【完結・BL】王子は騎士団長と結婚したい!【王子×騎士団長】

彩華

文字の大きさ
37 / 75

37】【番外編】王子の作戦

しおりを挟む
37】【番外編】王子の作戦

 押して駄目なら引いてみろ。
私が一人でギルベルトを落とすにはどうしたら良い? と考えた結果だ。事実、今までは私が好きだと二人きりの時に猛アタックを続けるも実を結んではいない。丸め込むように身体の関係を持つようにはしているが、最後まで身体を繋げたことは無かった。それどころか、唇へのキスも自身の恋心に気づいた時から出来なくなった。愛を誓うような、大切な場所だ。そう簡単に自身の欲を、願望を押し付けるのは思ってしまい、情事の時はギリギリの場所か頬だった。現に、未だに挨拶なんかでギルベルトの頬にキスをするのは緊張してしまう。

おっと。話を変えよう。
そうだ、引いてみるんだ。私が少しギルベルトと距離を取ってみたら? 幸いというべきか、寂しいことではあるが、これからギルベルトが騎士団の新兵訓練で国を暫く出る予定が入っている。見送りの挨拶をした後、私はこのちょっとした作戦を頑張ってみようと試みることにした。


「アーサー様。〇様の御息女が待っておられます」

「分かった」

ギルベルトが不在になっても、私の毎日は変わらない。王子としての職務や、外交という仕事は続く。たまたま社交界や他国との交流の予定が入っていて、いつもであれば必要最低限の対応をして場を去るが今回の私は違っていた。呼ばれれば女性と話し、女性と身体を密着させダンスしたことも無かったのに、ギルベルトがいないこの時ばかりはダンスをした。内心、これもギルベルトが私に興味を持ってくれたらと思いつつ、私を見つめる女性陣が嬉しそうな表情をするので気が引けた。

「アーサー様が、踊って下さるだなんて嬉しいです」

「私なんかでお相手が務まるかどうか。どうぞ、お手柔らかに」

(そんな目を向けられても、私はギルベルトが好きなんだ……)

すまないと心の中で謝って、一通りのことを済ませる。
私がすぐに部屋に戻らなかったり、ダンスしたことで文官たちは喜んでいて、これはきっとすぐにギルベルトの耳に入るだろうと思った。

そうだ。
この時の私は、ただギルベルトが私の変化に気づいてだとか。あわよくば嫉妬してくれれば……なんて思っていたのに。

「ギルベルト様は、いつ帰って来るのだろう」

ギルベルトが居ない寂しい日々は過ぎ、場内が騒がしいと思えば騎士団が戻って来たと聞いた。喜々としている文官たちは、きっと最近の私の変化をすぐに伝えるだろう。ギルベルトも私の顔を見に来るだろうし、どんな反応をするだるだろうかと期待してしまう私がいる。

『アーサー様。最近は女性と……』

なんてもし言ったら? 
意識されていると自惚れて、ギルベルトも私のことを……を思っていたが、ギルベルトは来なかった。いつもであれば、顔くらい見せにくるのに忙しいのだろうと片付ける私。

「なら、私が会いに行けば良いだけのこと」


文官にギルベルトが帰って来たと聞いたが? と尋ねてみれば、帰っていて慰労会を騎士団で催すという。ついでに、「アーサー様のご様子もお伝えしました!」と嬉しそうだったので、私の作戦は順調だと思っていたのに。

「…………!」

私が目にしたのは、ギルベルトが私以外の男とキスする姿だった。

******
更新しました。お気に入りほか有難うございます(^^)
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

若さまは敵の常勝将軍を妻にしたい

雲丹はち
BL
年下の宿敵に戦場で一目惚れされ、気づいたらお持ち帰りされてた将軍が、一週間の時間をかけて、たっぷり溺愛される話。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

処理中です...