牧師に飼われた悪魔様

リナ(腐男子くん準備中)

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第十六章「カラドリオス街長選挙」

宣戦布告?

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「んだよ、情報屋ぁ…」
「まず確認しておきたいことがあるんだが、二人は付き合ってるのか?」
「…ああぁ?」


 突然の問いかけに見る見るザクの機嫌が急降下していく。それを見た俺は一人ひやひやするのだった。

「なっ、ちょ、バン?急に何言って…」

 一応、ザクとの関係は今まで誰にも公言していない。シータとかアイザックさんにはばれてるみたいだけど、俺たちに直接確認してくる事はないから明言する必要もなかった。つまり、暗黙の了解のような関係なのだ(公然の秘密?)。それをまさかこのタイミングでズバッと尋ねられるとは思いもしなかった。
 (しかもバンに…?)
 飄々としていつも他人事で完結させるバンがどうして今更踏み込んでくるのか。

「なに寝ぼけた事言ってやがる」

 ザクは目を細め警戒するようにバンを睨んでいたが、やがて勝ち誇った顔で笑う。


「付き合うも何も…ルトは俺様のもんだ」
「つまり?」
「恋人って事だよバーカ」


 俺を腕の中に抱いて、宣言する。ザクらしく逃げも隠れもしないハッキリとした開示にバンは苦笑を浮かべる…と思いきや…一瞬、ほんの一瞬だけ顔をしかめた。今までのバンなら隠していたはずの感情の揺れだ。いやもしかしたら俺がそれに気付けるようになっただけなのかもしれないが。とにかく、バンはすぐに取り繕うように苦笑を浮かべ、頭を掻く仕草をする。

「そっか、だったらあんたに謝らないとな。…悪い。俺、ルトとキスしちまった」
「へー…」

 知ってますが何か?という顔で睨みつけるザク。

 (うわ…殺気立ってる…)

 せっかくのお祝いムードに水を差すなよ、とザクの腕を叩くが、俺の頭に顎をのせて唸るだけで何も言ってこない。その赤い瞳はずっとバンに注がれている。俺はハラハラと二人の様子を見守った。

「あと、下もちょっといじった」
「ー…」

 ザクは無言のまま、ぎりっと拳を握り締めた。

 (やばい)

 爪も伸び始めているしこのままじゃ暴走してしまう。背中に冷や汗が流れていく。

「でも最後まではやらなかったし、何よりルトは俺に流されただけで、今もあんたへの気持ちは変わらないはずだ」
「……」

 のどかな昼間のはずが、凍りつくような冷たい空気が二人の間に流れる。いや、一方的にザクがその冷たい風を吹き起こしているんだけども。

(前だったらここでブチ切れてるよな…)

 そこは少し成長してるかもしれない、と感動しつつ

(でも今から暴走する可能性も捨てきれないし…)

 大丈夫かなとハラハラしながらザクを見守る。

「すー…はぁ…」

 ザクはゆっくりと深呼吸した後、挑戦的な瞳をバンに向けた。

「…ああ、ルトの気持ちなら知ってるぜ。なんたって毎日確かめあってるからな~」

 意味ありげに腰の辺りを撫でられゾクリとする。

「な?ルト?」
「うっ…えーっと」

 バンとザクに見下ろされ、逃げ場もない。わたわたした後、俺は観念してぼそぼそと呟いた。

「す…好き、だよ…」
「え?聞こえなかった。もう一回言ってくんね?」
「二度と言うか!!!馬鹿ザク!!!!」

「ははは」

 俺とザクの会話に堪えきれなくなったバンが豪快に笑った。

「ほんと二人らしいな。お幸せに…って、今は言っておくよ」
「あーん?今はってどういうことだテメエ」
「ばか!もういいだろザク!ほら、バンも!皆のとこに戻ろう!」

 ぐいぐいと二人の背中を押す。

「おい、まさかテメエ…本気でルトのこと…」
「さあ…どうだかな」

 バンははぐらかすようにザクの質問から逃げて笑う。しかしその顔には確かな決心の色があり

(え?ば、バン?…いや、気のせいだよな…)

 バンが俺の事を本気で好きになるわけがない。自分で自分の妄想に笑ってしまう。

「けけっいいぜ、どうせお前の入る余地なんかねーしなぁ?!勝手に期待してろ!」

 ザクもありえない、と笑い飛ばしている。それに対して、バンは

「余地はない、か。…はは、なら作れば良いだけだ」

 何食わぬ顔で言い切ってしまう。清々しい程の宣戦布告にザクも闘争心を燃やし詰め寄った。

「ちげーよ!!ほんと口の減らねー男だな!!」
「情報屋は口と頭で稼ぐ仕事だからな」
「うぜーーーー!」

「おい、二人とも…はあ…」

 俺の言葉には全く聞く耳をたてない二人に呆れ、もう勝手にしてくれ、と頭を抱えた。

「おーい!ルトー!」

 ふと名前を呼ばれて顔を上げれば、歓迎するように皆、手を振ってくる。

「今行くー!」

 俺はいがみ合う二人を置いてパーティ会場へと一足先に戻った。




 俺を呼ぶ声に、賑やかな笑い声。


 たまに怒号が響いたりするけども、

 皆が笑顔で、


(この平和がずっと続けばいいな)


 と、願わずにはいられなかった。




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