絶対的フィナーレ

8、この涙は溢さない

「麻也がお金の問題なんて考えなくていいの！後遺症だってリハビリ頑張れば治るでしょう。
私は・・貴方が生きていてくれさえすればいいの・・貴方が生きていてくれるのなら私は・・なんだってする・・この命に変えても・・」

は？この命に変えても？
そんなのわたしが許すわけないじゃん・・

母さんは・・私の唯一の親なんだよ・・
私だけじゃなくて母さんも倒れたらどうするつもり？

母さんが私のことを思ってくれてるぐらい私は母さんのことを思ってるんだよ・・

「だから手術を受けましょ
「母さんはさ？私にとってどんな人なのか分かってる？」

そう言って二階にかけあがり自分の部屋に籠った。

母さんも追いかけてきて私の部屋に入ろうとしたが鍵をかけておいたので入ることは出来なかった。

私はつい持ってきてしまった病気に関してのパンフレットを見る。


難病・・小児がん・・
十万人の内の３～４人・・

宝くじが当たるレベルか・・
もっとも私の場合は病気が当たったんだけど・・
はは・・笑える・・

「はははは・・はははっははははっは・・」

視界が歪む・・
目に水が溜まっているのがわかる。

いまにも溢れそうだ。
笑いながらの涙目。
端から見ればおかしいと思われるだろう。

私はこの涙を落としたくなかった。
落としたら自分の病気を認めなければいけないから。

笑わないと・・呆れないと・・
私の心が死と向き合うにはまだ早すぎた。

「おかし・・・寝よ・・」

この日、涙が流れることはなかった。