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第11章 クラス対抗魔法球技戦編
生徒会室にて②
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1日目の全ての試合が終了し、試合会場の後片付けや明日の準備などが終わってから、生徒会のメンバーは生徒会ギルドホームの会議室に集まっていた。ディナカレア魔法学院の生徒会に選ばれることは、全生徒にとって大変名誉なことであり尊敬も集めるが、実際に生徒会はそれに見合うだけの仕事を影でこなしているのだった。
今回は生徒会メンバーの他に、風紀ギルドのギルド長のマーシャと副ギルド長のアンソニーも会議に加わっていた。今日の各所の様子や問題点、明日以降の改善点などを確認するためだ。
「みんな1日お疲れ様。明日もよろしくね。何か気になる点はあったかしら?」
生徒会長のフリージアがそう話し始めて会議が進んでいく。
生徒会ギルドや風紀ギルドのメンバーは自分たちのクラスの試合の合間にはシフトを組んで、各所の見回りをこなしていた。1年生メンバーは基本的に初めてのクラス対抗戦ということもあって、ギルドの仕事は免除されていたが、生徒会の新1年生の2人は、自ら進んで仕事を行い会議にも顔を出していた。生徒会ギルドのメンバーにはよくあることだが、この2人も責任感が強く、また生徒会の仕事を誇りに思い楽しんでいるようだった。
それぞれが各所を見回りして気づいた点などを挙げていく中で、話は今日見た試合の話となる。
「いやぁ、あらえらいエグい試合運びやったな」
会計のシヴァが話題にしたのは、やはりルーシッド達のクラスのバトルボールの試合だった。
「へぇ、その試合は私は見ていないが、そんなにすごかったのか?」
マーシャがそれに興味深そうに反応した。
「前半ただ逃げ回ってるだけやとおもたら、油断した辺りで急に攻撃に転じよってあっさりと逆転勝ちや。しかもけったいな魔法具使いよるし、謎の移動魔法使いよるし、ボール投げずに持ったまま追いかけよるし、ほんま傑作やったわ。やられた方はトラウマもんやろな、あれは。あれ、ほんまにあのルーシッドっちゅうやつが全部仕組んだゆうんか?」
「風紀ギルドでお願いしてた魔法具もすごい完成度だったからね。多分そうなんじゃないかな?あの子はかなり頭が切れると思うな」
シヴァに対してアンソニーがそう答えた。
「えー、でもでも、ルーシッドちゃんって、あのFランクの子でしょ?自分が魔法使えないのに、そんなことできるかなぁ?」
副会長の一人、ミクリナの疑問は、誰しもが思う至極全うなものだろう。しかし、ほとんど顔には出さなかったが、サラは少しむっとした表情に変わった。
それを見てかどうかは定かではないが、フリージアが肯定的な意見を述べる。
「魔法理論の出来不出来は必ずしもランクとは一致しないんじゃない?」
「だとしてもや、魔法具の製作するには、『鉄の魔法』は必須やろ?あいつ魔法使われへんのにどうやったんやろか?」
「ルーシィは魔法は使えませんけど、鉄だったら生成と加工はできますよ。そこら辺の魔法具師なんかよりよっぽど上手いですよ」
サラがそう言うと、フリージアが「え?」という顔をしてサラの方を向いた。
「魔法が使えなにのに鉄の生成や加工ができるってどういうことかしら?」
「通常の魔法では『黄の魔力』を妖精の力によって鉄に変化させますが、ルーシッドは無色の魔力の構造式そのものを変化させることで、無色の魔力を鉄に変換することができますから」
「無色の魔力って魔力が無いってことじゃないの?」
ミクリナがそう尋ねると、そちらの方を向かずに答えた。
「違いますよ。黄色や赤色の魔力があるのと同じように、無色の魔力があるんです。対応する妖精がいない代わりに、ルーシッドは自分で自分の魔力を操作できるんです」
「無色の魔力を使った攻撃は私も直接食らったことがあるよ。上から無色の魔力の塊で押しつぶされたね。だから、魔力自体がないんじゃなくて、色がないだけだよ。むしろ、単純な魔力量で言えば、ルーシィ君は魔力生成速度は1万を超えてるし、最大魔力量も30万を超えてるから、Sランクの私や、SSランクのサラ君なんかよりよっぽど多いよ」
サラに続けて、マーシャがそう述べると、それを初めて聞いた生徒会メンバーは目を見開いて驚いた。
「なっ、なんやその数字は!そんなあほみたいな数字聞いたことないわ!」
「さ、サリーさんっていくつだったかしら?」
「魔力生成速度5000ちょっとで、最大魔力量が7万ちょっとです」
「そ、それでも十分すごすぎる値だけど…」
「しかも、ルーシィのすごいところはそこじゃないですよ。私たち普通の魔法使いが実際に魔法に使用できるのは、この最大魔力量から、食材を支払った残りですから。例え、私でも超高位魔法を使うとなれば、食材分の1万~2万を支払った残りの5万マナくらいしか使えないということになりますけど、妖精を使役する必要がないルーシィはその制約がありませんから。30万マナ全てを物質変換に使えますからね。もちろん無色の魔力で全ての魔法が再現できるわけじゃないってルーシィは言ってましたけど、でも単純に考えれば、一度の魔法で長さも量も私の6倍の魔法が使えるということです。しかも無詠唱で。さらにルーシィは魔力再生成可能時間も1秒ちょっとですから、魔力使いきってもすぐ次の魔力が作れますし」
リサの話を聞いて少し青ざめたような顔をして黙り込む生徒会メンバー。
「もはや、ほんまもんのバケモンやないか…そらあのルビアやレイチェルが敗れるんもわかるわ」
シヴァは引きつったように笑って言った。
「すごい子だとは思ってたけど、そこまですごいとは思ってなかったわ」
「いやいや、もはやすごいとかのレベルじゃないよ。それホントに私たちと同じ人間?神位の妖精の化身だって言われてもミクちゃん信じちゃうよ」
ミクリナのその何気ない言葉を聞いて、サラははっとした。
妖精の化身?
かつて、『魔法』が成立する以前は、妖精が人間の姿を取り、人間と共存していた時代もあったという。今では『神々の時代』と言われている時代だ。その時代には、人間の姿をした妖精たちが英雄として活躍し、現代にも残る数々の神具や宝具が作られたという。
ルーシッドもそれと同じような存在だということか?
いや、そんなはずはない。ルーシッドは生まれた時から力が使えたわけじゃない。せっかくの魔力量も何もしなければ宝の持ち腐れだ。ルーシッドが無色の魔力を操作する方法を研究によって編み出したからこそ、今のルーシッドの力がある。
だからそんなはずはない。
でももしかして…?
サラは考え込んでいるうちに会議はお開きとなった。
サラは、ルーシッドのことばかり考えていたが、自分自身もそれと同じような力、つまり妖精と同じような力を持っているということをすっかりと忘れてしまっているのだった。
今回は生徒会メンバーの他に、風紀ギルドのギルド長のマーシャと副ギルド長のアンソニーも会議に加わっていた。今日の各所の様子や問題点、明日以降の改善点などを確認するためだ。
「みんな1日お疲れ様。明日もよろしくね。何か気になる点はあったかしら?」
生徒会長のフリージアがそう話し始めて会議が進んでいく。
生徒会ギルドや風紀ギルドのメンバーは自分たちのクラスの試合の合間にはシフトを組んで、各所の見回りをこなしていた。1年生メンバーは基本的に初めてのクラス対抗戦ということもあって、ギルドの仕事は免除されていたが、生徒会の新1年生の2人は、自ら進んで仕事を行い会議にも顔を出していた。生徒会ギルドのメンバーにはよくあることだが、この2人も責任感が強く、また生徒会の仕事を誇りに思い楽しんでいるようだった。
それぞれが各所を見回りして気づいた点などを挙げていく中で、話は今日見た試合の話となる。
「いやぁ、あらえらいエグい試合運びやったな」
会計のシヴァが話題にしたのは、やはりルーシッド達のクラスのバトルボールの試合だった。
「へぇ、その試合は私は見ていないが、そんなにすごかったのか?」
マーシャがそれに興味深そうに反応した。
「前半ただ逃げ回ってるだけやとおもたら、油断した辺りで急に攻撃に転じよってあっさりと逆転勝ちや。しかもけったいな魔法具使いよるし、謎の移動魔法使いよるし、ボール投げずに持ったまま追いかけよるし、ほんま傑作やったわ。やられた方はトラウマもんやろな、あれは。あれ、ほんまにあのルーシッドっちゅうやつが全部仕組んだゆうんか?」
「風紀ギルドでお願いしてた魔法具もすごい完成度だったからね。多分そうなんじゃないかな?あの子はかなり頭が切れると思うな」
シヴァに対してアンソニーがそう答えた。
「えー、でもでも、ルーシッドちゃんって、あのFランクの子でしょ?自分が魔法使えないのに、そんなことできるかなぁ?」
副会長の一人、ミクリナの疑問は、誰しもが思う至極全うなものだろう。しかし、ほとんど顔には出さなかったが、サラは少しむっとした表情に変わった。
それを見てかどうかは定かではないが、フリージアが肯定的な意見を述べる。
「魔法理論の出来不出来は必ずしもランクとは一致しないんじゃない?」
「だとしてもや、魔法具の製作するには、『鉄の魔法』は必須やろ?あいつ魔法使われへんのにどうやったんやろか?」
「ルーシィは魔法は使えませんけど、鉄だったら生成と加工はできますよ。そこら辺の魔法具師なんかよりよっぽど上手いですよ」
サラがそう言うと、フリージアが「え?」という顔をしてサラの方を向いた。
「魔法が使えなにのに鉄の生成や加工ができるってどういうことかしら?」
「通常の魔法では『黄の魔力』を妖精の力によって鉄に変化させますが、ルーシッドは無色の魔力の構造式そのものを変化させることで、無色の魔力を鉄に変換することができますから」
「無色の魔力って魔力が無いってことじゃないの?」
ミクリナがそう尋ねると、そちらの方を向かずに答えた。
「違いますよ。黄色や赤色の魔力があるのと同じように、無色の魔力があるんです。対応する妖精がいない代わりに、ルーシッドは自分で自分の魔力を操作できるんです」
「無色の魔力を使った攻撃は私も直接食らったことがあるよ。上から無色の魔力の塊で押しつぶされたね。だから、魔力自体がないんじゃなくて、色がないだけだよ。むしろ、単純な魔力量で言えば、ルーシィ君は魔力生成速度は1万を超えてるし、最大魔力量も30万を超えてるから、Sランクの私や、SSランクのサラ君なんかよりよっぽど多いよ」
サラに続けて、マーシャがそう述べると、それを初めて聞いた生徒会メンバーは目を見開いて驚いた。
「なっ、なんやその数字は!そんなあほみたいな数字聞いたことないわ!」
「さ、サリーさんっていくつだったかしら?」
「魔力生成速度5000ちょっとで、最大魔力量が7万ちょっとです」
「そ、それでも十分すごすぎる値だけど…」
「しかも、ルーシィのすごいところはそこじゃないですよ。私たち普通の魔法使いが実際に魔法に使用できるのは、この最大魔力量から、食材を支払った残りですから。例え、私でも超高位魔法を使うとなれば、食材分の1万~2万を支払った残りの5万マナくらいしか使えないということになりますけど、妖精を使役する必要がないルーシィはその制約がありませんから。30万マナ全てを物質変換に使えますからね。もちろん無色の魔力で全ての魔法が再現できるわけじゃないってルーシィは言ってましたけど、でも単純に考えれば、一度の魔法で長さも量も私の6倍の魔法が使えるということです。しかも無詠唱で。さらにルーシィは魔力再生成可能時間も1秒ちょっとですから、魔力使いきってもすぐ次の魔力が作れますし」
リサの話を聞いて少し青ざめたような顔をして黙り込む生徒会メンバー。
「もはや、ほんまもんのバケモンやないか…そらあのルビアやレイチェルが敗れるんもわかるわ」
シヴァは引きつったように笑って言った。
「すごい子だとは思ってたけど、そこまですごいとは思ってなかったわ」
「いやいや、もはやすごいとかのレベルじゃないよ。それホントに私たちと同じ人間?神位の妖精の化身だって言われてもミクちゃん信じちゃうよ」
ミクリナのその何気ない言葉を聞いて、サラははっとした。
妖精の化身?
かつて、『魔法』が成立する以前は、妖精が人間の姿を取り、人間と共存していた時代もあったという。今では『神々の時代』と言われている時代だ。その時代には、人間の姿をした妖精たちが英雄として活躍し、現代にも残る数々の神具や宝具が作られたという。
ルーシッドもそれと同じような存在だということか?
いや、そんなはずはない。ルーシッドは生まれた時から力が使えたわけじゃない。せっかくの魔力量も何もしなければ宝の持ち腐れだ。ルーシッドが無色の魔力を操作する方法を研究によって編み出したからこそ、今のルーシッドの力がある。
だからそんなはずはない。
でももしかして…?
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