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後日譚
後日譚387.事なかれ主義者はとりあえず招き入れた
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パーティーの準備はそんなに時間がかかる事なく終わった。一番時間がかかったのは千与のぬいぐるみを統べて起動する事だろうか?
千与が持っているぬいぐるみは魔道具化されているが、魔石ではなく魔力を流す事で動く。魔石を核としている魔法生物とは全く異なる物らしい。
それらすべてに魔力を込めたのは魔力が有り余っている僕だ。途中から何体あるのか数えるのもやめて流れ作業でどんどん魔力を込めた。
その作業の階もあって、パーティー会場の広間は机を中心に様々なぬいぐるみが動き回っていた。二足歩行をするタイプの物はゆっくりとした動作で踊っているし、四足歩行だったりそもそも足がない物は机を中心に時計回りにぐるぐると回っている。
人型のマネキンのような物だったらもっとパーティーっぽいダンスも躍らせる事は出来たんだろうけど、そういうのは千与の好みじゃないしな。
「シズト、やっと望愛が起きたのですわ! 『くりすますぱーてぃー』を始めるのですわ~」
「そうだね。それじゃあ始めようか」
「挨拶とかはしないのですわ?」
「するよ? ほら、皆座って! 手を合わせて!」
「そっちの挨拶じゃなくて、パーティーを始める際の挨拶ですわ。みんなの前で挨拶をする練習をしたいって言ってたのですわ」
「あー……言ったっけ? 覚えてないや」
「ほんとですわ?」
「ほんとほんと。それに、あんまり長話していると子どもたちが待ってられないんじゃない? そういう訳だから、みんな手を合わせたかな? それじゃあ、いただきます!」
僕の掛け声とともにみんなが一斉に唱和した。子どもたちも日々の食事の前にさせていたので自分でする子もいたけれど、しない子の方が多かった。こればっかりは少しずつやるしかない。
「シズト、布巾を取って欲しいのですわ! ダイキがこぼしたのですわ!」
「はいはい」
「シズトちゃん、こっちにも布巾を持ってきてくれるかしら?」
「今行く。ホムラとユキは、今日は口元あまり汚さないでね」
「「………」」
「マコト! ぬいぐるみを追いかけるのはいつでもできるじゃん! まずはご飯を食べるじゃん!」
「ねぇ、ディアーヌ。まだ私の子があまり話さないんだけど、ケントにはなにかしてるの?」
「特に思い当たる所はないわよ?」
「本当かしら?」
「ほんとよ、ほんと。それに、まだ話さなくても問題ないって言われたんでしょ?」
「そうだけど、同じ日に言われたあなたの子があんなにお喋りだから心配になるのよ」
まあ、心配になるのも分かる。
ついつい動きを止めて立ち聞きしてしまうくらいには僕も気になっていたけれど、その後の話はルウさんに催促されて聞く事は出来なかった。
「遅いな、サンタさん」
「そうですね。みんな元気を取り戻したから丁度いいタイミングなんですけど……」
僕の隣に立ち、窓から外の様子を見ていたモニカが言った通り、タイミングとしては完璧なんだ。
ただ、訪問予定の時間になってもサンタはやって来ない。
もしかしたら急な仕事が入ったのだろうか?
なにがなんでも仕事はいれない、と断言していたけれど、やっぱり統治者ともなるとそうとも言ってられない事もあるのだろう。
「別館の誰かに代役を頼みますか?」
「それ、丁度考えてた。もう少し待ってみてくる気配がなかったらそうしようか。頼むのは誰が良いかな?」
「そうですね。『さんた』の格好を考えると男性となるのですが……バーンは背丈が足りませんし、ボルドはシズト様が命令しない限りは部屋から出て来ないでしょう」
「苦手な事は強制するつもりはないからパスかな。アンディーならやってくれるんじゃない?」
「そうですね。仮装用の道具は念のため準備はしてあるはずなのでそれを――」
「なんか聞こえるじゃん」
モニカとの話を遮るかのように大きな声でシンシーラが言った。
雑談に興じていたお嫁さんたちが静かになり、獣人組はピクピクと耳を立てて音を拾おうとしている。母親を真似してか子どもたちも耳をピンと立てててとてもかわいい。
「だんだん近づいて来てるわ」
「そうですねぇ。何の音でしょうかぁ」
エルフも長い耳で小さな音も聞き分ける事ができるらしい。
だけど人間の張力には限界があるのでまだ僕たちには聞こえない。なんて事を考えていたらラオさんとルウさんも聞こえている様だった。身体強化で聴力を強化しているのだろう。
遊んでいた子どもたちも周りがとても静かに耳を澄ませているのが気になったのかわらわら窓の近くに集結した。
窓の外をみんなで眺めていると、闇夜に紛れる真っ黒な肌のドライアドたちの頭の上に咲いている花が忙しなく中庭で動いていたが、しばらくすると音が聞こえてきた。リンリンリンリンと。
「なんかきた!」
「なにあれ?」
「なになに?」
好奇心旺盛な真や栄人、静流を筆頭に子どもたちが騒ぐ中、リンリンリンリンと音を鳴らしながらやってきた空飛ぶ何かがぐるぐると小さく旋回しながらだんだんと高度を下げて中庭に降りてくる。
それは木製のそりのような物だった。それを牽いているのはトナカイではなく小さなドラゴンだ。
ドライアドたちがわらわらと動き回る中を突っ切って着地したそりの上には真っ赤な帽子と服を身につけた人物が座っている。
「「「さんたさん!」」」
最近、よく読み聞かせで読む本に出てくる人物にそっくりな服を身につけたその人物を見てほとんどの子どもたちが目を輝かせた。……蘭加は相変わらず知らない人が来たと判断したらラオさんの胸に顔を埋めて目を合わせないようにしていたけど。
サンタさんは白いひげを蓄えた長身の人物だった。……予定ではふっくらした体型のはずだったんだけど、なんかスラッとしてるな。
大きな袋を抱えたサンタさんがソリを降りてこちらに向かってくる。
こっちに? なんで? 予定だと廊下の空いてる窓から入ってくるはずなんだけど……。
「ご主人様、魔力が違います」
「え?」
「サンタの奥さんがやってきたみたいよ」
「奥さん?」
確かに近づいてきて部屋の明かりに照らされたその人物を見たらズボンじゃなくてスカートだ。
なぜサンタさんじゃなくて奥さんが来たのだろう?
気になる事はあったけど、サンタの正体が誰なのかは分かったので入れずに困っているサンタさんに空いている窓の方を指差して伝えるのだった。
千与が持っているぬいぐるみは魔道具化されているが、魔石ではなく魔力を流す事で動く。魔石を核としている魔法生物とは全く異なる物らしい。
それらすべてに魔力を込めたのは魔力が有り余っている僕だ。途中から何体あるのか数えるのもやめて流れ作業でどんどん魔力を込めた。
その作業の階もあって、パーティー会場の広間は机を中心に様々なぬいぐるみが動き回っていた。二足歩行をするタイプの物はゆっくりとした動作で踊っているし、四足歩行だったりそもそも足がない物は机を中心に時計回りにぐるぐると回っている。
人型のマネキンのような物だったらもっとパーティーっぽいダンスも躍らせる事は出来たんだろうけど、そういうのは千与の好みじゃないしな。
「シズト、やっと望愛が起きたのですわ! 『くりすますぱーてぃー』を始めるのですわ~」
「そうだね。それじゃあ始めようか」
「挨拶とかはしないのですわ?」
「するよ? ほら、皆座って! 手を合わせて!」
「そっちの挨拶じゃなくて、パーティーを始める際の挨拶ですわ。みんなの前で挨拶をする練習をしたいって言ってたのですわ」
「あー……言ったっけ? 覚えてないや」
「ほんとですわ?」
「ほんとほんと。それに、あんまり長話していると子どもたちが待ってられないんじゃない? そういう訳だから、みんな手を合わせたかな? それじゃあ、いただきます!」
僕の掛け声とともにみんなが一斉に唱和した。子どもたちも日々の食事の前にさせていたので自分でする子もいたけれど、しない子の方が多かった。こればっかりは少しずつやるしかない。
「シズト、布巾を取って欲しいのですわ! ダイキがこぼしたのですわ!」
「はいはい」
「シズトちゃん、こっちにも布巾を持ってきてくれるかしら?」
「今行く。ホムラとユキは、今日は口元あまり汚さないでね」
「「………」」
「マコト! ぬいぐるみを追いかけるのはいつでもできるじゃん! まずはご飯を食べるじゃん!」
「ねぇ、ディアーヌ。まだ私の子があまり話さないんだけど、ケントにはなにかしてるの?」
「特に思い当たる所はないわよ?」
「本当かしら?」
「ほんとよ、ほんと。それに、まだ話さなくても問題ないって言われたんでしょ?」
「そうだけど、同じ日に言われたあなたの子があんなにお喋りだから心配になるのよ」
まあ、心配になるのも分かる。
ついつい動きを止めて立ち聞きしてしまうくらいには僕も気になっていたけれど、その後の話はルウさんに催促されて聞く事は出来なかった。
「遅いな、サンタさん」
「そうですね。みんな元気を取り戻したから丁度いいタイミングなんですけど……」
僕の隣に立ち、窓から外の様子を見ていたモニカが言った通り、タイミングとしては完璧なんだ。
ただ、訪問予定の時間になってもサンタはやって来ない。
もしかしたら急な仕事が入ったのだろうか?
なにがなんでも仕事はいれない、と断言していたけれど、やっぱり統治者ともなるとそうとも言ってられない事もあるのだろう。
「別館の誰かに代役を頼みますか?」
「それ、丁度考えてた。もう少し待ってみてくる気配がなかったらそうしようか。頼むのは誰が良いかな?」
「そうですね。『さんた』の格好を考えると男性となるのですが……バーンは背丈が足りませんし、ボルドはシズト様が命令しない限りは部屋から出て来ないでしょう」
「苦手な事は強制するつもりはないからパスかな。アンディーならやってくれるんじゃない?」
「そうですね。仮装用の道具は念のため準備はしてあるはずなのでそれを――」
「なんか聞こえるじゃん」
モニカとの話を遮るかのように大きな声でシンシーラが言った。
雑談に興じていたお嫁さんたちが静かになり、獣人組はピクピクと耳を立てて音を拾おうとしている。母親を真似してか子どもたちも耳をピンと立てててとてもかわいい。
「だんだん近づいて来てるわ」
「そうですねぇ。何の音でしょうかぁ」
エルフも長い耳で小さな音も聞き分ける事ができるらしい。
だけど人間の張力には限界があるのでまだ僕たちには聞こえない。なんて事を考えていたらラオさんとルウさんも聞こえている様だった。身体強化で聴力を強化しているのだろう。
遊んでいた子どもたちも周りがとても静かに耳を澄ませているのが気になったのかわらわら窓の近くに集結した。
窓の外をみんなで眺めていると、闇夜に紛れる真っ黒な肌のドライアドたちの頭の上に咲いている花が忙しなく中庭で動いていたが、しばらくすると音が聞こえてきた。リンリンリンリンと。
「なんかきた!」
「なにあれ?」
「なになに?」
好奇心旺盛な真や栄人、静流を筆頭に子どもたちが騒ぐ中、リンリンリンリンと音を鳴らしながらやってきた空飛ぶ何かがぐるぐると小さく旋回しながらだんだんと高度を下げて中庭に降りてくる。
それは木製のそりのような物だった。それを牽いているのはトナカイではなく小さなドラゴンだ。
ドライアドたちがわらわらと動き回る中を突っ切って着地したそりの上には真っ赤な帽子と服を身につけた人物が座っている。
「「「さんたさん!」」」
最近、よく読み聞かせで読む本に出てくる人物にそっくりな服を身につけたその人物を見てほとんどの子どもたちが目を輝かせた。……蘭加は相変わらず知らない人が来たと判断したらラオさんの胸に顔を埋めて目を合わせないようにしていたけど。
サンタさんは白いひげを蓄えた長身の人物だった。……予定ではふっくらした体型のはずだったんだけど、なんかスラッとしてるな。
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「え?」
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確かに近づいてきて部屋の明かりに照らされたその人物を見たらズボンじゃなくてスカートだ。
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