アラサー手前だった私が男子高校生に?!

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本編

2話

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イケメンさんが帰ってしまったため、再び部屋は静かになった。
 暇すぎて天井を眺めたり、備え付けの棚をいじったりするばかり。

「ほんまに一人だとすることないな……」

 そんなふうにぼやいていたら、タイミングよくドアが開いた。

「失礼しますね~。どうでした?」

「……何がですか?」

 トコトコと入ってきた長野さんは、にこにこしてこちらをのぞき込んでくる。

「新藤(しんどう)さんがお見舞いに来られてましたから。喜ばれたでしょう?」

「あぁ……確かに。心配かけたみたいで、ほっとした顔してましたね」

「ふふっ。でしょうねぇ。新藤さん、結構な頻度で来てましたよ。いつも心配そうな顔して」

「やっぱり……。今日も“明日また来る”って言ってたし、かなり来てるんだろうとは思ってました」

「多分明日は、お父さまやお兄さまも来られると思いますよ」

「え? そうなんですか?」

「えぇ。明日は顔を出すっておっしゃってましたし。本当に、仲のいいご家族なんですね」

「ははっ、そうなんですよ、仲良いでしょう……。知らんけど」

 最後の小声までは聞こえていないのか、長野さんは楽しそうに笑った。

「ふふっ、いいですねぇ~」

 そのまま彼女はワゴンを押しながら、食事の準備に取りかかった。

「では、ご飯の準備しますね~。……と言っても、お味噌汁と重湯ですが」

「マジすっか」

 白いトレイに載った、味噌汁と重湯。
 見た瞬間に胃がキュッと縮む。

(これ……足りる?)

「マジです。でも夜はお粥になりますし、明日のお昼からは、柔らかいですけど固形も少し出ると思いますよ」

「へぇ……。てっきり、一週間くらいは食べられないのかと」

「臓器の手術があったり、意識が長く戻らなかったりしたらそうなりますけど、今回は一週間ほどで目覚められましたのでね。問題ないですよ」

「なるほど……そうなんですね」

 重湯をひと口すする。
 うん、味が……薄い。薄すぎる。

「でも、やっぱりこれだけだと物足りないですよね」

「それはもう……我慢あるのみです」

「ですよねぇ」

 長野さんが片付けを始めた頃、ふと思い出したことがあった。

「あ、あと一つ聞きたいことあるんですけど。いいですか?」

「もちろんです! 何でも聞いてください!!」

「お、おお……圧がすご……」

 声に反応して、長野さんはさらに身を乗り出してきた。

「えっと……肌荒れがひどくて。どうしたらいいでしょう?」

「!!」

 その瞬間、長野さんの目がキラキラ……いや、ギラギラと輝いた。

「任せてください!! 龍宮さんに合うケア用品、私が選んで持ってきますから!!」

 ガシッと手を握られる。

「は、はいっ……ありがとうございます……!」

「いえ! あと言いにくいんですが……その、肌荒れは食生活の乱れも原因なんです。規則正しい生活をすれば、かなり改善しますよ」

「へぇ……」

「病院では、栄養バランスしっかりしてますから!」

「なるほど……それなら体重もちょっとは落ちるだろうし、いいですね」

「そうでしょう! ここの病院食は美味しいと評判ですし、退院される頃には、けっこう落ちてると思います!」

「あぁ……これは肌も体重もどうにかなりそうですね。ありがとうございます」

「喜んでいただけてよかったです!」

 満面の笑みでそう言うと、長野さんはワゴンを押しながら、

「ではまた夕食のときに来ますね~」

「はーい」

 と軽く手を振って出ていった。

 静かになった病室で、私は重湯を見つめながらつぶやいた。

「……まぁ、痩せられるのは嬉しいけどさ。量、少なすぎん?」
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