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後日譚
後日譚405.事なかれ主義者は時間稼ぎがしたかった
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お、気づいた。
「何をしているのですわ?」
「ギュスタンさんがいたからお話ししようかなって」
「…………好きにすると良いのですわ」
ため息が聞こえたのでそちらを見るとランチェッタさんが手を額に当てていた。体調でも悪いんだろうか。
「至って健康だと思うのですわ。だから放っておいていいと思うのですわ」
レヴィさんがそういうのならきっとそうなんだろう。
実際、ランチェッタさんは「何でもないわ」と言っているし。
ランチェッタさんは暑がりだから露出の多いドレスを着ていて、天然物の驚異の胸元が大胆に露になっていた。
以前魔道具化したドレスを着回せばいいのに、と思ったけど新年の最初の社交パーティーに限らず、ガレオールでは一度着たドレスを再びきて社交パーティーに出る事はないらしい。それがどれだけ機能性に優れていても、そういうマナーなんだとか。
オクタビアさんやレヴィさんは以前も見た事があるようなデザインのドレスを着ていた。
最近はレヴィさんと一緒にオーバーオールを着て農作業をしている事が多いオクタビアさんだけど、こうしてみるとやっぱりランチェッタさんと同じく統治者なんだなと実感する。なんというかこう……近寄りがたい威厳のような物を感じる。
僕もいつかそんな雰囲気を醸し出す事ができるようになるんだろうか?
「しばらくは難しいと思うのですわ」
「……レヴィさんレヴィさん、指輪を嵌めたらどうですか? いろいろ聞こえすぎて疲れるって前言ってたし」
「毎日の事だったら疲れるけれど、半日くらいだったら問題ないのですわ。それに私の加護の事はこっちにも伝わっているみたいだから警戒されているみたいですけれど、良からぬ事を考えている相手がいたらいち早く気付けるようにしておきたいのですわ」
鼻息荒く、周囲を睥睨するかのように見回すレヴィさんには申し訳ないんだけど、こんなに大勢人がいる場所でやらかす人はいないんじゃないかなぁ。
僕も周囲をそれとなく見てみると、集中力が切れかけているパメラが目に留まった。護衛としてコンビを組んでいるシンシーラが勝手に動かないように釘を刺している。
ラオさんとルウさんはそんな二人を気にした様子もなく、僕とその周りを警戒しているようだ。
非戦闘員のエミリーとジューンさんは軽く摘まめるものを取りにいっている。何やら話しかけられてエミリーが緊張している様だったけど、ジューンさんが対応する事になったようだ。せっせと美味しそうなものを集め始めた。
「エミリーもドレスを着ればよかったのに」
「慣れている服が良いと言っていたから仕方がないのですわ。それよりシズト、ギュスタン様がだいぶ近づいて来ているのですわ。座っている時の姿勢を気を付けるのですわ」
「……雑談をしている時もちゃんと座ってないとダメ?」
「ダンスの時以外は大体座っているものですし、そういう時も常に誰かからは見られているのですわ。だから頑張って姿勢を維持するのですわ。あと、ギュスタン様と話をした後は新年の挨拶をするために各地からやってきた人々が今か今かと待ち構えているからですわ。くれぐれも、ギュスタン様についてどこかに行こうとしないように、ですわ」
「はい」
成り行きに任せて彼の後について回ろうと思っていたけど、レヴィさんに釘を刺されたので大人しく座っているしかない。幸いな事にこの椅子は結構いい感じでずっと座っていても疲れなさそうなので何とかなるかもしれない。
居住まいを正したところでギュスタンさんたちが僕の前にやってきた。
ギュスタンさんの右隣の人が確か正室のサブリナさんで、左隣の小柄な女の子がルシールさん、それからラオさんたちと同じくらいの背丈の女性がエーファさんだったはずだ。出席者を丸暗記したと豪語していたレヴィさんが何も言ってこないので間違っていない、はず。
「明けましておめでとうございます、シズト様」
「シズトシズト、表情を維持するのですわ」
いやだってギュスタンさんに様付で呼ばれるのなんか違和感しかないし……あ、はい。ちゃんと表情を取り繕いますとも。ギュスタンさんの新年の挨拶が終わる頃にはレヴィさんから指摘されないくらいには真面目な顔を取り繕う事ができた。
「出産が無事に終わったようで良かったよ」
「それもこれもシズト様の格別なご配慮のおかげです。ありがとうございました」
「いやいや、困ったらお互い様だから。また落ち着いた時にでも子どもたちを見に行ってもいいかな?」
「もちろんです」
「子どもたちを交えてピクニックもアリだけど…………そういうのはまだまだ先になりそうだよね。あ、サブリナさんたちは僕のお嫁さんとはあまり面識なかったよね? 紹介した方が良いかな?」
「私的な交流の時にでもすればいいのですわ」
「あ、はい」
レヴィさんに注意されている間に、背伸びをしたルシールさんが彼女のためにかがんだギュスタンさんに何やら耳打ちをしている。レヴィさんが何も言わないからきっと大した事ではないんだろう。
「他の方々がシズト様と挨拶をするためにお待ちになっていらっしゃるので僕たちは失礼させていただきます」
「え? ああ、まあ、そうだね」
もう少しくらい話をしていたかったけれどあんまり長話をしていても他の国々の人とはきちんと新年の挨拶をしなければならない。義務なのは各国の代表とだけなんだけど、それでも十を軽く超える数のお偉いさんを待たせている状況なのはあまり良くない事なのだろう。
そそくさと退散していくギュスタンさんに「また後でね」と声をかけるだけに留めて、再び居住まいを正すのだった。
「何をしているのですわ?」
「ギュスタンさんがいたからお話ししようかなって」
「…………好きにすると良いのですわ」
ため息が聞こえたのでそちらを見るとランチェッタさんが手を額に当てていた。体調でも悪いんだろうか。
「至って健康だと思うのですわ。だから放っておいていいと思うのですわ」
レヴィさんがそういうのならきっとそうなんだろう。
実際、ランチェッタさんは「何でもないわ」と言っているし。
ランチェッタさんは暑がりだから露出の多いドレスを着ていて、天然物の驚異の胸元が大胆に露になっていた。
以前魔道具化したドレスを着回せばいいのに、と思ったけど新年の最初の社交パーティーに限らず、ガレオールでは一度着たドレスを再びきて社交パーティーに出る事はないらしい。それがどれだけ機能性に優れていても、そういうマナーなんだとか。
オクタビアさんやレヴィさんは以前も見た事があるようなデザインのドレスを着ていた。
最近はレヴィさんと一緒にオーバーオールを着て農作業をしている事が多いオクタビアさんだけど、こうしてみるとやっぱりランチェッタさんと同じく統治者なんだなと実感する。なんというかこう……近寄りがたい威厳のような物を感じる。
僕もいつかそんな雰囲気を醸し出す事ができるようになるんだろうか?
「しばらくは難しいと思うのですわ」
「……レヴィさんレヴィさん、指輪を嵌めたらどうですか? いろいろ聞こえすぎて疲れるって前言ってたし」
「毎日の事だったら疲れるけれど、半日くらいだったら問題ないのですわ。それに私の加護の事はこっちにも伝わっているみたいだから警戒されているみたいですけれど、良からぬ事を考えている相手がいたらいち早く気付けるようにしておきたいのですわ」
鼻息荒く、周囲を睥睨するかのように見回すレヴィさんには申し訳ないんだけど、こんなに大勢人がいる場所でやらかす人はいないんじゃないかなぁ。
僕も周囲をそれとなく見てみると、集中力が切れかけているパメラが目に留まった。護衛としてコンビを組んでいるシンシーラが勝手に動かないように釘を刺している。
ラオさんとルウさんはそんな二人を気にした様子もなく、僕とその周りを警戒しているようだ。
非戦闘員のエミリーとジューンさんは軽く摘まめるものを取りにいっている。何やら話しかけられてエミリーが緊張している様だったけど、ジューンさんが対応する事になったようだ。せっせと美味しそうなものを集め始めた。
「エミリーもドレスを着ればよかったのに」
「慣れている服が良いと言っていたから仕方がないのですわ。それよりシズト、ギュスタン様がだいぶ近づいて来ているのですわ。座っている時の姿勢を気を付けるのですわ」
「……雑談をしている時もちゃんと座ってないとダメ?」
「ダンスの時以外は大体座っているものですし、そういう時も常に誰かからは見られているのですわ。だから頑張って姿勢を維持するのですわ。あと、ギュスタン様と話をした後は新年の挨拶をするために各地からやってきた人々が今か今かと待ち構えているからですわ。くれぐれも、ギュスタン様についてどこかに行こうとしないように、ですわ」
「はい」
成り行きに任せて彼の後について回ろうと思っていたけど、レヴィさんに釘を刺されたので大人しく座っているしかない。幸いな事にこの椅子は結構いい感じでずっと座っていても疲れなさそうなので何とかなるかもしれない。
居住まいを正したところでギュスタンさんたちが僕の前にやってきた。
ギュスタンさんの右隣の人が確か正室のサブリナさんで、左隣の小柄な女の子がルシールさん、それからラオさんたちと同じくらいの背丈の女性がエーファさんだったはずだ。出席者を丸暗記したと豪語していたレヴィさんが何も言ってこないので間違っていない、はず。
「明けましておめでとうございます、シズト様」
「シズトシズト、表情を維持するのですわ」
いやだってギュスタンさんに様付で呼ばれるのなんか違和感しかないし……あ、はい。ちゃんと表情を取り繕いますとも。ギュスタンさんの新年の挨拶が終わる頃にはレヴィさんから指摘されないくらいには真面目な顔を取り繕う事ができた。
「出産が無事に終わったようで良かったよ」
「それもこれもシズト様の格別なご配慮のおかげです。ありがとうございました」
「いやいや、困ったらお互い様だから。また落ち着いた時にでも子どもたちを見に行ってもいいかな?」
「もちろんです」
「子どもたちを交えてピクニックもアリだけど…………そういうのはまだまだ先になりそうだよね。あ、サブリナさんたちは僕のお嫁さんとはあまり面識なかったよね? 紹介した方が良いかな?」
「私的な交流の時にでもすればいいのですわ」
「あ、はい」
レヴィさんに注意されている間に、背伸びをしたルシールさんが彼女のためにかがんだギュスタンさんに何やら耳打ちをしている。レヴィさんが何も言わないからきっと大した事ではないんだろう。
「他の方々がシズト様と挨拶をするためにお待ちになっていらっしゃるので僕たちは失礼させていただきます」
「え? ああ、まあ、そうだね」
もう少しくらい話をしていたかったけれどあんまり長話をしていても他の国々の人とはきちんと新年の挨拶をしなければならない。義務なのは各国の代表とだけなんだけど、それでも十を軽く超える数のお偉いさんを待たせている状況なのはあまり良くない事なのだろう。
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