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「災いの魔女」と呼ばれた令嬢は、もう未来を憂わない(全8話)
5話
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エメラルドは、ティガとフランシスの全面的な協力の下、「正体不明の天才星詠み師『アストラ』」として、王立天文台を通じて公式に予言の発表を始めた。
その予言は、数週間先の正確な天候、未発見の鉱脈の位置、魔物の大量発生周期など多岐にわたった。その驚異的な精度は瞬く間に王国中の評判となり、人々は『アストラ』の言葉に熱狂した。南の漁村は『アストラ』の予言通りに回遊してきた魚の大群を独占して沸き、北の鉱山都市は予言された新たなミスリル鉱脈の発見に国中が湧いた。農業、漁業、商業に革命的な変化が起き、『アストラ』は顔も知れぬまま、救世主として崇められるようになる。
一方で、リリアナのメッキは急速に剥がれ落ちていた。
「『大豊作になる』と予言したウェインライト公爵領の南部は、記録的な冷害に見舞われました。アレクシス様は多額の投資を無駄にしたとご立腹です」
「『幸運の宝石が見つかる』と言われたアベリア侯爵家の土地からは、ただのガラクタしか出ませんでしたわ。社交界ではもう失笑が漏れています」
外れてばかりの予言に、社交界の風向きは完全に変わっていた。何より、リリアナの際限のない浪費と、事業の失敗続きで、アレクシスの財政は逼迫し始めていた。
「リリアナ、君の予言は最近、当たらぬではないか!『アストラ』の予言のおかげで儲けた商人がいるというのに、私の領地は損害ばかりだ!一体どうなっているんだ!」
「そ、そんなことありませんわ!星は気まぐれなのです!きっと次は当たりますから!『アストラ』なんて、まぐれ当たりに決まってます!」
二人の関係は、目に見えて急速に冷え込んでいく。アレクシスの部屋からは、夜な夜な怒鳴り声が聞こえるようになった。
嫉妬と焦りから、リリアナは『アストラ』に対抗しようと、さらに大げさで根拠のない幸運の予言を乱発した。「王都に金色の雨が降る」「王家の庭に伝説の花が咲く」など、その内容は荒唐無稽を極めた。
当然、そんなことは何一つ起こらない。彼女の行動は、自らの評価を地に落とし、人々からの嘲笑と侮蔑を買うだけの結果となった。かつて彼女をチヤホヤしていた令嬢たちも、今では距離を置いている。
(リリアナ。星は、あなたの虚栄心を満たすための道具じゃないのよ。あなたは星を見ていない。自分の欲望を見ているだけ)
エメラルドは辺境の天文台で、最新の望遠鏡を覗き込みながら、静かに次の星の動きを見据えていた。復讐の舞台は、着々と整いつつあった。
その予言は、数週間先の正確な天候、未発見の鉱脈の位置、魔物の大量発生周期など多岐にわたった。その驚異的な精度は瞬く間に王国中の評判となり、人々は『アストラ』の言葉に熱狂した。南の漁村は『アストラ』の予言通りに回遊してきた魚の大群を独占して沸き、北の鉱山都市は予言された新たなミスリル鉱脈の発見に国中が湧いた。農業、漁業、商業に革命的な変化が起き、『アストラ』は顔も知れぬまま、救世主として崇められるようになる。
一方で、リリアナのメッキは急速に剥がれ落ちていた。
「『大豊作になる』と予言したウェインライト公爵領の南部は、記録的な冷害に見舞われました。アレクシス様は多額の投資を無駄にしたとご立腹です」
「『幸運の宝石が見つかる』と言われたアベリア侯爵家の土地からは、ただのガラクタしか出ませんでしたわ。社交界ではもう失笑が漏れています」
外れてばかりの予言に、社交界の風向きは完全に変わっていた。何より、リリアナの際限のない浪費と、事業の失敗続きで、アレクシスの財政は逼迫し始めていた。
「リリアナ、君の予言は最近、当たらぬではないか!『アストラ』の予言のおかげで儲けた商人がいるというのに、私の領地は損害ばかりだ!一体どうなっているんだ!」
「そ、そんなことありませんわ!星は気まぐれなのです!きっと次は当たりますから!『アストラ』なんて、まぐれ当たりに決まってます!」
二人の関係は、目に見えて急速に冷え込んでいく。アレクシスの部屋からは、夜な夜な怒鳴り声が聞こえるようになった。
嫉妬と焦りから、リリアナは『アストラ』に対抗しようと、さらに大げさで根拠のない幸運の予言を乱発した。「王都に金色の雨が降る」「王家の庭に伝説の花が咲く」など、その内容は荒唐無稽を極めた。
当然、そんなことは何一つ起こらない。彼女の行動は、自らの評価を地に落とし、人々からの嘲笑と侮蔑を買うだけの結果となった。かつて彼女をチヤホヤしていた令嬢たちも、今では距離を置いている。
(リリアナ。星は、あなたの虚栄心を満たすための道具じゃないのよ。あなたは星を見ていない。自分の欲望を見ているだけ)
エメラルドは辺境の天文台で、最新の望遠鏡を覗き込みながら、静かに次の星の動きを見据えていた。復讐の舞台は、着々と整いつつあった。
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