SとKのEscape

Neu(ノイ)

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一章:SとK

現実逃避 12

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この手の話は苦手だ。
あまりしたくない。

「好きって、感情が、よく解らなくて」

呼吸を落ち着かせてから、視線をあちこちに動かしながら答えとも言えないような答えを返した。

「本当に、そうですか? 僕には、河東先生との関係が、よく解りません。好きでも、付き合ってもいないのに、ただ幼馴染みというだけで、こうやって何年も面倒をみる関係が、あるんでしょうか?」

席を立ち、前のめりになった継生に、がっ、と両肩を掴まれ、目と目ががっちりとぶつかった。
僕は目を逸らしたかったのだが、有無を言わせない雰囲気が漂っていて、出来なかった。
継生の大きな瞳を見詰める。

「た、確かに。端から見れば可笑しな関係だと、解っては、います。いつまでもサン君に、迷惑は掛けられ、ませんし。ですが、それと好き云々は関係ないでしょう?」

一度目線を落としてから、おずおずと継生を見詰め直す。

「関係、あると思いますよ。そんなに無防備に、何もかもを河東先生に預けられるのは、何故ですか? 僕じゃ、駄目なんですか?」

真剣な問い掛けに答えようとした。
頼れるのがサンしかいないのだと、向かい側の席から此方に移動する継生に、そう言おうとしたのだ。

「ぇ? つ、ぐな……先生?」

その言葉は、頭が真っ白になり何処かに飛んでしまった。
僕は、継生に抱き締められていた。

「こんなに好きなのに、僕では駄目なんですか? 僕も精一杯貴方を守ります。河東先生じゃなく、僕を見て下さい」

耳元を擽る言葉の意味を考えようとして、頭の中で何かが弾けた。
頭がガンガンと痛む。
何も考えたくないと拒否反応が起こった。

「す、好きって。僕も先生も、男です、よ」
「それでも、好きなんです。愛しているんです」

どうにか口を吐いた言葉は、みっともなく掠れていた。
返された継生の台詞が耳に入ると同時に、僕の視線は反転した。
継生に押し倒されたようだ。
背中が床に着いている。
継生の顔が目の前にあった。
そこまで理解して、僕の頭は機能しなくなる。
辛うじて継生を突き飛ばし、頭を抱え俯せになる。
頭が痛くて堪らない。
意味を解りたくない。
何も考えたくなかった。


 うああぁぁ、と頭を押さえ叫ぶ。
次第に呼吸が上手く出来なくなる。
ひっひっ、と息を吸っても吸っても苦しい。
僕は過呼吸を起こしているようだった。
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