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後日譚
後日譚130.事なかれ主義者は赤ちゃんたちを見て回った
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本館が増築されてから一週間ほどが過ぎた。
イクオだけではなく、モニカとの間に生まれた千与と、シンシーラとの間に生まれた真もハイハイをして動き回るようになった。真はまだ産まれてから半年も経っていないんだけどこれが普通なのだろうか?
そんな疑問を抱くけれど、すくすくと健やかに成長しているのなら文句はない。文句はないんだけど、子どもたちが遊ぶために設けた二階の広い和室は塵一つ落ちてないように細心の注意を払っている。
部屋の四隅に設置してある魔道具『埃吸い吸い箱』のおかげで埃なんて落ちているわけがないんだけど、子どもたちが遊ぶ前には和室に集まってゴロゴロとしているドライアドたちにお願いして乾拭きをしてもらっている。
「よーい、どん!」
「うおおおぉぉぉ」
「負けないぞー」
「これどこまですればいいの~」
「全部って言ってたよー」
「何回するの~」
「ちっちゃい人間さんたちが来るまでだってー」
「みんな呼ぶ~?」
「それもありだねー」
「いや、これ以上人手は要らないから!」
ドライアドたちに釘を刺しておかないと増援が大量にやってきてしまう。丁重にお断りして、僕もドライアドたちに混じって雑巾がけをするのが最近の朝の日課に加わっている。
部屋を何度も往復し終える頃には子どもたちを連れたお嫁さんたちがやってくる。ハイハイができる三人だけではなく、他の子たちも全員勢揃いだ。
当然のようにお嫁さんたちと一緒に部屋に入ってきた義母のパールさんは触れない方が良いのだろうか。
そんな事を思いつつそれぞれ思い思いの場所でくつろぎ始めた母子の様子を見て回る。
育生は今日もモリモリと離乳食を食べたはずなのに、ドライアドたちに果物で釣られそうになっている。よく泣く子で人見知りもするのにご飯大好きな子になってしまったのはファマ様の加護も関係があるのだろうか? 体重の増加スピードはだんだん落ちているそうだけど、このままだと真ん丸な子にならないかちょっと心配している。
まあそれはそれで健康的だから僕は良いんだけど……この世界の価値観としてはあんまりよろしくないみたいだし、これからも運動をしっかりさせよう。最悪太ってしまったら脂肪燃焼腹巻があるからあんまり深く考えなくても良いだろうけど。
「千与は今日も大人しいねぇ」
「私や乳母の後はついて回るんですよ」
「何それずるい」
「母親の特権です」
「もっと関わる時間を増やさなくちゃいけないかなぁ」
「布教活動に支障が出ないようにしてくださいね」
クスクスと笑うモニカの膝の上で大人しくしている女の子が千与だ。
モニカと僕の間の子だから目と髪の毛は黒い。育生はレヴィさんに紙の毛と目の色が似ているので名前を海外の人っぽくするべきだったかと思う所はあるけれど、こっちの世界の貴族たちの間では異世界人っぽい名前を付ける事はたまにあるからそこまで気にする事はないそうだ。
「今日はこの後ドワーフの国へ行くんですよね? 千与と一緒にお留守番しておきますので頑張ってください」
「頑張るけどさあぁ。早く千与に覚えてもらいたいんだよぉ」
「だいぶ覚えている方だと思いますけど……」
「そうかなぁ」
「そうですよ。ほら、千与、パパですよー」
モニカは千与を抱っこした状態で立ち上がると、そのまま僕に差し出されてきた。
つぶらな瞳にジッと見られる。
「う?」
「はい、かわいい。首を傾げる所があざといね~」
モニカが近くにいるからギャン泣きされる事はないけど、やっぱり抱っこをすると僕ではなくモニカの方を見て手を伸ばす。
あんまりこの状態が続くと泣き始めるので早々にモニカに返した。
「わー、にげろ~」
「こっちおいで~」
ドライアドたちが騒がしいのでそちらに視線を向けると、栗毛色の尻尾をブンブンと振りながらドライアドたちを追いかけまわしている真がいた。女の子だから大人しいとかはないんだなぁ、とか思いながらシンシーラから離れすぎている真をひょいっと持ち上げても、彼女はきょとんとするだけで泣く様子はない。
「もうちょっとこっちで遊んでねー」
「うー」
「そんな心配しなくてもこの部屋だったら大丈夫じゃん」
「もしかしたら人にぶつかるかもしれないでしょ?」
「そこらへん含めても大丈夫じゃん」
シンシーラは割と放任主義みたいなところがある。放任というより信じて成長を見守っているのかもしれないけど、真がどんな事をしてもとりあえず見守る事が多い。
僕に真を渡されてもすぐに畳の上に降ろして様子を見守っている。
真は動くものに強く興味を示す子で、シンシーラがぶんぶんと嬉しそうに振っている尻尾を見て捕まえようとし始めている。時々自分の尻尾を見て捕まえようとするところを見ると狼じゃなくて猫なんじゃないかと思う時もあるけど……イメージの問題かもしれないなぁ。
そんな事を思っている間に、髪の毛をわさわさと動かしていたドライアドたちに興味が移ったのか、また真がハイハイで遠くへ行ってしまった。
人見知りしすぎるのも、全くしないのも考えものだなぁ。
そんな事を思いつつ、まだ人見知りをしない子たちを見て回った。
ノエルとパメラは赤ん坊を抱いて入るけれど自分の興味を優先しているからちょっと心配だけど、きっと乳母の方々が何とかしてくれるだろう。
一通り見て回っている間に時間が来てしまったので行きたくないけど僕は部屋を後にするのだった。
イクオだけではなく、モニカとの間に生まれた千与と、シンシーラとの間に生まれた真もハイハイをして動き回るようになった。真はまだ産まれてから半年も経っていないんだけどこれが普通なのだろうか?
そんな疑問を抱くけれど、すくすくと健やかに成長しているのなら文句はない。文句はないんだけど、子どもたちが遊ぶために設けた二階の広い和室は塵一つ落ちてないように細心の注意を払っている。
部屋の四隅に設置してある魔道具『埃吸い吸い箱』のおかげで埃なんて落ちているわけがないんだけど、子どもたちが遊ぶ前には和室に集まってゴロゴロとしているドライアドたちにお願いして乾拭きをしてもらっている。
「よーい、どん!」
「うおおおぉぉぉ」
「負けないぞー」
「これどこまですればいいの~」
「全部って言ってたよー」
「何回するの~」
「ちっちゃい人間さんたちが来るまでだってー」
「みんな呼ぶ~?」
「それもありだねー」
「いや、これ以上人手は要らないから!」
ドライアドたちに釘を刺しておかないと増援が大量にやってきてしまう。丁重にお断りして、僕もドライアドたちに混じって雑巾がけをするのが最近の朝の日課に加わっている。
部屋を何度も往復し終える頃には子どもたちを連れたお嫁さんたちがやってくる。ハイハイができる三人だけではなく、他の子たちも全員勢揃いだ。
当然のようにお嫁さんたちと一緒に部屋に入ってきた義母のパールさんは触れない方が良いのだろうか。
そんな事を思いつつそれぞれ思い思いの場所でくつろぎ始めた母子の様子を見て回る。
育生は今日もモリモリと離乳食を食べたはずなのに、ドライアドたちに果物で釣られそうになっている。よく泣く子で人見知りもするのにご飯大好きな子になってしまったのはファマ様の加護も関係があるのだろうか? 体重の増加スピードはだんだん落ちているそうだけど、このままだと真ん丸な子にならないかちょっと心配している。
まあそれはそれで健康的だから僕は良いんだけど……この世界の価値観としてはあんまりよろしくないみたいだし、これからも運動をしっかりさせよう。最悪太ってしまったら脂肪燃焼腹巻があるからあんまり深く考えなくても良いだろうけど。
「千与は今日も大人しいねぇ」
「私や乳母の後はついて回るんですよ」
「何それずるい」
「母親の特権です」
「もっと関わる時間を増やさなくちゃいけないかなぁ」
「布教活動に支障が出ないようにしてくださいね」
クスクスと笑うモニカの膝の上で大人しくしている女の子が千与だ。
モニカと僕の間の子だから目と髪の毛は黒い。育生はレヴィさんに紙の毛と目の色が似ているので名前を海外の人っぽくするべきだったかと思う所はあるけれど、こっちの世界の貴族たちの間では異世界人っぽい名前を付ける事はたまにあるからそこまで気にする事はないそうだ。
「今日はこの後ドワーフの国へ行くんですよね? 千与と一緒にお留守番しておきますので頑張ってください」
「頑張るけどさあぁ。早く千与に覚えてもらいたいんだよぉ」
「だいぶ覚えている方だと思いますけど……」
「そうかなぁ」
「そうですよ。ほら、千与、パパですよー」
モニカは千与を抱っこした状態で立ち上がると、そのまま僕に差し出されてきた。
つぶらな瞳にジッと見られる。
「う?」
「はい、かわいい。首を傾げる所があざといね~」
モニカが近くにいるからギャン泣きされる事はないけど、やっぱり抱っこをすると僕ではなくモニカの方を見て手を伸ばす。
あんまりこの状態が続くと泣き始めるので早々にモニカに返した。
「わー、にげろ~」
「こっちおいで~」
ドライアドたちが騒がしいのでそちらに視線を向けると、栗毛色の尻尾をブンブンと振りながらドライアドたちを追いかけまわしている真がいた。女の子だから大人しいとかはないんだなぁ、とか思いながらシンシーラから離れすぎている真をひょいっと持ち上げても、彼女はきょとんとするだけで泣く様子はない。
「もうちょっとこっちで遊んでねー」
「うー」
「そんな心配しなくてもこの部屋だったら大丈夫じゃん」
「もしかしたら人にぶつかるかもしれないでしょ?」
「そこらへん含めても大丈夫じゃん」
シンシーラは割と放任主義みたいなところがある。放任というより信じて成長を見守っているのかもしれないけど、真がどんな事をしてもとりあえず見守る事が多い。
僕に真を渡されてもすぐに畳の上に降ろして様子を見守っている。
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そんな事を思っている間に、髪の毛をわさわさと動かしていたドライアドたちに興味が移ったのか、また真がハイハイで遠くへ行ってしまった。
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