桜蕾

 享和三年五月のある日、伊勢屋のおよねの見舞いに訪れたさやと内山拾七郎は、およねが部屋に引きこもっているのを知る。およねは延命院の柳全という僧の子を堕胎し、それを種に強請られていた。
 強請ったのはお松。お松は医者の順庵の助手であったが、およねに頼まれ密かに堕胎薬を作った。それが順庵にばれ、問答している内に誤って殺してしまったのだった。
 拾七郎の兄で内山三兄弟の長兄、同心の内山三之丞は、逃げたお松を探していたが、お松は恋人の清吉と共に、不忍池で死体で発見される。お松は柳全をも強請り、逆に延命院の凄腕の用心棒跡部信雪に殺されたのだ。
 信雪はかつて内山三兄弟の次兄伝伍と平戸藩の剣術指南役を争ったが破れ、妻の藤乃を捨て人斬りの道に堕ちていた。その後悔から伝伍は剣を捨て、藤乃の想いにも向き合えずにいたが、信雪が延命院にいるのを知り、彼と自分の過去とに向き合う決意をする。
 一方、延命院では、日潤と柳全という僧が、大奥女中や町娘との女犯の罪を犯していた。事件を重く見た寺社奉行脇坂安菫は、腹心の部下三枝右門に命じて密かに調査を進めていた。右門は伝伍に眼をつけ、仕官の名目で伝伍に信雪を殺させようとする。それを知った三之丞は怒り、また安菫が大奥を恐れて事件解決に逡巡しているのにも腹を立て、自らも事件の解決に乗り出す。また、さやと拾七郎も、およねの事情を知って憤り、自らの手で柳全を捕縛しようと動く。
 そして五月二十六日、安菫は右門に、日潤らの捕縛のため延命院踏み込みを決行させる。三之丞、伝伍、拾七郎とさやも延命院に踏み込み、それぞれの決着をつけるのだった。

(これは第二回富〇見時代小説最終選考作を、加筆修正したものです)
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