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第十四話(クラリス視点)
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「はぁ、はぁ……、これで文句ないでしょ!」
「手を抜かないでください。念の為に二重に結界を張るように旦那様が仰っていましたよ。クラリス様」
「ちっ、結界も張れないクセにエラソーに指示して……。ちょっとくらい休ませなさい」
メリッサはいちいち私の仕事に文句をつける。
これじゃ、どっちが使用人かわかんないじゃない。本当にムカつくわね。殺してやりたいわ……。
そういえば、陛下に変なことを吹き込んだのはコイツなのかしら? だとしても言うわけないだろうけど、一応聞いてみましょう。
「メリッサ……。あんた、私のこと何か陛下に告げ口した?」
「はい。お話させていただきました」
「――っ!? ちょっと、正気!? どうして、主人を売るようなことを!?」
こいつ、信じられない……。なに、はっきりと主人を裏切ったことを宣言してんのよ。
レヴィナス家から来た女だかなんだか、知らないけど……さすがにこれは意味不明だわ。
私の評判を下げて、こいつが得することなんてないのに……。
「エミリア・ネルシュタインは私の友人であり恩人です」
「エミリアっ!? あいつが恩人ってどういうことよ!?」
「以前、魔物に襲われたところを助けて頂いたのです。あなたが結界を張り忘れた場所でね。エミリアさんが頭を下げて謝罪してくれたので彼女の顔を立てるために黙ってましたが……」
エミリアがこの女の恩人……? だから私に嫌がらせしてるっていうの? だけど、この女が私のもとに来たのは偶然なんじゃ……。
「偶然じゃありません。エミリアさんが追放されたと聞いて私は真相を探ることにしたのですよ。あの方が自作自演でニック殿下を嵌めるなんて……そんなことをするはずがありません」
「なっ……」
「だとしたら、あなたがエミリアさんの冤罪をでっち上げた――そうとしか考えられません。上手く隠したつもりかもしれませんが、割と簡単に嘘の証言をした人間を見つけることは出来ましたよ。こんな調査も出来なかったニック殿下に腹が立つくらい」
こ、この女……。どこまで本気なの……。
嘘の証言をした連中が簡単に口を割るとは思えない。それなりに報酬は渡したし、バレたら酷い目に遭うって言っておいたから。そうよ、ハッタリに決まってるわ。
しかし、これでメリッサの目的ははっきりした。エミリアの弔い合戦をするつもりね……。私と刺し違えても……。
「メリッサ、あんた何か勘違いしてるわよ。エミリアが気まぐれで助けたのか何なのか知らないけど……あの子は本当に……」
「エミリアさんはやってません。卑劣なあなたの罠に嵌っただけです」
「うっ……。だったら、何? 私は何もやってないけど、肝心のエミリアはもうこの世にいないのよ。あんたが何を言っても手遅れよ!」
エミリアはデルナストロ山脈でもう既に野垂れ死にしてる。
故人の復讐といえば聞こえはいいけど、無意味だってことはわかってるはず。
こいつだって、私を本気で怒らせるとどうなるのか知らない訳じゃないだろうし、無茶はしないでしょ。
結局、メリッサに出来るのは私を苛つかせること止まり。お父様に多少は叱られることは覚悟して頼み込んで……さっさとレヴィナス家に送り返してやる。
「レヴィナス家のネットワークをナメないで下さい。私のコネを最大限に活用して情報屋から仕入れた情報によると……エミリアさんは生きています。メーリンガム王国で……」
「え、エミリアが生きてるですって?」
「ええ。元気にしておられるみたいですよ。良かったですね」
嘘でしょ。あの化物の溜まり場を抜けて隣国のメーリンガムへと辿り着いたっていうの? あの女……そんな戦闘力を持ってたの……。
「エミリアさんって、あなたよりも遥かに強いんですよ。聖女としての力も含めて何もかも。知ってましたか? エミリアさんが過去に結界を張った場所は未だに被害が出てないって」
得意そうにエミリアについて語るメリッサはいやらしい笑みを浮かべてる。
エミリアが私よりも強いですって? そんなわけないでしょう……。
何が言いたいの? エミリアに戻ってきて欲しいわけ? それだったら――。
「いいえ。違います。あなたには這いつくばってでも働き続けてもらって、彼女の苦労を知ってもらい――最終的にエミリアさんに土下座して謝罪してもらうことが私の望みです」
冷たい目で睨みつけるように、メリッサは私にそんなことを言い放つ。
この私に、この聖女クラリス様に……土下座しろですって? 冗談じゃない。絶対にお断りよ……。
エミリアにはもう二度と会わない。私はそう誓った――。
「手を抜かないでください。念の為に二重に結界を張るように旦那様が仰っていましたよ。クラリス様」
「ちっ、結界も張れないクセにエラソーに指示して……。ちょっとくらい休ませなさい」
メリッサはいちいち私の仕事に文句をつける。
これじゃ、どっちが使用人かわかんないじゃない。本当にムカつくわね。殺してやりたいわ……。
そういえば、陛下に変なことを吹き込んだのはコイツなのかしら? だとしても言うわけないだろうけど、一応聞いてみましょう。
「メリッサ……。あんた、私のこと何か陛下に告げ口した?」
「はい。お話させていただきました」
「――っ!? ちょっと、正気!? どうして、主人を売るようなことを!?」
こいつ、信じられない……。なに、はっきりと主人を裏切ったことを宣言してんのよ。
レヴィナス家から来た女だかなんだか、知らないけど……さすがにこれは意味不明だわ。
私の評判を下げて、こいつが得することなんてないのに……。
「エミリア・ネルシュタインは私の友人であり恩人です」
「エミリアっ!? あいつが恩人ってどういうことよ!?」
「以前、魔物に襲われたところを助けて頂いたのです。あなたが結界を張り忘れた場所でね。エミリアさんが頭を下げて謝罪してくれたので彼女の顔を立てるために黙ってましたが……」
エミリアがこの女の恩人……? だから私に嫌がらせしてるっていうの? だけど、この女が私のもとに来たのは偶然なんじゃ……。
「偶然じゃありません。エミリアさんが追放されたと聞いて私は真相を探ることにしたのですよ。あの方が自作自演でニック殿下を嵌めるなんて……そんなことをするはずがありません」
「なっ……」
「だとしたら、あなたがエミリアさんの冤罪をでっち上げた――そうとしか考えられません。上手く隠したつもりかもしれませんが、割と簡単に嘘の証言をした人間を見つけることは出来ましたよ。こんな調査も出来なかったニック殿下に腹が立つくらい」
こ、この女……。どこまで本気なの……。
嘘の証言をした連中が簡単に口を割るとは思えない。それなりに報酬は渡したし、バレたら酷い目に遭うって言っておいたから。そうよ、ハッタリに決まってるわ。
しかし、これでメリッサの目的ははっきりした。エミリアの弔い合戦をするつもりね……。私と刺し違えても……。
「メリッサ、あんた何か勘違いしてるわよ。エミリアが気まぐれで助けたのか何なのか知らないけど……あの子は本当に……」
「エミリアさんはやってません。卑劣なあなたの罠に嵌っただけです」
「うっ……。だったら、何? 私は何もやってないけど、肝心のエミリアはもうこの世にいないのよ。あんたが何を言っても手遅れよ!」
エミリアはデルナストロ山脈でもう既に野垂れ死にしてる。
故人の復讐といえば聞こえはいいけど、無意味だってことはわかってるはず。
こいつだって、私を本気で怒らせるとどうなるのか知らない訳じゃないだろうし、無茶はしないでしょ。
結局、メリッサに出来るのは私を苛つかせること止まり。お父様に多少は叱られることは覚悟して頼み込んで……さっさとレヴィナス家に送り返してやる。
「レヴィナス家のネットワークをナメないで下さい。私のコネを最大限に活用して情報屋から仕入れた情報によると……エミリアさんは生きています。メーリンガム王国で……」
「え、エミリアが生きてるですって?」
「ええ。元気にしておられるみたいですよ。良かったですね」
嘘でしょ。あの化物の溜まり場を抜けて隣国のメーリンガムへと辿り着いたっていうの? あの女……そんな戦闘力を持ってたの……。
「エミリアさんって、あなたよりも遥かに強いんですよ。聖女としての力も含めて何もかも。知ってましたか? エミリアさんが過去に結界を張った場所は未だに被害が出てないって」
得意そうにエミリアについて語るメリッサはいやらしい笑みを浮かべてる。
エミリアが私よりも強いですって? そんなわけないでしょう……。
何が言いたいの? エミリアに戻ってきて欲しいわけ? それだったら――。
「いいえ。違います。あなたには這いつくばってでも働き続けてもらって、彼女の苦労を知ってもらい――最終的にエミリアさんに土下座して謝罪してもらうことが私の望みです」
冷たい目で睨みつけるように、メリッサは私にそんなことを言い放つ。
この私に、この聖女クラリス様に……土下座しろですって? 冗談じゃない。絶対にお断りよ……。
エミリアにはもう二度と会わない。私はそう誓った――。
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