【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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後日譚

後日譚518.事なかれ主義者は余計な事は言わないように心がけた

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 卵のための小屋を確認してもらってから一週間が経過した。
 この一週間、朝昼晩の三回リリス様が小屋にやってきては、あげる魔力量の管理をしてくれていた。
 流石に毎日やっていれば大体の感覚は掴めてくるんだけど、卵や他の外的要因によっては微調整が必要との事だった。

「個体差も多少あるので卵の様子を見ながらしっかりと管理する必要があるんです。私たちはドラゴンではないので猶更そうですね」
「リリス様はそういうご経験はたくさんされてきたのですか?」
「そうですね。暇な時は良く孵化の手伝いをしてきました。ダウンドラゴンはドラゴンの中では比較的大人しく、肉は食用に適していて、羽は布団などにも活用できる高級品なので飼育されてるんです」
「養豚ならぬ養龍的な」

 そんな言葉、前世には当然なかったけど、こっちにはあるのかな。
 それにしても、お肉に羽根か。…………流石に孵化させたのならお肉として食べるのはちょっとなぁ。
 そんな事を考えながら卵から離れ、リリス様と一緒に小屋の外に出る。
 魔道具『適温ローブ』のおかげで僕は汗一つかいていないけれど、リリス様は結構な汗をかいていた。
 胸元が大きく開いたドレスを今日は来ていたけれど、そこら辺の汗をぬぐうために小さなタオルを胸元にあてていたのでそっと視線を逸らす。

「……あ。その、申し訳ありません。兵士として活動していた頃はあまり周りの目を気にしてもいられない事もあったので……」
「大変な仕事をされてきたんですね」
「そうでもないですよ。ドラゴンは物心つく頃から身近にいて、大好きでしたし、加護のおかげで彼らともお話ができて楽しかったので」
「ご令嬢……しかもお姫様となると兵士になるのは忌避されるのかなと思ってたんですけど、違うんですね」
「ええ。私には性に合わなかったので」
「…………なるほど」

 随分とお転婆なお姫様だったのかもしれない。
 僕と同い年くらいだと婚約者がいてもおかしくないけど、そういう相手はいないとの事だった。特殊な加護を授かると王の中には手元に置きたがる者もいるらしいし、そういうのも関係していたのかもしれない。

「シズト様はこの後、どうされるんですか?」
「ん? あー、そうですね。…………町を回ろうかなと思ってますけど、リリス様がご迷惑じゃなければ一緒に回りますか?」
「よろしいのですか? 是非お願いしたいです」

 凛々しい顔つきのリリス様も笑顔はカッコいいよりも可愛いという方がしっくりくるなぁ、なんて事を考えながらどこに行くべきかな、と考えるのだった。



 町を見て回るためにリリス様を誘ったのはもちろん僕の意思ではない。
 いや、誘う事を最終的に決めたのは僕だから多少そのつもりはあったんだけど、大部分の理由がランチェッタさんに「ただで教わるのは良くないわ」と苦言を呈されたのが理由だった。
 タダよりも高い物はない、というし報酬を払いたかったんだけどリリス様は金品を受け取ろうとしなかった。
 でも、向こうが断ったから別に上げなくてもいいでしょ、とはならないのが難しい所だ。
 ドラゴンが生まれ、ある程度の飼育方法について伝授された後に「さあ、対価を支払ってください」と求められても困るし……と、言う事で妥協ラインとしてちょくちょく一緒に行動するという事になった。ランチェッタさんは「婚約すれば手っ取り早いのよ」なんて事を言っていたけれど、そういう目的でお嫁さんを増やすとどんどん増えるから避けたいし。
 というわけで、レモンちゃんを肩に乗っけた僕は、ドライアドを背中に背負ったり、抱っこしたり、肩車をしたりしているリリス様を連れて通りを歩いていた。
 ドライアドを引っ付けたリリス様にも注目は集まっていたけれど、ほとんどの視線は僕に向けられている事くらいは分かる。

「ずいぶんと賑やかですけど、シズト様の生誕祭ほどではないですね」
「むしろあっちの方が賑やかすぎるんですよ。その内規模を縮小させたいんですけど、なかなか大きくなった物を小さくするのって難しくて……」
「賑やかなのはお嫌いですか?」
「見てる分には好きですよ? 主役として注目を浴びるのはどうもなれなくて。祝うとしてもできればひっそりと祝っててほしいなっていう思いはあります」
「そうなんですね。…………ところでどこか目的地などはあるんですか?」
「とりあえずどこかでご飯でも食べようかなって。そういえばリリス様は普段、お食事はどうされているんですか?」
「卵の世話をする事になる前は基本的には外で食べてましたね。関係づくりをするためにも会食などは必要でしたから」
「なるほど。オススメのお店ってありますか? 行政区……特に貴族街の近くに新しく建てられたお店は行った事ないんですよね」
「どういうものを食べたいかにもよりますが……この格好だと浮いてしまうかもしれません」
「そこら辺はまあ、僕は気にしないですけど……リリス様はお召し物を替えるために一度屋敷に戻りますか?」

 レモンちゃんを肩に乗っけている時点でどこに行っても浮くのは確実だから今更だ。真っ白な服を着たらさらにドライアドは増えるし、着替えるのも面倒だからこのままで僕は良いんだけど、リリス様は少々悩んでいる様だった。
 素敵なドレスだから悩む必要なんてないと思うんだけど、ドレスコードとかいうのは僕は分かんないし余計な事は言わないようにしよう。
 その後、結局比較的カジュアルなお店に行く事になったので着替える必要はなかったけれど、結局そこでもお客さんにも店員さんにもじろじろと見られる事になった。服装も大事だけど、やっぱり関係ないよな、なんて事を考えながらもしゃもしゃとサラダを食べる。

「これ私たちのだね~」
「うまうまでござる」
「こっちもおいしーよ」

 リリス様に引っ付いていたドライアドたちがつまみ食いをしながら自分たちが育てた物だと断言していた。…………正直、彼女たちが作った物ではない物が出されても気づけない気がするんだけど、黙っておこう。
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