平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬

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17.休日②

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「そろそろ本屋さんに行きましょうか」

 圭人先輩が提案する。

「近くに大きな書店があります」

 カフェを出て商店街を歩いていると、向こうから見覚えのある人影が歩いてきた。

「あれ?」

 よく見ると、それは東雲先輩だった。カジュアルな服装で、一人で歩いている。

「東雲先輩?」

 声をかけると、東雲先輩が振り返った。

「おっ、凛音じゃん!それに会長と副会長、真白も」

「東雲先輩、お疲れさまです」

「お疲れさま。みんなでお出かけ?」

「制服の仕立て直しに来てたんです」

「あー、そうそう。サイズが合ってなかったもんね」

 東雲先輩はにこやかに笑う。

「俺も買い物に来てたんだ。偶然だね」

「何の買い物ですか?」

「服とか趣味の本とか。学園内のお店じゃ手に入らないものもあるからさ」

 東雲先輩らしくて納得した。

「良かったら、一緒に行動しない?」

 東雲先輩が提案する。

「俺も本屋に行く予定だったし」

 蒼真兄と圭人先輩が、微妙な表情を見せた。

「でも、お忙しいのでは?」

 圭人先輩が遠回しに断ろうとする。

「全然忙しくないよ。むしろ、一人だと退屈だったから、ちょうど良かった」

 東雲先輩は全然空気を読まずに、にこにこしている。

「凛音はどう思う?」

「え……」

 急に振られて、困ってしまった。東雲先輩と一緒にいるのは楽しいけれど、蒼真兄と圭人先輩の表情を見ると、複雑な気持ちになる。

「別に、構わないけど……」

「やった!じゃあ、みんなで本屋に行こう」

 東雲先輩が嬉しそうに手を叩く。

「あ、その前に……」

 東雲先輩がぼくの方に近づいてきた。

「凛音、今日もとても可愛いね」

「え?」

「その服、似合ってる。私服もいいものだ」

 またしても直球な褒め言葉に、顔が真っ赤になった。

「東雲先輩……」

「照れた顔もまた可愛い」

「東雲」

 圭人先輩が割り込む。

「あまり大きな声で話すと、周りの迷惑になります」

「あー、そうか。ごめんごめん」

 東雲先輩は全然悪びれた様子もない。

 五人で本屋に向かう途中、東雲先輩がぼくの隣を歩いた。

「凛音、昨日の夜のパーティーどうだった?」

「とても楽しかったです。料理も美味しくて……」

「俺も楽しかった。特に、君を見てる時間が一番楽しかったかな」

「東雲先輩……」

「あ、また言っちゃった。でも本当だから仕方ない」

 東雲先輩の正直すぎる発言に、いつも戸惑ってしまう。でも、嫌な気はしない。

「そういえば、夏目はどうして来なかったの?」

「用事があるって言ってました」

「そっか。あいつ、最近なんか元気ないよね」

「そうですか?」

「うん。特に、凛音のことが話題に上ると、黙り込んじゃうし」

 東雲先輩の観察力は、意外と鋭い。

「夏目くんのこと、心配です」

「優しいね、凛音は。でも、あいつのことだから、きっと大丈夫だよ」

「そうでしょうか……」

「うん。それより、今度俺と二人でお出かけしない?」

「え?」

「今日みたいに、街をぶらぶらして、美味しいものを食べて」

「でも……」

「だめかな?」

 東雲先輩が少し不安そうな顔をする。その表情を見ると、断れなくなってしまう。

「今度、時間があるときに……」

「やった!約束だよ」

 東雲先輩が嬉しそうに笑った。

 本屋に着くと、想像以上に大きな店だった。何階もあって、ジャンル別に分かれている。

「すごい……」

「大きな本屋ですね」

 真白くんも驚いている。

「ここなら、きっと欲しい本が見つかります」

 圭人先輩が案内してくれる。

「文学書は3階、詩集は4階にあります」

「じゃあ、まず3階に行ってみよう」

 五人で3階に上がると、文学書がずらりと並んでいる。古典から現代小説まで、本当にたくさんの本があった。

「何から見ようかな」

「迷いますね」

 真白くんが本棚を見上げる。

「凛音くんは、どんな本をお探しですか?」

 圭人先輩が聞いてくる。

「美しい表現の本を読んでみたくて……」

「それでしたら、こちらがおすすめです」

 圭人先輩が一冊の本を取り出した。

「詩的な表現が美しい小説です。きっと気に入っていただけると思います」

「ありがとうございます」

 本を受け取ると、圭人先輩の指が軽く触れた。その瞬間、胸がどきんとした。

「俺のおすすめもあるよ」

 東雲先輩が別の本を持ってきた。

「この作家の描写、すごく綺麗なんだ」

「東雲先輩も読書するんですね」

「意外?」

「少し……」

「まあ、見た目は軽そうだからね。でも結構本は好きなんだ」

 東雲先輩のそんな一面を知れて、少し嬉しくなった。

「これはどうだ?」

 蒼真兄も本を持ってきた。

「昔から愛されている名作だ。一度は読んでおいた方がいい」

「ありがとう、蒼真兄」

「僕のおすすめも見て」

 真白くんも詩集を持ってきた。

「この詩人の言葉、とっても綺麗なんだよ」

 みんながそれぞれおすすめの本を教えてくれて、選ぶのに困ってしまった。

「全部読んでみたいけど、今日は一冊だけにしようかな」

「そうですね。また今度、一緒に来ましょう」

 圭人先輩が提案する。

「その時は、別のジャンルの本も見てみませんか?」

「はい、ぜひ」

 結局、圭人先輩がおすすめしてくれた本を購入することにした。他の本も、また今度読んでみよう。

 レジで会計を済ませようとすると、圭人先輩が財布を出した。

「私が払います」

「でも……」

「お礼です。昨日の庭園でのお時間、とても楽しかったので」

「ありがとうございます」

 本屋を出ると、もうお昼の時間になっていた。

「お腹が空きましたね」

「昼食にしましょうか」

「どこか良いお店を知ってますか?」

「この近くに、美味しいレストランがあります」

 圭人先輩が案内してくれることになった。

「和食のお店ですが、雰囲気も良くて、きっと気に入っていただけると思います」

 五人でレストランに向かいながら、ぼくは今日という日を噛みしめていた。

 蒼真兄の優しさ。圭人先輩の上品な気遣い。真白くんの温かい友情。そして、東雲先輩の率直な親しみやすさ。

 みんなそれぞれ違うけれど、ぼくのことを大切に思ってくれている。

 でも、心のどこかで、夏目くんのことが気になっていた。

 今頃、何をしているんだろう。

 本当に用事があるだけなのか、それとも……。

 そんなことを考えながら、街での休日は続いていた。

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