【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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後日譚

後日譚345.事なかれ主義者は余計なお世話をした

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 蘭加と静流の誕生日を迎えた。子どもたちの誕生日を迎える度に、時間の流れが速く感じるなぁ、と思う今日この頃。
 二人の誕生日の数日前、ラオさんとルウさんのご両親がいらっしゃったけど、誕生日パーティーには出席しないらしい。また故郷に連れて帰った際に祝うって帰る際に言ってた。

「今日は絶好の誕生日会日和ね!」

 朝食を既に食べ終わったルウさんが魔力マシマシ飴を舐めながら窓の外に視線を向けていた。
 つられてそちらに視線を向けると、まず最初に視界に入るのはドライアドたちだ。窓からこちらの様子をジッと見ていたが、僕と視線が合うと頭を引っ込めた。……頭の上に咲いた花々が風吹かれてそよいでいる。
 窓の外は畑が広がっていて、遠くの方には真新しい建物が並んでいる。さらにその奥には大きな壁が見えた。壁の向こうにも壁はあるけれど、それよりも視線を上にあげると雲一つない青空が広がっていた。

「まあ、そのために昨日は念入りに加護を使っておいたからね」
「チャム様にはしっかりと感謝を込めてお祈りをするのですわ!」
「パーティーの前にするからその時でいいでしょ。それより、リヴァイさんたちに今日は来ないように伝えておいてくれた?」
「バッチリ伝えておいたのですわ! 心配だったらドランと通じている転移陣を使えないようにしておくのですわ?」
「そこまではしなくていいよ」

 転移陣は姫花や明など、許可を与えている一部の人間も使っているし、万が一何かあった時に仕えた方が便利なので基本的には閉じるつもりはない。つもりはないんだけど、うっかり間違えてリヴァイさんたちが来たらそのままパーティーに合流する事になるんだろうな。
 ラオさんとルウさんは別に慣れてるから気にしないだろうけど、一度参加したらその後も、って事は普通にあり得そうだから他の人の事を考えるとしっかりと止める必要がある。
 ……万が一来てしまったらアンジェラたちの遊び相手になってもらおう。



 朝食の後はドライアドたちに見られながらパーティーの準備を手伝う事にした。準備と言っても普段はしまっている机やら椅子を並べたり、皆がのんびりと座って食事をする事ができるように敷物を敷いたりするくらいだ。

「シズト様、そういう事は私たちが……」
「いいのいいの。こうして準備するのも親の仕事だから。万が一、誰かの誕生日の時に『天気祈願』の依頼が入っちゃったらまたお願いするけど、今日は普段の仕事をしてて大丈夫だよ」
「でも――」
「シズト様が仰ってるんだからもういいんじゃない? 知らんけど」
「そうそう。君たちはバーンくんと一緒に夜ご飯の準備でもしててよ。エミリーもジューンさんもこっちに参加するからあんまり時間ないだろうし」
「いえ、エミリー様とジューン様はお昼までに下準備を終わらせるとの事だったのでやる事ないです」
「だからアタイたちはこっちの準備をするようにって言われて……」
「あ、そうなの? じゃあ今日はお休みって事でバーンくんとどっかでかけてきたら?」
「いや、休み貰えるなら部屋でのんびり過ごしたいんですけど。……知らんけど」
「そんな事言わずにさ、三人連れて行ってきなよ。休みなんてそうそうないんだからさ」
「そ、そうよね。シズト様のご厚意に甘えて出かけましょう」
「ファマリアもいろいろ変わったって話だもんね~」
「いや、俺は別に――」

 いくら男性と言っても女の子三人の勢いには負けるようで、バーンくんは彼を慕う女の子三人に引きずられるかのように町の方へと向かって行った。

「……シズト、変な顔で見送るのはやめた方が良いのですわ」
「え、そんな変な顔してる?」
「してたのですわ。あの三人とバーンをくっつけたいっていうのは分かるのですけれど、あんまり強引にするのは彼のためにもならない気がするのですわ」
「流石に本人が嫌がったらやめるけど…………そこのところどうなの?」
「残念ながら指輪をしてるから分からないのですわ~」
「女の勘的な感じで良いんだけど」
「平民の恋愛事情に関してはよく分からないのですわ~。こっちの準備は終わったから、私は祠の掃除でもしてくるのですわ」

 ドライアドたちを引き連れてレヴィさんは祠の方へと向かった。
 それを見送ってからしばらく黙々と位置取りなどを調整したけど、それもあまり時間がかからなかった。

「……祠の掃除はあの人数で十分だよな。なにかする事あったかなぁ」
「レモン!」
「うん、レモンは今は食べないかな。有難く貰うけど」

 肩の上からレモンを差し出してたレモンちゃんからレモンを受け取ると、それをそのまま近くに置いてあったアイテムバッグの中に突っ込んだ。レモンちゃんは不服そうな雰囲気だけど、丸かじりはやっぱり無理なので諦めてもらおう。

「無駄に時間が余っちゃったし、いつもしない畑の見回りでもしようかな。レモンちゃん、案内頼める?」
「れーも~!」

 何言っているか分からないけど、僕が畑の周りを歩き始めると何やらレモレモ一生懸命言っている。きっと植物の説明か何かしてくれてるんだろう。たぶん。
 レモンちゃんはいつか話せるようになるのかなぁ、なんて事を考えながらまずは自分の畑の様子を見に行こうと足を進めるのだった。
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