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ギルド
しおりを挟むしばらくするとどろ子も起きてきたので2人で下に降りて宿で朝食を取る。ご飯は黒いちょっと固めのパンとクタクタに煮た野菜が入ったスープで味はそこそこだった。どろ子は『ひなたの赤い実の方がおいしい』と言っている。俺もそう思う。りんご、全部売るんじゃなかったかなぁ。落ち着いたらまたあの黒い森にりんごを取りに行きましょう。
さて、ご飯もちゃんと食べたしいよいよギルドを探しに行きますか。異世界きたらギルドに行って冒険者になるのはお約束ですよね。この世界には冒険者ギルドはあるのかな?
宿のおっちゃんに代金を払うついでにギルドについて聞くとあっさり場所を教えてくれた。どうやら冒険者ギルドはあるらしい。
宿を出てギルドに向かう。大きな建物でギルドはすぐに見つかった。人の出入りも多いし繁盛しているようだ。てことはこの世界はモンスターが多いのかな?その辺りの情報もギルドで得られるといいな。
さて、そんなわけでギルドに一歩足を踏み入れたわけだけれど俺達は一般的男子高校生と超激美少女の2人組、武装しているわけではないし側から見ればとても強そうには見えないだろう。ということはアレか、アレが来るのか?
お約束のチンピラに絡まれるというイベントが!
『そんな貧弱な身体でよく冒険者になろうと思ったな?こいつはいっちょ先輩して世間の厳しさを教えてやるぜ!』的なこと言って飛びかかってきたモブをけちょんけちょんにのして逆にこっちの強さを見せつける無双系主人公のイベントがくるんじゃね?そしてギルドの受付嬢に惚れられるんですね、わかります。ふふふ、ついに俺も無双系主人公の仲間入りというわけですね。さぁ、かかってこいチンピラども!この陽向くんが相手になってやろう!
ワクワクしながら中に足を踏み入れる。が、中に入って誰かに絡まれることはない。
というか周りを見ると草でいっぱいになったカゴを持った女の子や杖をつきながら歩くヨボヨボのおじいちゃんなんかも普通に出入りしているしギルドは誰でも気軽にこれる所なのかもしれない。チンピライベントはないのか。ちょっぴり寂しいです。
ギルド内を見渡して丸い耳を頭に乗せたお姉さんが座っているカウンターに行く。あれは熊耳かな?野郎が受付をしているカウンターもがあるがそこは男の本能に従っておく。美人のお姉さんとお話ししたいというのは当然ですのことですから。
「あの、冒険者になりたいんですが、どうしたらいいですか?」
「こちらで承っています、くま。この街の住人の方ですか?」
「え、いえ、全然違うところから来ました」
「では、お名前をこちらに。1人につき手数料として中銅貨1枚を頂戴しますがよろしいでしょうか?くま」
お姉さんの語尾には特徴的な言葉がくっついている。くまっ言っているしやはりあれは熊耳なのかな?でも熊ってクマクマ鳴かないよね。
まあ特徴的な口癖だろうがお姉さんが巨乳美人であることは変わらないので良いでしょう。それよりどうやら冒険者になる為にはお金が必要なようだ。中銅貨1枚くらいなら許容範囲だろう。やはりリンゴはお金に変えといてよかったね。ちょっと勿体なかったけど。
さてと、じゃあこの紙に名前を書いたらいいのか。うん。
いやでも、俺この世界の文字は知らないのだが?
「えっと、すいません、字が書けないのですが」
「ではこちらで代筆させていただきます、くまぁ。お名前は?」
「陽向です。柊野 陽向、ひなたが名前です。こっちの子はどろ子です」
「陽向様とどろ子様ですね。では登録料をいただきます、くま。」
どろ子と2人分で大銅貨1枚をカウンターに置くとジャラジャラと10円玉くらいの大きさの硬貨を20枚くらいと赤茶色のカードを2枚カウンターにおいた。
「これがお二方のギルドカードです。ギルドへの貢献を記録するものですので無くさないようにお願いします、くま。皆様初めはFランクから始めて頂きましてギルドへの貢献で順に上がっていきます。最高ランクはSですがこのランクに該当する冒険者は今のところいらっしゃいません。過去の例でいいますと、かつて世界を救われた勇者様はSランクでした、くま」
「おおっ!勇者がいたんですね!」
勇者という言葉を聞いてテンションが上がる。勇者になって魔王を倒してお姫様と結ばれる妄想は100回はしましたからね。やっぱり物語の主人公である勇者というポジションには憧れます。
「300年前に黒衣の王を倒しガイラント王国の国王となった方です、くま。物語になるような特別な英雄であり一般的なことではありません。冒険者として成功するならばコツコツ堅実に積み上げていくのが確実です、くま」
「はい!あ、でもSランク冒険者にはどうやったらなれるんですか?いや、なれるかどうかはわからないですけど一応、どうやったらなれるのかは知りたいなぁ、って」
勇者という言葉に目を輝かせた俺に熊耳のお姉さんが無茶はしない方がいいと釘をさすけどSランクになる為の方法は聞いておく。いやほら、俺だって異世界からトリップしてきて特別な力は持っているわけだしひょっとしたらSランク冒険者だってなれちゃうかもしれないんだよ?なり方くらいは聞いておいていいよね?
熊耳のお姉さんはちょっと現実をわかってない子を見る目で仕方なさそうに答えてくれる。
「そうですね、ダンジョンを攻略し主を倒すことができればSランクに認定されてもおかしくありません、くま」
「おおっ!ダンジョン!」
ここでやっと名前が出てきましたね。ダンジョンってあれでしょ、ボスがいたり宝物があったりするところでしょ?いよいよ冒険が始まる感じがしてきましたね!
「是非ともダンジョンに行きたいと思っていたんですがどこにあるんですか?」
「ダンジョンはこの街にありますが今の陽向様のランクでは入ることができません、くま」
え、今のランクでは入れない?
驚いている俺に熊耳のお姉さんは説明してくれる。
「ダンジョン内はかなり危険が高く毎年数多くの冒険者が命を落としています。そこで一定以上の実力を持っていないパーティは入れないことになっているのです。ランクでいいますとC、それより下のランクではダンジョンに挑戦することはできません、くま」
どうやらダンジョン攻略は大変だからCランク以上でないと中に入ることすら許されないらしい。え、俺のランクってFだよね?当分ダンジョンには行けそうにないなぁ。
「ランクを上げるためにはトラストを完了させてギルドに貢献を積み上げてください。トラストとはギルドに持ち込まれる依頼のことで指名トラストと任意トラストがあります。指名トラストは特定の冒険者に任務を依頼することで、冒険者側はこれを受けることも断ることも可能です。もうひとつの任意トラストはランクごとに分けられており自分のランクのトラストならばどれを受けていただいても構いません。トラストは右手の掲示板に張り出されているのでどんな依頼があるのかは後でご確認下さい、くま」
そういう熊耳のお姉さんのいう方向を見ると大きなボードがいくつもあり、その上にBとかEとか記号が振られたいる。あれがそれぞれのトラストが貼られたボードだね。ん?ひとつ記号じゃなくて星マークがついてあるボードがあるけどあれはなんだろ?
「あの星マークの掲示板はなんですか?」
「あれはどのランクの冒険者でも受けることのできるフリートラストです。冒険者の方はランクを気にせずにトラストを受けれますし、あのボードを利用する依頼者の方はギルドに仲介手数料をほとんど支払わずに済むので通常より安くトラストを頼めます。ただ、ランクを指定できないのでトラブルも多く初めての方にはおすすめできません、くま」
星のマークのボードは誰でもトラストを受けることができるらしい。なるほど、星のマークのトラストボードならランク関係なく受けることができるんだ。なんかいいトラストがあったら受けて見たいな。
まあ取り敢えずはランク通りのトラストを受けるか。熊耳のお姉さんに聞いておススメのトラストを聞いてみる。すると【丸兎の討伐】比較的簡単に出来るとのことらしいので受けてみる。
ただ丸兎のいるガーナ草原には強いモンスターも出るから危険を感じたらすぐに逃げた方が良いとのことだ。初級トラストなのに乱入イベントが発生するかもしれないとはシビアですね。取り敢えず合言葉は命を大事にでいこう。
そんなわけで俺たちはトリュフの街を出てそのすぐ西にあるガーナの草原へと向かうのだった。
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