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26.学園祭当日
しおりを挟む学園祭当日の朝は、いつもより早く目が覚めた。
窓の外を見ると、快晴の空が広がっている。絶好の学園祭日和だった。
「今日だな」
隣のベッドで夏目くんも起き上がっていた。
「うん……緊張する」
「大丈夫だ。お前なら絶対にうまくいく」
夏目くんの励ましの言葉に、少し心が軽くなった。
朝食の時間、食堂はいつもより賑やかだった。学園祭を楽しみにしている生徒たちの興奮が伝わってくる。
「凛音、今日はいよいよだね」
真白くんが嬉しそうに話しかけてくる。
「うん。みんなで頑張ろう」
「僕、今日のことをずっと楽しみにしてたんだ」
真白くんの純粋な笑顔を見ていると、こちらも自然と笑顔になった。
「陽翔はどう?」
「俺も楽しみだよ。凛音の晴れ姿を見られるし」
陽翔が屈託なく笑う。でも、その笑顔の奥に少し複雑な感情があるのを感じた。
朝食を終えて、1年A組の教室に向かう。廊下では、他のクラスの生徒たちも慌ただしく準備をしていた。
「おはよう、凛音」
蒼真兄が声をかけてきた。
「蒼真兄、おはよう」
「今日は……頑張れよ」
兄の表情が少し複雑だった。
「でも、無理はするな。疲れたら休むんだ」
「うん、分かった」
「それから……」
兄が声を小さくした。
「変な奴に絡まれたら、すぐに俺を呼べ」
「大丈夫だよ。みんながいるから」
「みんなって……」
兄の表情がさらに複雑になった。
教室に着くと、既にクラスメイトたちが装飾の最終確認をしていた。
「凛音、おはよう!」
「今日はいよいよだね」
「メイド服、準備できてる?」
みんなの興奮が伝わってくる。
「それじゃあ、着替えようか」
更衣室でメイド服に着替えると、鏡に映った自分の姿に改めて驚いた。このまえよりも、なぜかより一層可愛く見える。きっと、特別な日だからだろう。
教室に戻ると、またしてもクラス全体が静まり返った。
「やっぱり天使だ……」
「これは本当にやばい」
「絶対に大成功する」
みんなの反応に、頬が熱くなった。
「凛音、今日は頑張ろうね」
「あんまり無理するなよ」
陽翔と夏目くんが執事姿で現れた。
「……!二人ともかっこいいよ…!」
いつもと違う姿に驚いたけれど、それ以上に、胸の奥がふわっと熱くなるのを感じた。
夏目くんは普段よりも少しキリッとしていて、背筋を伸ばした立ち姿が様になっているし、陽翔もいつもの柔らかい雰囲気はそのままに、どこか品のある微笑みを浮かべていた。
午前9時、ついに学園祭が開始された。
「ただ今より、蒼嶺学園祭を開催いたします!」
校内アナウンスが響くと、校舎全体が活気に包まれた。
1年A組のメイド執事喫茶『Café Bleu』も開店準備完了。ぼくがメイド、数名がキッチン担当で、他の男子生徒たちが執事という配役だった。真白くんはキッチン担当ですでに三角巾とエプロン姿のまま、手際よくオムライスの仕込みを進めていた。
「それでは、オープンします」
教室の扉を開けた瞬間——
「うわあああ!」
「本当にいた!」
「可愛すぎる!」
廊下に並んでいた大勢の生徒たちが一斉に歓声を上げた。その列は、廊下の向こうまで続いている。
「こんなに……」
「すごいじゃん、凛音」
クラスメイトたちも興奮している。
最初のお客さんは、2年生の先輩たちだった。
「いらっしゃいませ、ご主人様」
メイドらしく挨拶すると、先輩たちが固まった。
「あ、ああ……」
「可愛い……」
「写真、撮ってもいいかな?」
「写真撮影は禁止です」
クラスメイトの執事たちがフォローしてくれる。
注文を取って、飲み物を運ぶ。簡単な作業だけど、みんなの視線を感じて緊張した。
「ありがとう、凛音くん」
「とても美味しかったです」
お客さんたちの笑顔を見ていると、だんだん楽しくなってきた。
午前10時頃、圭人先輩が現れた。
「いらっしゃいませ」
「凛音くん……」
圭人先輩がぼくを見つめる。その瞳に、いつもより強い光が宿っていた。
「とても美しいです」
「ありがとうございます」
圭人先輩は紅茶を注文して、じっとこちらを見つめていた。他のお客さんとは明らかに違う、特別な視線だった。
「凛音くん」
「はい」
「今度、二人きりでお話しする時間をいただけませんか?」
「え?」
「今日の後で構いません。お伝えしたいことがあります」
圭人先輩の真剣な表情に、胸がどきどきした。
「はい……」
「ありがとうございます」
圭人先輩が去った後、なぜか胸がそわそわした。
午前11時頃、今度は東雲先輩が現れた。
「よう、凛音」
「東雲先輩、いらっしゃいませ」
「メイド姿、本当に可愛いね」
東雲先輩がにっこりと笑う。
「でも、風紀委員長としては大変だよ」
「大変?」
「だって、みんな凛音に夢中で、他のことが手につかなくなってる」
確かに、教室の外では長い列ができていて、みんな興奮気味だった。
「大丈夫ですか?」
「今のところはね。でも、午後はもっと人が来るかも」
東雲先輩が苦笑いを浮かべる。
「何かあったら、すぐに俺を呼んで」
「はい」
午後になると、予想通り人がさらに増えた。教室は満席状態で、廊下にも長い列ができている。
「すごいね、これ」
陽翔が驚いている。
「予想以上だ」
夏目くんも珍しく感心していた。
そんな中、水瀬先輩が現れた。
「どうだ、調子は?」
「おかげさまで、大盛況です」
「そうか。でも、無理するなよ」
水瀬先輩が心配そうに見つめる。
「疲れたら、私に言え。休憩時間を作ってやる」
「ありがとうございます」
水瀬先輩の優しさに、心が温かくなった。
午後2時頃、朝比奈先生も顔を出してくれた。
「凛音くん、お疲れさまです」
「朝比奈先生」
「とても……その、頑張っていますね」
先生の顔が少し赤くなっている。
「ありがとうございます」
「あの……」
先生が何かを言いかけた時、教室がざわめいた。
「すみません、満席です」
入り口で、クラスメイトが困った声を上げている。
「でも、どうしても見たいんです」
「お願いします」
外からの声が聞こえる。
「どうしよう……」
「私が対応します」
水瀬先輩が立ち上がった。
「実行委員として、整理しましょう」
水瀬先輩が外に出ていくと、すぐに騒ぎが収まった。さすが実行委員の威力だ。
「助かりました」
「当然だ。私の可愛い弟を守るのは当たり前だからな」
水瀬先輩の言葉に、クラスメイトたちがどよめいた。
「水瀬先輩、凛音のこと気に入ってるんだ」
「姉貴みたいな感じで可愛がってくれてる」
午後3時頃、少し休憩時間をもらった。
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