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16.休日①
しおりを挟む翌朝、待ち合わせの正門で蒼真兄と圭人先輩、真白くんの三人が話をしていた。
「おはよう、みんな」
「おはよう、凛音」
真白くんが手を振ってくれる。
「お疲れさま。よく眠れましたか?」
圭人先輩が優しく微笑む。
「はい、ぐっすり眠れました」
「今日はいい天気だな」
蒼真兄が空を見上げる。確かに、雲一つない青空が広がっていた。
「それでは、出発しましょうか」
四人で学園の門を出ると、街の賑やかさが肌で感じられた。学園の中とは全然違う、活気に満ちた雰囲気だ。
「まず、制服の仕立て屋さんに行きましょう」
圭人先輩が案内してくれる。
「学園指定の専門店があるんです。学園内のお店では扱えない、きちんとした仕立て直しをしてくれます」
「ありがとうございます」
商店街を歩いていると、多くの人とすれ違う。みんな、なぜかぼくのことをじっと見てくる気がした。
「凛音、人目を引いてるね」
真白くんが小声で言う。
「そうかな?」
「そうですよ。皆さん、振り返って見ていらっしゃいます」
圭人先輩も同意する。
「やはり、目立つ存在なんですね」
頬が熱くなった。学園の外でも、そんなに注目されるなんて思わなかった。
仕立て屋さんに着くと、店主のおじいさんが温かく迎えてくれた。
「蒼嶺学園の生徒さんですね。制服のお直しでしょうか?」
「はい。サイズが合わなくて……」
「拝見させていただきますね」
採寸をしてもらいながら、店主のおじいさんが話しかけてくる。
「この制服、お兄さんのお下がりですね」
「分かるんですか?」
「長年やっていると、分かるんです。でも、きちんとお直しすれば、ぴったりになりますよ」
「お願いします」
「1週間ほどお時間をいただきますが、よろしいでしょうか?それまでは学園に予備の制服をお借りください。学園にはこちらから連絡をしておきます」
「はい。ありがとうございます」
「蒼嶺学園の生徒さんには慣れていますから、大丈夫ですよ」
採寸が終わって店を出ると、圭人先輩が提案した。
「お疲れさまでした。少し休憩しませんか?」
「そうだね。どこか座れる場所があるといいけど」
真白くんが周りを見回す。
「あそこのカフェはいかがでしょう?」
圭人先輩が指差した先に、おしゃれなカフェがあった。
「素敵なお店ですね」
「ここの紅茶が美味しいんです。学園内のカフェとは違った雰囲気で、気分転換にもなります」
四人でカフェに入ると、落ち着いた雰囲気の店内に、ゆったりとしたジャズが流れていた。
「いらっしゃいませ」
ウェイトレスの女性が案内してくれた席は、窓際の4人テーブル。外の景色も見えて、とても居心地が良い。
「何になさいますか?」
「僕、アイスティーをお願いします」
「私も同じもので」
真白くんが続く。
「凛音くんは?」
「えっと……」
メニューを見ると、色々な種類の紅茶やコーヒーが載っている。どれにしようか迷ってしまった。
「迷っているなら、ここのアールグレイがおすすめです」
圭人先輩が教えてくれる。
「香りがとても良くて、初めての方にも飲みやすいと思います」
「じゃあ、それをお願いします」
「俺はコーヒーで」
蒼真兄が最後に注文した。
「かしこまりました」
ウェイトレスが去ってから、圭人先輩が話を始めた。
「凛音くん、街の印象はいかがですか?」
「とても賑やかで楽しいです。学園とは全然違う雰囲気で……」
「そうですね。私も時々、気分転換に街に出ます」
「圭人先輩は、よくここに来られるんですか?」
「ええ。読書をしたり、考え事をしたり」
「一人で?」
「はい。一人の時間も大切ですから」
そんな時間を過ごしている圭人先輩を想像すると、なんだか大人っぽくて素敵だった。
「でも、今日のように誰かと一緒に来る方が楽しいですね」
圭人先輩がぼくを見つめる。その視線に、頬が熱くなった。
「お待たせいたしました」
飲み物が運ばれてきた。アールグレイの香りが、とても上品で心地よい。
「美味しい……」
「気に入っていただけて良かったです」
圭人先輩が嬉しそうに微笑む。
「凛音、今度は一緒に本屋さんに行かない?」
真白くんが提案する。
「新しい本を探したいんだ」
「いいね。どんな本を探してるの?」
「詩集とか、美しい言葉が載ってる本」
「真白くんも文学が好きなんだね」
「うん。凛音と話してると、もっと色々な本を読みたくなるんだ」
真白くんの言葉に、心が温かくなった。
「俺も本は好きだ」
蒼真兄が口を挟む。
「学園の図書室にも、いい本がたくさんある」
「蒼真兄はどんな本を読むの?」
「歴史小説とか、伝記とか」
「真面目な本ばかりですね」
圭人先輩が少し笑う。
「私は推理小説も好きです」
「推理小説?」
「論理的に謎を解いていく過程が面白くて」
確かに、圭人先輩らしい趣味だと思った。
「今度、おすすめの本を教えてください」
「ぜひ。凛音くんになら、きっと気に入ってもらえる本があります」
紅茶を飲みながら、四人でのんびりと会話を楽しんだ。こんなふうに、学園の外で過ごす時間も良いものだ。
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