魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

文字の大きさ
101 / 153
第11章 クラス対抗魔法球技戦編

生徒会室にて②

しおりを挟む
1日目の全ての試合が終了し、試合会場の後片付けや明日の準備などが終わってから、生徒会カウンサルのメンバーは生徒会カウンサルギルドホームの会議室に集まっていた。ディナカレア魔法学院の生徒会カウンサルに選ばれることは、全生徒にとって大変名誉なことであり尊敬も集めるが、実際に生徒会カウンサルはそれに見合うだけの仕事を影でこなしているのだった。
今回は生徒会カウンサルメンバーの他に、風紀ギルドサーヴェイラのギルド長のマーシャと副ギルド長のアンソニーも会議に加わっていた。今日の各所の様子や問題点、明日以降の改善点などを確認するためだ。

「みんな1日お疲れ様。明日もよろしくね。何か気になる点はあったかしら?」
生徒会長のフリージアがそう話し始めて会議が進んでいく。

生徒会ギルドカウンサル風紀ギルドサーヴェイラのメンバーは自分たちのクラスの試合の合間にはシフトを組んで、各所の見回りをこなしていた。1年生メンバーは基本的に初めてのクラス対抗戦ということもあって、ギルドの仕事は免除されていたが、生徒会カウンサルの新1年生の2人は、自ら進んで仕事を行い会議にも顔を出していた。生徒会ギルドカウンサルのメンバーにはよくあることだが、この2人も責任感が強く、また生徒会カウンサルの仕事を誇りに思い楽しんでいるようだった。

それぞれが各所を見回りして気づいた点などを挙げていく中で、話は今日見た試合の話となる。

「いやぁ、あらえらいエグい試合運びやったな」
会計のシヴァが話題にしたのは、やはりルーシッド達のクラスのバトルボールの試合だった。
「へぇ、その試合は私は見ていないが、そんなにすごかったのか?」
マーシャがそれに興味深そうに反応した。

「前半ただ逃げ回ってるだけやとおもたら、油断した辺りで急に攻撃に転じよってあっさりと逆転勝ちや。しかもけったいな魔法具使いよるし、謎の移動魔法使いよるし、ボール投げずに持ったまま追いかけよるし、ほんま傑作やったわ。やられた方はトラウマもんやろな、あれは。あれ、ほんまにあのルーシッドっちゅうやつが全部仕組んだゆうんか?」
風紀ギルドサーヴェイラでお願いしてた魔法具もすごい完成度だったからね。多分そうなんじゃないかな?あの子はかなり頭が切れると思うな」
シヴァに対してアンソニーがそう答えた。
「えー、でもでも、ルーシッドちゃんって、あのFランクの子でしょ?自分が魔法使えないのに、そんなことできるかなぁ?」
副会長の一人、ミクリナの疑問は、誰しもが思う至極全うなものだろう。しかし、ほとんど顔には出さなかったが、サラは少しむっとした表情に変わった。
それを見てかどうかは定かではないが、フリージアが肯定的な意見を述べる。
「魔法理論の出来不出来は必ずしもランクとは一致しないんじゃない?」
「だとしてもや、魔法具の製作するには、『鉄の魔法』は必須やろ?あいつ魔法使われへんのにどうやったんやろか?」
「ルーシィは魔法は使えませんけど、鉄だったら生成と加工はできますよ。そこら辺の魔法具師マジックスミスなんかよりよっぽど上手いですよ」
サラがそう言うと、フリージアが「え?」という顔をしてサラの方を向いた。
「魔法が使えなにのに鉄の生成や加工ができるってどういうことかしら?」
「通常の魔法では『黄の魔力』を妖精の力によって鉄に変化させますが、ルーシッドは無色の魔力の構造式グラムそのものを変化させることで、無色の魔力を鉄に変換することができますから」
「無色の魔力ってってことじゃないの?」
ミクリナがそう尋ねると、そちらの方を向かずに答えた。
「違いますよ。黄色や赤色の魔力があるのと同じように、んです。対応する妖精がいない代わりに、ルーシッドは自分で自分の魔力を操作できるんです」
「無色の魔力を使った攻撃は私も直接食らったことがあるよ。上から無色の魔力の塊で押しつぶされたね。だから、魔力自体がないんじゃなくて、色がないだけだよ。むしろ、単純な魔力量で言えば、ルーシィ君は魔力生成速度ジェネレイトスピードは1万を超えてるし、最大魔力量マキシマムマナも30万を超えてるから、Sランクの私や、SSランクのサラ君なんかよりよっぽど多いよ」
サラに続けて、マーシャがそう述べると、それを初めて聞いた生徒会カウンサルメンバーは目を見開いて驚いた。
「なっ、なんやその数字は!そんなあほみたいな数字聞いたことないわ!」
「さ、サリーさんっていくつだったかしら?」
魔力生成速度ジェネレイトスピード5000ちょっとで、最大魔力量マキシマムマナが7万ちょっとです」
「そ、それでも十分すごすぎる値だけど…」

「しかも、ルーシィのすごいところはそこじゃないですよ。私たち普通の魔法使いが実際に魔法に使用できるのは、この最大魔力量マキシマムマナから、食材を支払った残りですから。例え、私でも超高位魔法を使うとなれば、食材分の1万~2万を支払った残りの5万マナくらいしか使えないということになりますけど、妖精を使役する必要がないルーシィはその制約がありませんから。30万マナ全てを物質変換に使えますからね。もちろん無色の魔力で全ての魔法が再現できるわけじゃないってルーシィは言ってましたけど、でも単純に考えれば、一度の魔法で長さも量も私の6倍の魔法が使えるということです。しかも無詠唱で。さらにルーシィは魔力再生成可能時間リジェネレイトタイムも1秒ちょっとですから、魔力使いきってもすぐ次の魔力が作れますし」

リサの話を聞いて少し青ざめたような顔をして黙り込む生徒会カウンサルメンバー。

「もはや、ほんまもんのバケモンやないか…そらあのルビアやレイチェルが敗れるんもわかるわ」
シヴァは引きつったように笑って言った。
「すごい子だとは思ってたけど、そこまですごいとは思ってなかったわ」
「いやいや、もはやすごいとかのレベルじゃないよ。それホントに私たちと同じ人間?神位の妖精の化身だって言われてもミクちゃん信じちゃうよ」

ミクリナのその何気ない言葉を聞いて、サラははっとした。

妖精の化身?

かつて、『魔法』が成立する以前は、妖精が人間の姿を取り、人間と共存していた時代もあったという。今では『神々の時代』と言われている時代だ。その時代には、人間の姿をした妖精たちが英雄として活躍し、現代にも残る数々の神具や宝具が作られたという。

ルーシッドもそれと同じような存在だということか?

いや、そんなはずはない。ルーシッドは生まれた時から力が使えたわけじゃない。せっかくの魔力量も何もしなければ宝の持ち腐れだ。ルーシッドが無色の魔力を操作する方法を研究によって編み出したからこそ、今のルーシッドの力がある。
だからそんなはずはない。

でももしかして…?

サラは考え込んでいるうちに会議はお開きとなった。

サラは、ルーシッドのことばかり考えていたが、自分自身もそれと同じような力、つまり妖精と同じような力を持っているということをすっかりと忘れてしまっているのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。 今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。 女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか? 一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。

奥様は聖女♡

喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。 ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。

【完結】名無しの物語

ジュレヌク
恋愛
『やはり、こちらを貰おう』 父が借金の方に娘を売る。 地味で無表情な姉は、21歳 美人で華やかな異母妹は、16歳。     45歳の男は、姉ではなく妹を選んだ。 侯爵家令嬢として生まれた姉は、家族を捨てる計画を立てていた。 甘い汁を吸い付くし、次の宿主を求め、異母妹と義母は、姉の婚約者を奪った。 男は、すべてを知った上で、妹を選んだ。 登場人物に、名前はない。 それでも、彼らは、物語を奏でる。

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

処理中です...