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37】【番外編】王子の作戦
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37】【番外編】王子の作戦
押して駄目なら引いてみろ。
私が一人でギルベルトを落とすにはどうしたら良い? と考えた結果だ。事実、今までは私が好きだと二人きりの時に猛アタックを続けるも実を結んではいない。丸め込むように身体の関係を持つようにはしているが、最後まで身体を繋げたことは無かった。それどころか、唇へのキスも自身の恋心に気づいた時から出来なくなった。愛を誓うような、大切な場所だ。そう簡単に自身の欲を、願望を押し付けるのは思ってしまい、情事の時はギリギリの場所か頬だった。現に、未だに挨拶なんかでギルベルトの頬にキスをするのは緊張してしまう。
おっと。話を変えよう。
そうだ、引いてみるんだ。私が少しギルベルトと距離を取ってみたら? 幸いというべきか、寂しいことではあるが、これからギルベルトが騎士団の新兵訓練で国を暫く出る予定が入っている。見送りの挨拶をした後、私はこのちょっとした作戦を頑張ってみようと試みることにした。
「アーサー様。〇様の御息女が待っておられます」
「分かった」
ギルベルトが不在になっても、私の毎日は変わらない。王子としての職務や、外交という仕事は続く。たまたま社交界や他国との交流の予定が入っていて、いつもであれば必要最低限の対応をして場を去るが今回の私は違っていた。呼ばれれば女性と話し、女性と身体を密着させダンスしたことも無かったのに、ギルベルトがいないこの時ばかりはダンスをした。内心、これもギルベルトが私に興味を持ってくれたらと思いつつ、私を見つめる女性陣が嬉しそうな表情をするので気が引けた。
「アーサー様が、踊って下さるだなんて嬉しいです」
「私なんかでお相手が務まるかどうか。どうぞ、お手柔らかに」
(そんな目を向けられても、私はギルベルトが好きなんだ……)
すまないと心の中で謝って、一通りのことを済ませる。
私がすぐに部屋に戻らなかったり、ダンスしたことで文官たちは喜んでいて、これはきっとすぐにギルベルトの耳に入るだろうと思った。
そうだ。
この時の私は、ただギルベルトが私の変化に気づいてだとか。あわよくば嫉妬してくれれば……なんて思っていたのに。
「ギルベルト様は、いつ帰って来るのだろう」
ギルベルトが居ない寂しい日々は過ぎ、場内が騒がしいと思えば騎士団が戻って来たと聞いた。喜々としている文官たちは、きっと最近の私の変化をすぐに伝えるだろう。ギルベルトも私の顔を見に来るだろうし、どんな反応をするだるだろうかと期待してしまう私がいる。
『アーサー様。最近は女性と……』
なんてもし言ったら?
意識されていると自惚れて、ギルベルトも私のことを……を思っていたが、ギルベルトは来なかった。いつもであれば、顔くらい見せにくるのに忙しいのだろうと片付ける私。
「なら、私が会いに行けば良いだけのこと」
文官にギルベルトが帰って来たと聞いたが? と尋ねてみれば、帰っていて慰労会を騎士団で催すという。ついでに、「アーサー様のご様子もお伝えしました!」と嬉しそうだったので、私の作戦は順調だと思っていたのに。
「…………!」
私が目にしたのは、ギルベルトが私以外の男とキスする姿だった。
******
更新しました。お気に入りほか有難うございます(^^)
押して駄目なら引いてみろ。
私が一人でギルベルトを落とすにはどうしたら良い? と考えた結果だ。事実、今までは私が好きだと二人きりの時に猛アタックを続けるも実を結んではいない。丸め込むように身体の関係を持つようにはしているが、最後まで身体を繋げたことは無かった。それどころか、唇へのキスも自身の恋心に気づいた時から出来なくなった。愛を誓うような、大切な場所だ。そう簡単に自身の欲を、願望を押し付けるのは思ってしまい、情事の時はギリギリの場所か頬だった。現に、未だに挨拶なんかでギルベルトの頬にキスをするのは緊張してしまう。
おっと。話を変えよう。
そうだ、引いてみるんだ。私が少しギルベルトと距離を取ってみたら? 幸いというべきか、寂しいことではあるが、これからギルベルトが騎士団の新兵訓練で国を暫く出る予定が入っている。見送りの挨拶をした後、私はこのちょっとした作戦を頑張ってみようと試みることにした。
「アーサー様。〇様の御息女が待っておられます」
「分かった」
ギルベルトが不在になっても、私の毎日は変わらない。王子としての職務や、外交という仕事は続く。たまたま社交界や他国との交流の予定が入っていて、いつもであれば必要最低限の対応をして場を去るが今回の私は違っていた。呼ばれれば女性と話し、女性と身体を密着させダンスしたことも無かったのに、ギルベルトがいないこの時ばかりはダンスをした。内心、これもギルベルトが私に興味を持ってくれたらと思いつつ、私を見つめる女性陣が嬉しそうな表情をするので気が引けた。
「アーサー様が、踊って下さるだなんて嬉しいです」
「私なんかでお相手が務まるかどうか。どうぞ、お手柔らかに」
(そんな目を向けられても、私はギルベルトが好きなんだ……)
すまないと心の中で謝って、一通りのことを済ませる。
私がすぐに部屋に戻らなかったり、ダンスしたことで文官たちは喜んでいて、これはきっとすぐにギルベルトの耳に入るだろうと思った。
そうだ。
この時の私は、ただギルベルトが私の変化に気づいてだとか。あわよくば嫉妬してくれれば……なんて思っていたのに。
「ギルベルト様は、いつ帰って来るのだろう」
ギルベルトが居ない寂しい日々は過ぎ、場内が騒がしいと思えば騎士団が戻って来たと聞いた。喜々としている文官たちは、きっと最近の私の変化をすぐに伝えるだろう。ギルベルトも私の顔を見に来るだろうし、どんな反応をするだるだろうかと期待してしまう私がいる。
『アーサー様。最近は女性と……』
なんてもし言ったら?
意識されていると自惚れて、ギルベルトも私のことを……を思っていたが、ギルベルトは来なかった。いつもであれば、顔くらい見せにくるのに忙しいのだろうと片付ける私。
「なら、私が会いに行けば良いだけのこと」
文官にギルベルトが帰って来たと聞いたが? と尋ねてみれば、帰っていて慰労会を騎士団で催すという。ついでに、「アーサー様のご様子もお伝えしました!」と嬉しそうだったので、私の作戦は順調だと思っていたのに。
「…………!」
私が目にしたのは、ギルベルトが私以外の男とキスする姿だった。
******
更新しました。お気に入りほか有難うございます(^^)
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