【R18】恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

古堂 素央

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第22話 イけなくて*

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「聖剣の乙女。今夜も……いいか?」

 ロランからのお誘い、もとい治療依頼の耳打ちに、アメリは頬を染め頷いた。
 寝静まった頃合いを見て、眠い目をこすって部屋を出る。今夜も同部屋だったサラはぐっすり眠っているようだった。

「疲れているのにすまない」
「いえ、大丈夫です」

 魔物相手に激しく戦っていたロランの方が、よほど疲れているはずだ。
 王都から離れるにつれて、魔物の数も増えてくる。討伐依頼も難易度が上がっていて、ロランも無傷でいることが難しくなっていた。

 ここのところロランの指でイかされて、傷が癒えたら部屋に帰っていく。そんな夜をアメリは幾度も繰り返している。
 今夜のロランは足に火傷を負っていた。草むらに生息するスライム状の魔物にやられたらしい。

「すまない、数が多くて油断した」
「仕方ないですよ。服も溶かしてくるヤツでしょう? わたしの村にもよくいました」

 言いながら羽織り物を脱ぎ、うすい寝間着姿をロランに晒す。
 事務的な会話でもしていないと、いまだに恥ずかしさでどうにかなりそうなアメリだった。

「あの、今日はどうすれば?」
「そうだな、正直座ると足が痛むんだ。今日は立ったままでもいいだろうか?」

 立ちながら触れられるのは初めてのことだ。
 ロランの怪我の具合にもよるが、大抵ベッドの上で後ろからのことが多かった。
 背後から抱きすくめられて、胸を揉みしだかれる。まぶたを閉じてロランに身を任せた。
 今日の傷はことさら酷い。アメリが気持ちよくなれば、その分ロランの痛みの回復も早くなる。

「ぁん……ふっ」

 たくし上げた裾から覗く下着に、ロランの手が入り込んだ。長い指が敏感な部分に触れて、アメリの口から甘い吐息が切なくもれる。
 下着の中でうごめくロランの指の動きがとてもみだらだ。
 視覚的な刺激も相まって、気持ちよさにアメリは無意識に腰を回していた。

「……っつ!」
「勇者?」

 突然上がった苦痛の声に、アメリは我に返った。
 寄り掛かったアメリの足が、ロランの傷に当たってしまっている。慌ててロランから離れ、アメリは自分の足でしっかりと立った。

「ごめんなさいっ」
「いや、大丈夫だ。大袈裟にしてすまない」

 微妙な雰囲気のまま、ふたりは無言で先ほどと同じ姿勢を取った。
 とにかくやり遂げなければ、ロランの傷は治せない。

「……んんっ」

 触れられている場所に意識を集中するも、また傷に当たってしまわないかとそちらばかりが気になってしまう。
 先ほどから快楽の小さな波は来ているのに、いつものように絶頂には至らない。イカなければと焦れば焦るほど、至福からはどんどん遠ざかっていった。
 痛みを抱えた中で、ロランはあの手この手でアメリを気持ちよくしようとしてくれている。
 それなのにアメリはちっとも快楽を拾えなくて、不甲斐なさにじわりと涙がにじんできた。

「……ごめんなさい、わたし」

 自分の役立たずぶりに顔を覆ってしまったアメリに、ロランも動かしていた手を止めた。
 そっと顔から手をはがされ、泣き顔を見つめられる。
 むしろ泣きたいのはロランの方だろう。そう思ったら、余計アメリの瞳から涙がこぼれ落ちた。

「泣かないでくれ。女性は体調で気分も変わるものだろう? それにこんな傷を見せられて、気持ち悪く思っても仕方がない」
「そんなふうに思ってません」
「ありがとう……君はやさしいな」

 どこかさびしげに笑ったロランはアメリの乱れた寝間着を整え始めた。

「今夜はやめておこう」
「でも」
「このまま続けても君に負担がかかる」

 しかしそれではロランの傷は治らないままだ。
 明日治せたとしても、一晩中痛みにさいなまれるかと思うと放っておくなどできるわけがない。

「座れないくらい痛むんですよね? 勇者がそんな状態じゃ、わたし気になって一晩中眠れません!」

 食ってかかる勢いのアメリに、ロランは驚きで目を見開いた。
 そしてふっと表情を和らげる。

「ああ、君はそういう人だったな」
「そういう人って?」
「後先考えずに、男の部屋に単身乗り込んでくるような、ってことだ」

 聖剣の乙女の役割とはいえ、二度目は自分の意思でロランに身を預けた。
 何も言い返せないアメリを見て、ロランはすまなそうな顔をした。

「いや、君の勇気には感謝している。今こうしていられるのも、あの日君が俺の部屋に来てくれたお陰だ」

 やさしく頬を包まれて、親指の腹で涙を拭われる。
 大事にされていると勘違いしてしまいそうで、アメリは思わずロランから目を逸らした。

「ではこうしよう。もう一度だけ試してみて、駄目なら潔く諦める。そのときは君も体調を万全にするために、今夜はぐっすり眠ること。いいか?」

 頷くと、ロランは少し緊張した顔を向けてきた。

「次は違う形でやってみたい。協力してくれるか?」
「もちろん。で、わたしはどうすれば?」

 前のめりに返事をすると、なぜかロランは呆れ交じりの表情になった。

「まったく君は……もう少し人を疑うことを覚えた方がいい」
「え? だって勇者を疑ってどうするんですか?」

 ぽかんと問うと、片目を手で覆いロランは大げさにため息をついた。

「またそうやって……その無防備さが本気で心配になってくる」

 意味が分からずに首をかしげていると、ロランは壁際にあった細長い文机の上のものを無造作に片付けた。

「君はここにいてくれ」
「きゃあっ」

 いきなり脇を持ち上げられ、机の上に座らされた。
 おしりが乗ってちょうどいいくらいの幅で、アメリは壁に背を預けた状態だ。

「こ、ここで?」
「ああ、今夜は口でも試したい」

 真剣な顔で、ロランはアメリの服に手を掛けた。
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