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第5章 闇との戦い編
170話 消滅への道
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舞は膝から崩れ落ちたブラックを抱きしめると、ゆっくりと横にしたのだ。
舞はあっという間に眠りにつかせる薬を使ったのだ。
ブラックの意識が無くなったことで、造られた結界は消滅したのだ。
舞はすかさず、天に向けてある薬を投げると、矢で射抜いたのだ。
すると、その場にキラキラと優しく光る粉雪のような物が降りはじめ、あたりは幻想的な光景となったのだ。
それは誰もが目を奪われるほど美しく、そして儚い物であった。
舞は異物を外に排除する薬を天に向けて投げたのだ。
この一帯にその薬は舞い散り、闇の創造者との融合を阻んだのだった。
舞は光と大地の創造者から消滅の時間までのカウントダウンを聞いていた。
ここから移動する時間があれば、ブラックとの融合が出来なくても、他の者に標的を変えるかもしれないと危惧していたのだ。
物質的な存在である者は、誰でも代わりになる。
だが、もう時間は残りわずかになっていたのだ。
「人間の娘・・・何をした!」
黒い煙の姿の闇の創造者は怒りの声を私に向けたのだ。
「もう、ブラックだけでなく、あなたは誰とも融合なんてできないわ。」
闇の創造者はブラックの身体と融合を試みようとしたが、優しい光の壁に包まれたブラックには、融合どころか入り込む事も出来なかったのだ。
「残念だったわね。
あなたは、何もできないまま、消滅を迎えるのよ。
後少しである事はわかっているわ。」
その時である。
それは一瞬であった。
私の顔のすぐそばを、鋭い剣がかすめたのだ。
急いで剣が飛んで来た方を見ると、一人の人物が怒りの形相で歩いて来たのだ。
国境の壁に出来た大穴から現れたその姿は、マキョウ国の王に他ならなかった。
そして彼は、闇の創造者の前にひざまづいたのだ。
「あなた様に忠誠を誓う私の身体をお使いください。
壁の向こうから聞いておりました。
こんな魔人や人間の小娘に惑わされる事など、あってはならないのです。
私が救世主であると言ってくれたではないですか?
そして、いずれ魔人を討伐すると話していたではありませんか?
私を高みへとお導きください。」
マキョウ国の王はそう話しながら、闇の創造者をすがるような目で見たのだ。
「お前は所詮、人間。
よく働く使い捨ての駒でしかない。
立場をわきまえろ。」
闇の創造者はそう冷たく言うと、それ以上マキョウ国の王を相手にしようとはしなかったのだ。
その態度に、マキョウ国の王は顔面蒼白となったのだ。
そして、持っていた剣を横になっているブラックに向け叫んだのだ。
「こんな者がいるから、惑わされるのだ。」
そう言って、ブラックに対して剣を振りおろそうとしたのだ。
こんな事をされる為に、ブラックを眠らせたわけではない・・・
私は精一杯の力で、彼を突き飛ばしたのだ。
すると、マキョウ国の王はバランスを崩して転がり、中々立ち上がる事が出来ないようだった。
なんて、ひ弱な王なのだろう・・・
私はブラックの身体に覆い被さり、二人を睨んだのだ。
壁の向こうでは、薬の効果は無いはず。
後少しと言うのに、こんな時に出てくるなんて・・・
融合されてしまったら、ここで闇の薬を使うしか無いのだろうか。
人間と融合しても、今までの力を失うわけでは無いはず。
短い寿命となるだけ。
多くの年月では無いかもしれないが、そんな危険な者をそのままにはしておけないのだ。
しかし、ここでもし薬を使ったら・・・私だけじゃなくブラックも巻き込まれる。
それだけは避けたかったのに。
・・・ハナさんだったら、どうしただろう・・・
私は表情とは裏腹に、迷っていたのだ。
その時、私の胸元が暖かくなったのだ。
私は森の精霊から貰った種を入れてあった小袋を、手で握りしめたのだ。
ここに来る前に、森の精霊にあるお願い事をしたのだった。
その中の一つに、私にどんな事があっても助けに来てはいけないという事。
もし精霊に何かあれば、私の大事なもう一つの願いを叶える事が出来なくなるかもしれないからだ。
精霊はそれを承諾したはずなのだ。
それなのに・・・
私は出て来てはいけないと、心の中で祈ったのだ。
すると、精霊からの思念が伝わって来たのだ。
『約束通り、そっちには出て行かないよ。
受け取ってほしいものがあるんだ・・・
舞ならどうすれば良いかわかるね。』
私は精霊から告げられた事を、すっかり忘れていたのだ。
私は立ち上がると、闇の創造者の前に歩き出したのだ。
「人間と融合しても、所詮は短い寿命。
消滅と同じような物よ。
闇の創造者も、本当の意味で地に落ちたものね・・・」
私はわざと怒らせるような事を言って、時間を稼ごうとしたのだ。
「その通りだ。
こんな人間と融合するくらいなら、他の魔人を探すとしよう。
まだそのくらいの時間はあるのだよ。
この姿なら、自由なのだ。」
「・・・そうかもね。
でも・・・もう遅いわ。」
そう言い終わる前に、私の足元に青く光る魔法陣が浮かび上がったのだ。
そして、それと同時に私と闇の創造者の真上に光の鉱石の粉末を投げたのだ。
その優しい霧状の光は、私と闇の創造者を包み込み、光の霧が消えると、私の生まれた世界の私の部屋に移動していたのだ。
この世界に来た闇の創造者は、何の力も持たないただの意思でしかなかった。
そして何が起きたかわからない闇の創造者は、わからないまま、跡形もなく消滅したのだった。
舞はあっという間に眠りにつかせる薬を使ったのだ。
ブラックの意識が無くなったことで、造られた結界は消滅したのだ。
舞はすかさず、天に向けてある薬を投げると、矢で射抜いたのだ。
すると、その場にキラキラと優しく光る粉雪のような物が降りはじめ、あたりは幻想的な光景となったのだ。
それは誰もが目を奪われるほど美しく、そして儚い物であった。
舞は異物を外に排除する薬を天に向けて投げたのだ。
この一帯にその薬は舞い散り、闇の創造者との融合を阻んだのだった。
舞は光と大地の創造者から消滅の時間までのカウントダウンを聞いていた。
ここから移動する時間があれば、ブラックとの融合が出来なくても、他の者に標的を変えるかもしれないと危惧していたのだ。
物質的な存在である者は、誰でも代わりになる。
だが、もう時間は残りわずかになっていたのだ。
「人間の娘・・・何をした!」
黒い煙の姿の闇の創造者は怒りの声を私に向けたのだ。
「もう、ブラックだけでなく、あなたは誰とも融合なんてできないわ。」
闇の創造者はブラックの身体と融合を試みようとしたが、優しい光の壁に包まれたブラックには、融合どころか入り込む事も出来なかったのだ。
「残念だったわね。
あなたは、何もできないまま、消滅を迎えるのよ。
後少しである事はわかっているわ。」
その時である。
それは一瞬であった。
私の顔のすぐそばを、鋭い剣がかすめたのだ。
急いで剣が飛んで来た方を見ると、一人の人物が怒りの形相で歩いて来たのだ。
国境の壁に出来た大穴から現れたその姿は、マキョウ国の王に他ならなかった。
そして彼は、闇の創造者の前にひざまづいたのだ。
「あなた様に忠誠を誓う私の身体をお使いください。
壁の向こうから聞いておりました。
こんな魔人や人間の小娘に惑わされる事など、あってはならないのです。
私が救世主であると言ってくれたではないですか?
そして、いずれ魔人を討伐すると話していたではありませんか?
私を高みへとお導きください。」
マキョウ国の王はそう話しながら、闇の創造者をすがるような目で見たのだ。
「お前は所詮、人間。
よく働く使い捨ての駒でしかない。
立場をわきまえろ。」
闇の創造者はそう冷たく言うと、それ以上マキョウ国の王を相手にしようとはしなかったのだ。
その態度に、マキョウ国の王は顔面蒼白となったのだ。
そして、持っていた剣を横になっているブラックに向け叫んだのだ。
「こんな者がいるから、惑わされるのだ。」
そう言って、ブラックに対して剣を振りおろそうとしたのだ。
こんな事をされる為に、ブラックを眠らせたわけではない・・・
私は精一杯の力で、彼を突き飛ばしたのだ。
すると、マキョウ国の王はバランスを崩して転がり、中々立ち上がる事が出来ないようだった。
なんて、ひ弱な王なのだろう・・・
私はブラックの身体に覆い被さり、二人を睨んだのだ。
壁の向こうでは、薬の効果は無いはず。
後少しと言うのに、こんな時に出てくるなんて・・・
融合されてしまったら、ここで闇の薬を使うしか無いのだろうか。
人間と融合しても、今までの力を失うわけでは無いはず。
短い寿命となるだけ。
多くの年月では無いかもしれないが、そんな危険な者をそのままにはしておけないのだ。
しかし、ここでもし薬を使ったら・・・私だけじゃなくブラックも巻き込まれる。
それだけは避けたかったのに。
・・・ハナさんだったら、どうしただろう・・・
私は表情とは裏腹に、迷っていたのだ。
その時、私の胸元が暖かくなったのだ。
私は森の精霊から貰った種を入れてあった小袋を、手で握りしめたのだ。
ここに来る前に、森の精霊にあるお願い事をしたのだった。
その中の一つに、私にどんな事があっても助けに来てはいけないという事。
もし精霊に何かあれば、私の大事なもう一つの願いを叶える事が出来なくなるかもしれないからだ。
精霊はそれを承諾したはずなのだ。
それなのに・・・
私は出て来てはいけないと、心の中で祈ったのだ。
すると、精霊からの思念が伝わって来たのだ。
『約束通り、そっちには出て行かないよ。
受け取ってほしいものがあるんだ・・・
舞ならどうすれば良いかわかるね。』
私は精霊から告げられた事を、すっかり忘れていたのだ。
私は立ち上がると、闇の創造者の前に歩き出したのだ。
「人間と融合しても、所詮は短い寿命。
消滅と同じような物よ。
闇の創造者も、本当の意味で地に落ちたものね・・・」
私はわざと怒らせるような事を言って、時間を稼ごうとしたのだ。
「その通りだ。
こんな人間と融合するくらいなら、他の魔人を探すとしよう。
まだそのくらいの時間はあるのだよ。
この姿なら、自由なのだ。」
「・・・そうかもね。
でも・・・もう遅いわ。」
そう言い終わる前に、私の足元に青く光る魔法陣が浮かび上がったのだ。
そして、それと同時に私と闇の創造者の真上に光の鉱石の粉末を投げたのだ。
その優しい霧状の光は、私と闇の創造者を包み込み、光の霧が消えると、私の生まれた世界の私の部屋に移動していたのだ。
この世界に来た闇の創造者は、何の力も持たないただの意思でしかなかった。
そして何が起きたかわからない闇の創造者は、わからないまま、跡形もなく消滅したのだった。
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