意味のないスピンオフな話

韋虹姫 響華

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メインストーリーな話

◆困惑◇

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───ナキアーム...デストロイマッドネス───

 パワータイプの装甲を纏った、サタナキアと対峙するフロンティア。剛腕なアームの一撃を正面で掌を出し受け止め、軽々と真後ろへ投げる。着地してすぐに、方向転換からの飛び蹴りで向かってくるサタナキア。
 真横に手を伸ばし、翼を砕いた魔槍を呼び寄せるとそのまま振り向き様の薙ぎ払いで、サタナキアの蹴りを跳ね返した。同時に反撃の乱れ突きを繰り出し、避けるサタナキアとの距離を詰めていった。

「どうしましたか?鎧を変身させる能力は、ただの飾りですか?それとも────」
「キッ、ィィ……。お喋りの余裕がッッ!!あるんですねぇ!!!!」

 アッパーで槍を吹き飛ばし、肩を入れて肘部のバーニアを点火させて噴射した蒸気を浴びせる。視界を保つために後退したフロンティアを追う、バーニアでドライブのかかったコークスクリューが直撃する。
 名付けて“ナキアクション・デストロイヤー”と、叫びながら思いっきりフロンティアを殴り飛ばした。衝撃に逆らうことなく、建物の中に突っ込んだ。こんな程度で、傷一つも付かないことはボニーとの戦いで学習済みのサタナキアは、後を追う。

 フロンティアが突っ込んでいった建物は、データベース用のパソコンが置かれていた。サタナキアは、モニターに映っているタイトルを見て動きを止めた。

(ひょっとすると、アンリードの弱点がここに……?)

 パソコンからデータの抜き出しをしたいが、目の前には瓦礫の中から立ち上がり、肩に着いた埃を払っているフロンティアが立っている。再び、構えるサタナキア。手を一瞬後ろに回して手の甲にある、蜘蛛型ロボを切り離し地面に落下させた。
 吹っ飛んできたフロンティアと取っ組み合いになり、外へと飛び出す形で格闘戦が始まった。隙を極力消す構えで、ジャブを仕掛けるフロンティア。対して、間合いを詰められれば不利になると見たサタナキアは、これを大きく避けて距離を置こうとする。

「────ッ痛ゥゥ!?」
「ん?」

 ここに来てサタナキアのみぞおちの傷が開く。体勢を崩して、尻もちを軽くつきバーニアを噴射して大転倒だけは回避するが、地面に倒れてしまった。

「あぐッ!?ゥゥアアァァ────、ァハッ!!??」

 のたうち回りながら、ここまでの無理が祟ったサタナキアが苦しむ様を見て、フロンティアはトドメを刺さずに硬直して見つめていた。何故、手が出せないのかフロンティアは目線を動かなくなった腕に向ける。ピクリとも動かないのは、腕だけではない。
 全身がサタナキアの方に進むことを拒絶するかのように、動くこととを許されていない。フロンティアは、不意に思い出していた。ルーティンから知らされたを────。

記憶アレとは、重ならない……はず……?なのに、何故────!?」
「クッ……、ハァ……ハァ……ハァ……」

 困惑している間に、サタナキアは立ち上がりアームのドライブを三倍に引き上げて、フロンティアに再度コークスクリューを向けてきた。前には進めないが、踏み止まることが出来るフロンティアは、連撃を耐えた。しかし、受けた傷が治らない。
 サタナキアはこれが好機と踏み、傷の傷みを顧みずに更に強い出力で大きな一撃を当てようと、体を捻った。がその時、フロンティアの隣に紅い影が降り立った。影の正体はレッドヒール、アクセルターンでサタナキアの拳の起動を逸らし、仰け反ったことでガラ空きになった胸部にアクセルターンの二回転以降の連脚撃を当てていく。
 激し過ぎるダメージを受けた、サタナキアの装甲は元の形態に戻りながら転がっていき、変身音声から聴こえた形態の名前を聴いたレッドヒールは嘲笑うように言った。

「何ィ?ネイキッドアームドって?つまりは、見た目だけで裸一貫ってことぉ?そんなふざけたオモチャ着けてないと、表にも出て来れないヤツにヒールのお友達は殺らせないよ?大丈夫フロンティア?」

 ようやく動けるようになったフロンティアに寄り添い、顔を覗き込むレッドヒール。ニコッと笑顔を向けると、這いつくばっているサタナキアの方に無感情な視線を向けた。
 立ち上がろうとして、レッドヒールが痛恨となって開ききった傷口から、壮烈な痛みが全身に走り叫びにならない声を発して悶えていた。レッドヒールは、そんなサタナキアの肩にヒールを引っ掛けて仰向けにすると、馬乗りになるようにジャンプしてのしかかりをした。

「へぇ~♪アナタ、綺麗な血の色してるのね♪」

 のしかかった圧迫で、腹部から噴き出した血を見て楽しそうにそう言うと、呼吸で体を揺らしているサタナキアの顔を覗き込んだ。そして、痛みを感じなくなるいい方法があると言って、拳を高く上げた。息をするのもやっとなサタナキアは、怪異である以前に元人間である故に命の危機を感じて、恐怖心に支配された。


アァァァァァァァァァァァァァ────────────ッッッ!!!!!!!


 凡そ、人の出せる声ではない。咽び声が反響する。
 薄らと浮き出ている肋骨が幾つか砕かれ、声を出せなくなる。胸も容赦なく殴られて、内出血を起こしながらも、その脂肪がクッションとなり肺だけ潰されずに済んでいる。
 声が出せなくなったことをいい事に、傷口に親指以外を刺し込むレッドヒール。その味方には決して見せない残忍さを剥き出しにして、サタナキアを罵倒しながらグチャグチャと水音を立てて、指を押し込んだ。

「こんな身体でヒール達に喧嘩売ろうって、死にてぇのかよこのアマッ!?アァン!?大体、変身解除したその服装はなんだよッ?男ども誘ったメスの格好しやがってよッ!!ここは戦場であって、メスガキの遊び場じゃねぇんだよッッ!!!!エェン!?」

 手を引き抜き、手に着いた血を舐め取り喉を鳴らして飲み干すレッドヒール。
 罵倒中に変身が解けたことで、青褐色の肌が露出したパーカー姿に戻っていたサタナキア。胸ぐら掴まれ、パーカーからあざとく飛び出している胸を引っぱたき、頭突きを数回喰らわせてから立ち上がった。
 そして、トドメを刺すために踵を空高く上げるが、そこへフロンティアが割り込んでレッドヒールを止めた。その外見に、さっきまでの傷はなく完全に再生していた。それだけなく、冷静さと冷血な声まで復活していた。散々痛めつけられて、両手脚がだらしなく伸び切って無防備となったサタナキアを見下ろし、助けたわけではないことを告げる。

「この世界の行く末を見届け、共に滅んでいただきます。その前に、恐怖を植え付けてしまったことは、お詫びいたしますが。貴女はアンリードには勝てない、絶対に───」
「そういうこと♪分かったら、二度とヒール達の前に現れないでね♪メ・ス・ガ・キッ♪────フンッ!!」

 去り際にも、本性を表に出すように嘲笑いながらサタナキアのシッポを踏み躙った。そして、再び肩に脚をかけてうつ伏せに転がして、踊りながらフロンティアの隣まで駆けていった。

 四肢に力が入らない。指の一本も動かせないサタナキアの前に、小さな影が近付いてきた。それは、フロンティアの反撃を受ける前に切り離した蜘蛛型ロボだった。蜘蛛型ロボは、サーバーからアンリードに関するデータを抜き出し、自動送信で夏蝶火達の居た拠点へ送られるように手筈を整えてもらった。
 その動作を維持するためには、サタナキアの状態を保つ必要があった。レッドヒールの痛ぶりつけにも耐えて、ロボが戻ってきたのを確認し暁咲に戻って意識を手放した。

 やがて、久遠を取り逃した燈火達に発見され合流後に医務室へ運ばれ、すぐに集中治療が行われた。
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