悪役令嬢の名誉を挽回いたします!

みすずメイリン

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第6話、舞踏会

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 舞踏会の日も近づいて授業も受けつつ、お昼ご飯は変な噂を立てさせないために、ジークフリートとは三日に一回ぐらいお昼をともにし、ジークフリートとご飯を食べる時以外は、大人しそうな女の子たちのグループに入って、お昼ご飯を食べていた。

 そして高等学園の授業も終わり、さっそくえんじ色のプリンセスドレスも買ってもらって銀色のティアラも身につけ、さっそく舞踏会へ行くことになった。
 舞踏会といっても、もう私にはアルブレヒト様というお父様に決めさせられた婚約者もいるし行っても意味ないんじゃないかと思うけれど、せっかくハインリヒ王子が主催してくれたんだし、行くことにした。

 夕方になり馬車がきて、私はドレスが汚れないように気をつけて乗ってそのままハインリヒ王子が住んでいる王宮へ向かった。
 やはり、ひさびさに見る王宮の迫力はすごいなぁと思った。前世の日本ではなくドイツやオーストリアといった国の建築物みたいで、凄かった。
 王宮に着いて、またドレスが汚れないように馬車から降りて歩いて王宮に入ろうとすると、ハインリヒ王子のお付きの騎士であるレオンハルトにお目にかかった。
 レオンハルトは騎士らしく鎧を着ていた。
 「リリアンナ様、ようこそお越しくださいましてありがとうございます」
「こちらこそ婚約者がもうすでにいるのにも関わらず、舞踏会へ誘ってくれてありがとう。あのー、レオンハルトは女性と踊ったりしないの?」と私はふとレオンハルトに質問すると、レオンハルトはクスクスと笑い出し「リリアンナ伯爵令嬢、私は騎士なので貴族や王族の女性とは特別な許可がない限り踊れません。少しは自分の立場をわきまえてください。でも、ありがとうございます。本日の舞踏会に女性余りがあるようでしたら、ハインリヒ王子から参加するようにと命令されておりますから」と私に伝えた。そして引き続きレオンハルトは、「リリアンナ様、今日のお召し物はいつもと雰囲気が違いますね。一体、どうなされたのでしょうか?」と引き続き聞いてきたので、私は「ルイーゼのおすすめで着てみたの」といったらレオンハルトの顔の表情が曇り、ただ一言「そうですか」と残念そうにいっただけだった。
 そして私はレオンハルトに「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だと思うから。多分」とだけ言い残して、舞踏会の会場へと一人で誰のエスコートもなく、入って行った。
 けれど後ろを振り向いた時によく見たら、アルブレヒト様がAラインのネイビー色のドレスを着て金色のティアラをつけているルイーゼをエスコートをしているようにも見えた。
 私は何かの見間違いかな? と思って気にせず初めての舞踏会の会場に一人で突っ立って、周りの人々や建物を見ていた。そして、いつ見ても見惚れるような建築物に私はいつも心を奪われていた。
 今日の舞踏会はハインリヒ王子が主催だから、ハインリヒ王子も婚約者を探しているのかな? と不思議に思っていたら背後から誰かが近づいてくる気配があったので、振り返ったらアルブレヒト様がいた。だから、私はアルブレヒト様に話しかけたけれど、ルイーゼはフレイヤとリラといつもの三人で話していた。
 「ごきげんよう、アルブレヒト様。最近の様子はいかがでしょうか?」
「最近は、勉学だけではなくフェンシングにもハマっているよ。案外スポーツも良いかもしれないね」とアルブレヒト様と話していたら、レオンハルトはルイーゼ達に話しかけていた。なんだったんだろう? と思って気にかけないようにしたけど、アルブレヒト様がレオンハルトを見て、「あの騎士は確か、ハインリヒ王子のお付きの騎士ではないか」といって、アルブレヒト様は衝動的にレオンハルトとルイーゼたちの元へ行った。
 あーあ、私はまた一人ぼっちかぁと思って会場の近くにあった冷たい大理石の柱に背中をくっつけて、突っ立っていた。
 寂しい気持ちになって不安な気持ちになっているとレオンハルトが私を見つけ次第、また私に話しかけてきた。
 「リリアンナ様。お一人で大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だよ。今はレオンハルトもいるし、遠くからハインリヒ王子も見守ってくれてくれているから」といったら、レオンハルトは少し訝しんだ顔をして私に更に話しかけた。
 「リリアンナ様、どうかお気をつけてください。あなたの婚約者のアルブレヒト・フォン・ノイシュタット公爵子息とルイーゼ・ツー・ロザリント公爵令嬢が親しげなんです。ですのでリリアンナ様、ルイーゼ様の言動には目を光らせておいてくださいませ。それでは、失礼いたします」とレオンハルトは私にお辞儀をしてそう告げて、ハインリヒ王子の近くに戻ってハインリヒ王子に何かしら耳打ちをしていた後、ハインリヒ王子は少し眉を顰めた表情を見せているようにみえた。
 ……多くからの眺めだったから、何が確実に起こっているのかわからなかったけれど。
 ハインリヒ王子に手を振ったら、ハインリヒ王子は笑顔で手を振り返したあと、私は正面からアルブレヒト様が遮ってきたので私はアルブレヒト様にお辞儀をして、アルブレヒト様に話しかけた。
 「ごきげんよう、アルブレヒト様。本日は舞踏会というのに、私をエスコートなさらなかったようで。何か用事でもありましたか?」とレオンハルトのアルブレヒト様とルイーゼの話を思い出しながら、質問をした。
 「申し訳ない、リリアンナ。実はエスコートする女性に先約がいまして」と謝ってきた。
 私は残念そうにして「そうでございましたか。お互い婚約者とはいえ、政略結婚ですよね。ですが、まだまだお互い分かり合えるようにしましょう」と話したらアルブレヒト様は「申し訳ない、リリアンナ」と謝ってきたので、私は焦って「いえいえ、今はお互いそこまで深い仲ではありませんし、親が決めたことですので」と話していると、ルイーゼが私たちの方を見て、彼女の表情がニヤッと嘲笑しているかのように見えた。

 舞踏会が始まる時間になり、ハインリヒ王子が司会を進め始めた。
 「本日は、私、ハインリヒ・フォン・ヴァルドシュタイン主催の舞踏会にお集まりいただき、ありがとうございます。私共々、普段から勉学に励み公務も欠かさず行っているので、たまにはこういうパーティーも良いじゃないかと思いまして、開催させていただきました。舞踏会に必要なクールな音楽家達も集めましたので、演奏する方も料理や飲み物を配る方もそして騎士たちも、どうかできるだけの範囲で今宵は楽しんでください」と大声で場を盛り上げるようにハインリヒ王子は溌剌とした笑顔で言い切った。
 舞踏会の演奏が始まると、最初に私に話しかけてきたのが、アルブレヒト様だった。
 アルブレヒト様はちょっと照れくさそうに「せっかく、お互い婚約者としてこの会場にいるんだし、踊りませんか? 私のプリンセス」と紳士らしいお辞儀をしたので、私は「はい。よろこんで」と返事をして、数十分ぐらいアルブレヒト様と舞踏会で踊っていた。

 アルブレヒト様と踊ってしばらくして、私は踊っている最中に誰かの足を踏んづけてしまった。
 急いで謝ろうとして振り向いたら、ルイーゼが痛そうにしていた。
 「ごめんなさいっ! ルイーゼ! 悪気はなかったの」
 ルイーゼはものすごく痛そうにしていたけれど、またあの目の奥が笑っていない笑顔で「大丈夫よ。リリアンナ。気にしないで」といった。
 ルイーゼは私に手を合わせて頭を下げた。
 「ごめんなさい、リリアンナ! あなたの婚約者のアルブレヒト公爵子息と踊っても良いかしら?」と聞かれたこれど、アルブレヒト様は「まぁ、まだ婚約者の身だし本当に結婚するかお互いまだわかりませんので、大丈夫だと思いますよ。ねえ? リリアンナ」と聞かれて、私は空気を読んで「そ、そうですよね。それでは二人でお楽しみください」といって、その場から離れようとしたら、アルブレヒト様は、「それでは私のクイーン、一緒に踊ってくださいませんか?」とひざまづいてダンスの申し込みをルイーゼにした。そしたらルイーゼは笑顔で「ぜひともっ!」と返事をしてアルブレヒト様とルイーゼは二人だけの世界に入ってしまった。
 私は呆れて会場のすみっこに行こうとしたら、レオンハルトがいたので、いつもハインリヒ王子と一緒にいるレオンハルトに話しかけてみた。
 「こんばんは。レオンハルト」
「こんばんは、リリアンナ様。私が忠告した通りになりましたね」
「そ、そうなのかな?」と戸惑いながら会話を続けていると、ハインリヒ王子が目の前にやってきて私たちの話に割り込んできた。
 「やぁ、リリアンナ、レオンハルト。舞踏会の方はどうだい?」
「私の婚約者のアルブレヒト様と一緒に一回踊って、その後はルイーゼがアルブレヒト様に誘われて踊り始めたから、私はそれっきりひとりぼっちですね」と苦笑いしながらいったら、ハインリヒ王子は「なら、僕と一緒に踊らないか?」とひざまづいて私と一緒に踊るように誘ってくれた。
 私はその申し出を聞いて有頂天となり、すぐさま「はい」と照れながら答えた。
 そしてハインリヒ王子と踊り始めると私たちは注目され始めた。
 「リリアンナ、今日のドレスは君らしくない色だね」
「ルイーゼにおすすめされて着てみました。どうでしょうか?」と私は俯きながらステップを踏み、質問をした。くるりと回ってハインリヒ王子の体に触れると、ハインリヒ王子は「君らしくないけど、とても似合っているよ」といってくれた。
 「会場の皆様が私たちを見ています。ハインリヒ王子。誰か別の人とも踊ってはいかがかと」と私はだんだん恥ずかしくなっていうと、ハインリヒ王子も爽やかだけど照れ笑いして「そうだね。初めて君と踊れて良かったよ。リリアンナ」といった後、ハインリヒ王子は若干顔を強張らせて私に耳打ちをした。
 「ルイーゼ・ツー・ロザリント公爵令嬢には気をつけるんだよ。リリアンナ」
 その直後、アルブレヒト様と踊っているルイーゼを見たけれど、ルイーゼはハインリヒ王子と私とのやりとりを睨みつけているかのように見えた。

 その後はハインリヒ王子がルイーゼに誘われるまま踊っていたけれど、ハインリヒ王子は笑顔なんだけどどことなく心の奥底からさっきみたいに笑っていないように見えた。
 私はまたレオンハルトに話しかけた。
 「ねえ、レオンハルト。ルイーゼの取り巻きのフレイヤもリラも一緒に誰かと踊っているわ。だから、私と踊ってくれないかしら?」と騎士のレオンハルトに聞いてみたら、レオンハルトは「リリアンナ伯爵令嬢の仰せのままに」とひざまづいて、私はレオンハルトとも踊っていた。
 レオンハルトは少しぎこちなかったけれど、ハインリヒ王子と踊っていたルイーゼが何故か私の方を睨んでいた。
 レオンハルトはルイーゼからの視線に対して、「リリアンナ様、あのルイーゼという公爵令嬢の視線が気になりますか?」と聞いてきた。
 私は「ええ、まぁ」と答えていたら、レオンハルトは騎士にも関わらず貴族の女性陣から注目を浴び始め、私とのダンスが終わった頃にはフレイヤがレオンハルトと一緒に踊りたいとダンスを誘い、レオンハルトは戸惑っていた。

 レオンハルトがフレイヤとダンスを踊っていると、またハインリヒ王子が私の目の前に現れて、ハインリヒ王子は「また、僕と踊ってくれないか? リリアンナ」と笑顔でひざまづいてダンスに誘ってくれて、また二人で踊っていた。

 その後も全然私はアルブレヒト様と踊る機会もなく、ハインリヒ王子が舞踏会の終わりの挨拶を公然の前で行い、各自そのまま家に帰るか、二次会のように舞踏会の話を余った料理を食べたり飲み物を飲んだりして過ごしていた。
 私のことはハインリヒ王子と二回踊ったせいか、少し帰り際には噂話になっていて、その会話内容が聞こえていた。
 「あのハインリヒ王子と二回も踊っていた娘は誰なの?」
「リリアンナ・フォン・リヒテンベルク伯爵令嬢よ。きっと」
「まぁ。あの子、ハインリヒ王子の直属の騎士とも踊っていたじゃありませんの」という会話を聞いて、私はそそくさと自宅に戻るように、帰りの馬車に乗った。
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