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第149話 取り引き
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オルガ達を先に4次元へと帰し、セムネイル達はソクド達の事情を聞いていた。
「俺から説明するぜ。 俺達はAランク冒険者パーティーだが、実は……今は雲行きが良くないんだ。 セムネイルさんが捕まえてくれた、キンって奴なんだが……俺達のパーティーに所属していた時に犯罪を犯してな。 強盗をしたんだ。 ……最悪な事にこの街で一番の有力者の貴族様から」
ソクドの話を聞き、セムネイルは眉をひそめる。 そして、ハヤはセムネイルが憎っくきキンを捕まえたと聞き驚いた。
「待て、仮にそのキンが犯罪を犯したとしてもそれはソイツの問題だろ? 何故、ソクド達のパーティーに関係するんだ?」
「そ、それは私が説明……します。 キンがその時に捕まらなかったのは、私達を売ったからです。 正確には……私を」
「犯罪を見逃す代わりに、同じパーティーのハヤを差し出せって事か……糞だなその貴族も」
セムネイルの苛立ちにハヤは身体を震わせる。
「だが、お前の兄は差し出さなかった。 だから、代わりに借金を背負わされたんだな? ソクド」
「そうだ。 ハヤを差し出すか、大金貨10枚を払えと言われている。 期日までに用意出来なければ、ハヤは連れて行かれ……俺達は奴隷堕ちだ」
「なるほどな……だから、依頼を達成させるのに必死だったと?」
セムネイルに見られたハヤは震え、ソクドの影に隠れた。
「ご、ごめんなさい……本当にごめんなさい」
「はぁ……もう怒ってはいない。 とりあえずだ、ソクド」
「な、何だセムネイルさん」
セムネイルは頭を掻きながら立ち上がった。 そして、4次元から金貨を千枚取り出しソクドの前に山と積んだ。
「なっ?!」 「金貨!? い、いったい何処から……」
「これは取引だ。 返済は何時でも構わん。 ただし! 返済が出来なければ……その時は俺のパーティーの傘下に入ってもらう。 いいな?」
ソクドとハヤは見つめ合い、何を言われたのかを脳内で反芻する。 しかし、幾ら考えてもソクド達には何のデメリットも無い取引にしか思えなかった。
「はぁ……セムネイルは本当に甘いんだから」
「まぁまぁ、貴方様らしくて私は凄く好きです♡」
「私も……優しいセムネイル様、大好きです♡」
「ん? まだ話終わらないのか? 俺、暇だぞー」
後ろから妻達の話し声が聞こえ、セムネイルは少し頬を赤くするが、これは取引と称したセムネイルなりの気遣いだ。
施されたのではなく、取引だと仲間に言えば要らぬトラブルにもならないだろうとセムネイルは考えていた。
「わ、分かった。 その取引、慎んで受けるぜセムネイルの旦那!」
「本当に本当にすみませんでした! 優しくしてくれた亜人の人達にも……凄く酷い事を言ったし、やってしまいました。 本当に……ごめんなさい」
ソクドは腰袋に金貨を詰め込み、ハヤはひたすらにセムネイルへと頭を下げ続けた。
「もう良い。 はぁ~……疲れた。 じゃあ、俺達は数日この洞窟に居るからな。 もし、返済でその糞貴族と揉めたらギルドに顔を出した時に言え。 直ぐに殺してやる」
セムネイルは妻達と共に4次元の扉へと向かう。
「あはは……貴族を殺すとか、本当にセムネイルの旦那ならやりそうだな。 本当にありがとう、瞬足の前足はセムネイルの旦那達の手足に何時でもなる。 何でも言ってくれ!」
セムネイルは振り返らずに手を振って応えた。
そして、セムネイル達は4次元へと消え残された兄妹はようやく抱き合って再会を喜ぶのであった。
「馬鹿野郎が……。 でも、また会えてどんなに嬉しかったか」
「ごめんなさい兄上。 皆がこの依頼を達成させたら、借金返済の足しになるって……」
「そうか……。 よし、3人を洞窟の外に出して埋葬してやろう」
「うん! その後は、皆で糞貴族の所に行って借金返済しよう!」
セムネイルの言葉遣いを真似する妹を見て、ソクドは苦笑いをするのであった。
「俺から説明するぜ。 俺達はAランク冒険者パーティーだが、実は……今は雲行きが良くないんだ。 セムネイルさんが捕まえてくれた、キンって奴なんだが……俺達のパーティーに所属していた時に犯罪を犯してな。 強盗をしたんだ。 ……最悪な事にこの街で一番の有力者の貴族様から」
ソクドの話を聞き、セムネイルは眉をひそめる。 そして、ハヤはセムネイルが憎っくきキンを捕まえたと聞き驚いた。
「待て、仮にそのキンが犯罪を犯したとしてもそれはソイツの問題だろ? 何故、ソクド達のパーティーに関係するんだ?」
「そ、それは私が説明……します。 キンがその時に捕まらなかったのは、私達を売ったからです。 正確には……私を」
「犯罪を見逃す代わりに、同じパーティーのハヤを差し出せって事か……糞だなその貴族も」
セムネイルの苛立ちにハヤは身体を震わせる。
「だが、お前の兄は差し出さなかった。 だから、代わりに借金を背負わされたんだな? ソクド」
「そうだ。 ハヤを差し出すか、大金貨10枚を払えと言われている。 期日までに用意出来なければ、ハヤは連れて行かれ……俺達は奴隷堕ちだ」
「なるほどな……だから、依頼を達成させるのに必死だったと?」
セムネイルに見られたハヤは震え、ソクドの影に隠れた。
「ご、ごめんなさい……本当にごめんなさい」
「はぁ……もう怒ってはいない。 とりあえずだ、ソクド」
「な、何だセムネイルさん」
セムネイルは頭を掻きながら立ち上がった。 そして、4次元から金貨を千枚取り出しソクドの前に山と積んだ。
「なっ?!」 「金貨!? い、いったい何処から……」
「これは取引だ。 返済は何時でも構わん。 ただし! 返済が出来なければ……その時は俺のパーティーの傘下に入ってもらう。 いいな?」
ソクドとハヤは見つめ合い、何を言われたのかを脳内で反芻する。 しかし、幾ら考えてもソクド達には何のデメリットも無い取引にしか思えなかった。
「はぁ……セムネイルは本当に甘いんだから」
「まぁまぁ、貴方様らしくて私は凄く好きです♡」
「私も……優しいセムネイル様、大好きです♡」
「ん? まだ話終わらないのか? 俺、暇だぞー」
後ろから妻達の話し声が聞こえ、セムネイルは少し頬を赤くするが、これは取引と称したセムネイルなりの気遣いだ。
施されたのではなく、取引だと仲間に言えば要らぬトラブルにもならないだろうとセムネイルは考えていた。
「わ、分かった。 その取引、慎んで受けるぜセムネイルの旦那!」
「本当に本当にすみませんでした! 優しくしてくれた亜人の人達にも……凄く酷い事を言ったし、やってしまいました。 本当に……ごめんなさい」
ソクドは腰袋に金貨を詰め込み、ハヤはひたすらにセムネイルへと頭を下げ続けた。
「もう良い。 はぁ~……疲れた。 じゃあ、俺達は数日この洞窟に居るからな。 もし、返済でその糞貴族と揉めたらギルドに顔を出した時に言え。 直ぐに殺してやる」
セムネイルは妻達と共に4次元の扉へと向かう。
「あはは……貴族を殺すとか、本当にセムネイルの旦那ならやりそうだな。 本当にありがとう、瞬足の前足はセムネイルの旦那達の手足に何時でもなる。 何でも言ってくれ!」
セムネイルは振り返らずに手を振って応えた。
そして、セムネイル達は4次元へと消え残された兄妹はようやく抱き合って再会を喜ぶのであった。
「馬鹿野郎が……。 でも、また会えてどんなに嬉しかったか」
「ごめんなさい兄上。 皆がこの依頼を達成させたら、借金返済の足しになるって……」
「そうか……。 よし、3人を洞窟の外に出して埋葬してやろう」
「うん! その後は、皆で糞貴族の所に行って借金返済しよう!」
セムネイルの言葉遣いを真似する妹を見て、ソクドは苦笑いをするのであった。
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