていると思っていたのですがね。
まだ、お嬢さんの出番では無いですよ。」
学長はそう言い、驚く表情をするどころか、私を見て微笑んだのだ。
つまりは、私があの場所から抜け出す事は予想していたのだろう。
「残念ながらあの場所は好きになれなかったので、外に出させてもらいました。
仮面の人物はあなただったのですね。
・・・その方達は望んでここにいるようには見えませんが。」
私はそう言って、演説を促されていた人達をチラッと見たのだ。
彼等は思い詰めたような顔で、下を向いていたのだった。
「ここにいるのは、私の考えに賛同してもらった人達だけですよ。
学内の人達にも、先程わかってもらったのだよ。
無理にこちらに来ている人など、一人たりともおりませんよ。
それに、下を見てみなさい。
外でも私に賛同する者達が沢山いるでは無いかね。
今こそ、変化をもたらす時なのだよ。
そして、お嬢さん・・・あなたの力が必要なのですよ。
魔人に災いをもたらす娘さん。」
学長はそう言って私に手を差し出したのだ。
そう言う学長の顔は、不気味に微笑んでいたのだ。
「私が賛同する事が無いのは、わかっているはずでしょう?
だから、手を貸すこともないわ。
これが本当にあなたの希望なの?」
私はそう言って学長を睨んだのだ。
しかしその時、そのやりとりを見ていた周りの人達の冷たい視線を感じたのだ。
彼等は急に、まるで誰かに操られているかのように、ブツブツと何か言いながら私の近くに集まりだしたのだ。
そしてさっきまで別の場所で感じた嫌な気配を、彼等の中に感じたのだ。
『お前は間違っている』
『我らが指導者の指示に従うのだ・・・』
そこにいる多くの者がそう言いながら、私を囲みだしたのだ。
胸ポケットにいた精霊は肩に移動し辺りを見回したのだ。
「舞、気をつけて。
一瞬で暗闇から黒い影が現れ、この人達に入り込んだみたいだ。」
精霊はそう言って、周りを囲みだした人達に何か仕掛けようとしたのだ。
「ダメ、この人達は普通の人間よ。」
私は精霊に待つように話したのだ。
やはり黒い影の集団は、この世界にまだ存在していたのだ。
学長を見ると、この状況になる事がわかっていたかのように、驚くどころか顔を緩めていたのだ。
まさか・・・
とにかく私は彼等に捕まりたくは無かったが、傷つけることもしたくなかった。
どうしたものかと考えていた時、バサっと大きな音を立てて何かが頭上に現れたのだ。
見上げると、ドラゴンの翼を持ったアクアだったのだ。
アクアは集団に囲まれている私の元に急降下し、私を抱えるとすぐに上昇して空中に止まったのだ。
「舞、なんで相変わらず危ないところにいるのだ?」
私を抱えながらアクアは不思議な顔をしたのだ。
「アクアこそなんで?」
「ユークレイスと仕事でこっちに来たのだ。
人間の城に行く途中で、気になる事があってな。」
真面目そうに答えるアクアを見ると、とてもおかしかったのだ。
「アクアも仕事をしているのね。」
「当たり前だ。
舞は失礼だな。」
こんな状況であったが、アクアとそんな会話が出来て、私はとても安心したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
青い鳥と 日記 〜コウタとディック 幸せを詰め込んで〜
Yokoちー
ファンタジー
もふもふと優しい大人達に温かく見守られて育つコウタの幸せ日記です。コウタの成長を一緒に楽しみませんか?
(長編になります。閑話ですと登場人物が少なくて読みやすいかもしれません)
地球で生まれた小さな魂。あまりの輝きに見合った器(身体)が見つからない。そこで新米女神の星で生を受けることになる。
小さな身体に何でも吸収する大きな器。だが、運命の日を迎え、両親との幸せな日々はたった三年で終わりを告げる。
辺境伯に拾われたコウタ。神鳥ソラと温かな家族を巻き込んで今日もほのぼのマイペース。置かれた場所で精一杯に生きていく。
「小説家になろう」「カクヨム」でも投稿しています。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
底辺デザイナー、異世界では魔法陣クリエイターとして最強でした
新川キナ
ファンタジー
現代日本で底辺デザイナーとして働いていたリサは、事故死して異世界転生。
与えられたのは「脳内に描いた絵を具現化出来る」という、遊び半分の余り物スキルだった。
だが、その力は魔法陣やスクロール作製において驚異的な才能を発揮する。
孤児として育ちながら、老職人に拾われて魔法陣の奥義を学ぶリサ。
凡人だった彼女はいつしか「魔法陣デザイナー」として異世界に名を刻んでいく──
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる