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「……アーサー様」
はぁ……と溜息を吐く俺と、俺を黙って見つめるアーサー様。
ここはアーサー様の部屋で、時間は昼間。アーサー様に呼ばれて部屋を訪れているが、以前のような人には言えないようなことはしていない。それどころか、今ばかりはアーサー様の部屋で身体を好きなようにされる俺が、普段通りでいる。(そう思うのも、少し変な話ではあるが)
「……」
「アーサー様」
アーサー様が、珍しく小さな子供のようにションボリとした表情を浮かべた。普段のアーサー様からしてみたら珍しいことだが、俺の仕事としてはよくあることなので慣れたもの。
俺はこれから、定期的に行っている騎士団の訓練を兼ねた遠征で国を暫く出ることになっていた。国を出るといっても、はるか遠方へ出るわけでもない。それでも、アーサー様は俺が国を出ると聞けば、いつもこうしてションボリとした表情を浮かべるのだ。幼少の頃からだから、もう10年以上はこうだ。
「ギルベルト、本当に行くのかい?」
「当然です。騎士団を育成するのも俺の仕事ですし、何よりアーサー様。貴方とこの国を守る力になるんですよ」
「分かっているが……」
これだ。
また唇を尖らせて、俺が弱い表情をする。最近ではアーサー様も分かってやっているんじゃないかとすら思える。だが生憎、幼い頃から見ている俺は分かっていても心が痛んでしまうのだから仕方がない。そして毎回心を鬼にするように、自身にも叱咤するように「アーサー様」と声を強く出す。
「アーサー様、しっかりして下さい。俺は明日の朝早くには出ますので、アーサー様も勉学など怠らないようにして下さいね」
「分かった。じゃあ……」
「じゃあ?」
俺が部屋を出ようとすると、腕を掴まれた。そのままアーサー様の方へと引き寄せられる。アーサー様も力が強くなったと不意に思ってしまったが、数秒の間にもう片方の手を腰に回される。勿論、俺も倒れ込むようなことは無かったが、密着した身体でアーサー様が言った。
「帰って来たら、私にうんと奉仕してくれるね?」
「は……、~~っ!」
ちゅっ、と最後に頬に触れるだけのキスをした。ふふっ、と耳元で笑う声が遠ざかって俺の身体が自由になる。もう離れたと知られるようにパッと両手を俺に見せて、ニコリと微笑む。
「アーサー様! 俺を揶揄わないで下さい」
そう言えば、アーサー様が真面目な顔で言った。
「揶揄っていないよ。私はギルベルトを口説いているんだよ」
「ね?」とまた微笑む。きっとこの笑顔を俺なんかじゃなくて女性に向ければ良いのにと、今まで何度思ってきたことか。それでもアーサー様は、この綺麗な笑みを俺に向ける。
「じゃあ、ギルベルト。気を付けて行ってらっしゃい」
「はい、行って参ります」
そうして訓練を終えて帰って来た時。アーサー様が少し変わっていることを、この時の俺は知る由も無かった。
*******
更新しました。お気に入りほか有難うございます(^^)
団長に戻しました…! 少しずつ完結に動ければと思っておりますので、もう少しお付き合い頂けますと幸いです。もしかするとキャラ増やすかもしれません。(未定)
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
「……アーサー様」
はぁ……と溜息を吐く俺と、俺を黙って見つめるアーサー様。
ここはアーサー様の部屋で、時間は昼間。アーサー様に呼ばれて部屋を訪れているが、以前のような人には言えないようなことはしていない。それどころか、今ばかりはアーサー様の部屋で身体を好きなようにされる俺が、普段通りでいる。(そう思うのも、少し変な話ではあるが)
「……」
「アーサー様」
アーサー様が、珍しく小さな子供のようにションボリとした表情を浮かべた。普段のアーサー様からしてみたら珍しいことだが、俺の仕事としてはよくあることなので慣れたもの。
俺はこれから、定期的に行っている騎士団の訓練を兼ねた遠征で国を暫く出ることになっていた。国を出るといっても、はるか遠方へ出るわけでもない。それでも、アーサー様は俺が国を出ると聞けば、いつもこうしてションボリとした表情を浮かべるのだ。幼少の頃からだから、もう10年以上はこうだ。
「ギルベルト、本当に行くのかい?」
「当然です。騎士団を育成するのも俺の仕事ですし、何よりアーサー様。貴方とこの国を守る力になるんですよ」
「分かっているが……」
これだ。
また唇を尖らせて、俺が弱い表情をする。最近ではアーサー様も分かってやっているんじゃないかとすら思える。だが生憎、幼い頃から見ている俺は分かっていても心が痛んでしまうのだから仕方がない。そして毎回心を鬼にするように、自身にも叱咤するように「アーサー様」と声を強く出す。
「アーサー様、しっかりして下さい。俺は明日の朝早くには出ますので、アーサー様も勉学など怠らないようにして下さいね」
「分かった。じゃあ……」
「じゃあ?」
俺が部屋を出ようとすると、腕を掴まれた。そのままアーサー様の方へと引き寄せられる。アーサー様も力が強くなったと不意に思ってしまったが、数秒の間にもう片方の手を腰に回される。勿論、俺も倒れ込むようなことは無かったが、密着した身体でアーサー様が言った。
「帰って来たら、私にうんと奉仕してくれるね?」
「は……、~~っ!」
ちゅっ、と最後に頬に触れるだけのキスをした。ふふっ、と耳元で笑う声が遠ざかって俺の身体が自由になる。もう離れたと知られるようにパッと両手を俺に見せて、ニコリと微笑む。
「アーサー様! 俺を揶揄わないで下さい」
そう言えば、アーサー様が真面目な顔で言った。
「揶揄っていないよ。私はギルベルトを口説いているんだよ」
「ね?」とまた微笑む。きっとこの笑顔を俺なんかじゃなくて女性に向ければ良いのにと、今まで何度思ってきたことか。それでもアーサー様は、この綺麗な笑みを俺に向ける。
「じゃあ、ギルベルト。気を付けて行ってらっしゃい」
「はい、行って参ります」
そうして訓練を終えて帰って来た時。アーサー様が少し変わっていることを、この時の俺は知る由も無かった。
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