175 / 307
第174話 ソルバと不穏
しおりを挟む
「おはよう、ギルマスは居るか?」
「おはようございます、直ぐに呼んで参りますので少々お待ち下さい」
セムネイルは朝を迎え、妻達に一時の別れを告げた後、魔王の花束のメンバーとハヤを連れて冒険者ギルドを訪れていた。
受付嬢のリポンは、ギルドマスターソルバを呼びに席を立った。
「あ、あの……セムネイル様。 兄上や仲間の皆を探しに行ってきても良いですか?」
「ん? 当たり前だろハヤ。 別に俺の妻になったらずっと4次元に居ないといけない訳じゃないんだソクド達の所に行ってこい。 もし、4次元に帰る時は指輪を使うんだぞ?」
ハヤはセムネイルに頭を撫でられ、耳まで赤く染める。
「ひゃ、ひゃい……ありがとうございます。 じゃあ、行ってきます。 セムネイル様達もダンジョン攻略気を付けて下さいね」
「勿論だ。 夜には4次元の家に戻るから、またその時にな」
「くー! ハヤちゃんはとっても可愛いですね。 でも、良いですか? 何か有れば直ぐに4次元に逃げるんですよ?」
「ハヤさん、明日の朝は一緒に朝ご飯作りましょうね」
「おう! ハヤまたな! 晩飯に竜の肉が食えるから楽しみにしてろよー!」
「そうね、竜の肉を食べたら他の肉は食べれないぐらい美味しいから楽しみに待ってて」
ハヤはセムネイル達に見送られ、ソクド達を探しに出掛けた。
周囲の冒険者達がノラとグラの発言に驚き、椅子から転げ落ちていたがセムネイル達は気にも止めない。
冒険者達が驚くのも無理はなく、竜は魔物の頂点にして最強の魔物だ。
一匹の竜が街に現れ、一晩で壊滅等よくある話しとして有名である。 それ故に、竜を狩れる者は英雄として語られる。
素材も全て希少で、肉を目的に狩る魔物では無い筈なのだ。
「ほっほっほっほ、すまん待たせたの」
ようやくギルドマスターのソルバが現れ、カウンターの上にずっしりとした皮袋を置いた。
「構わん。 それは……買い取りの代金か?」
「そうじゃ。 と言っても……セムネイル殿が来た時に不躾な冒険者達を殺してしもうたじゃろ? やはり、衛兵の方で問題になりかけての。 解決する為に、幾らか金貨を使わせてもらっておる。 残っているのがざっと金貨250枚じゃな」
セムネイルからすると大した金額では無いが、様子を窺っていた冒険者達からは驚きの声が上がる。
「そうか、すまん助かった。 それと、ソルバに伝えていなかった事がある。 実は……奴隷市場で、ジェイソン達を助けて匿っているんだが。 本人達の意向で、俺のとある拠点にいるんだ。 問題無いか?」
「何と! そうか……生きておったか。 いやはや、セムネイル殿には感謝してもしきれんのぉ。 勿論、問題等無い。 そうか……奴隷市場に囚われておったのか。 ギルドマスターとして不甲斐ないのぅ。 奴隷等という制度をあの時止められなかった儂の罪か……」
ソルバは歯を食いしばり、怒りをあらわにする。
どうやら、ソルバの過去には奴隷制度に対する確執があるようだ。 そして、勘の良いソルバは気付く。
「ん? ならば、本当に奴隷市場を壊滅させたのは……」
ソルバの言葉を制止させる様に、セムネイルは頼み事を被せた。
「ソルバ、この代金はお前に預ける。 もし、お前に衛兵を使う権力があるのならば、この代金は奴隷市場を再建させない為に使ってくれ」
セムネイルはソルバが奴隷制度を憎んでいると判断し、代金の入った皮袋を手渡した。
「ほっほっほっほ……これは、信頼に応えねばなりませんな。 必ずや、お約束しましょう。 二度とこの街に奴隷を扱うクズ共を蔓延らせたりしませぬ」
「ふっ、頼むぞ。 それと、今日から竜の洞窟攻略に入る。 地図をくれるか? 実は竜の肉を大量に確保しないといけないんだ」
「ほっ! 竜を食用肉と同じ扱いですか……。 ぜひ、一度儂も食べてみたいものですな。 地図は此方ですじゃ。 入口は秘匿させておりますので、近付けばセムネイル殿なら分かるかと」
セムネイルは地図を受け取り広げる。
「了解だ。 それと、ソルバの仲間が使っていたらしき装備や武器があれば回収するからその時は確認を頼む。 じゃあな」
セリス達はソルバに会釈し、セムネイルに続いて冒険者ギルドを出て行った。
「ギルマス、大丈夫ですか?」
心配そうなリポンがソルバに話し掛けると、ソルバは静かに涙を流していた。
「ほっ! すまんすまん、この年になると涙もろくていかんな。 ほっほっほっほ……アレが極悪非道な魔王じゃと? 何処がじゃ……」
危険な筈のダンジョンで冒険者の形見を探す。 これは本来ご法度な行為だ。
何故なら、そんな事をダンジョンでしていたら探している本人も骸の仲間入りを果たすからである。
しかし、セムネイルからすると、ついでの事であり全く負担にもならないのだが長年冒険者をしていたソルバは嬉しさで涙を流した。
「さて、儂もやるべき事をやらねばな。 リポン、儂はちと衛兵の詰所に行ってくる。 後は頼むぞ」
「はい、勿論ですギルマス。 ギルドの業務はお任せ下さい」
ソルバが去った後、残された受付嬢リポンは薄く紅く光った目で不敵に笑う。
「ふふ……馬鹿ね。 今、竜の洞窟に行けば流石の最強最悪の魔王でも生きては帰れないでしょうに」
しかし、クエストを受けに来た冒険者が近づくと目の色は元に戻り、何時もの様子に戻るのであった。
「おはようございます、直ぐに呼んで参りますので少々お待ち下さい」
セムネイルは朝を迎え、妻達に一時の別れを告げた後、魔王の花束のメンバーとハヤを連れて冒険者ギルドを訪れていた。
受付嬢のリポンは、ギルドマスターソルバを呼びに席を立った。
「あ、あの……セムネイル様。 兄上や仲間の皆を探しに行ってきても良いですか?」
「ん? 当たり前だろハヤ。 別に俺の妻になったらずっと4次元に居ないといけない訳じゃないんだソクド達の所に行ってこい。 もし、4次元に帰る時は指輪を使うんだぞ?」
ハヤはセムネイルに頭を撫でられ、耳まで赤く染める。
「ひゃ、ひゃい……ありがとうございます。 じゃあ、行ってきます。 セムネイル様達もダンジョン攻略気を付けて下さいね」
「勿論だ。 夜には4次元の家に戻るから、またその時にな」
「くー! ハヤちゃんはとっても可愛いですね。 でも、良いですか? 何か有れば直ぐに4次元に逃げるんですよ?」
「ハヤさん、明日の朝は一緒に朝ご飯作りましょうね」
「おう! ハヤまたな! 晩飯に竜の肉が食えるから楽しみにしてろよー!」
「そうね、竜の肉を食べたら他の肉は食べれないぐらい美味しいから楽しみに待ってて」
ハヤはセムネイル達に見送られ、ソクド達を探しに出掛けた。
周囲の冒険者達がノラとグラの発言に驚き、椅子から転げ落ちていたがセムネイル達は気にも止めない。
冒険者達が驚くのも無理はなく、竜は魔物の頂点にして最強の魔物だ。
一匹の竜が街に現れ、一晩で壊滅等よくある話しとして有名である。 それ故に、竜を狩れる者は英雄として語られる。
素材も全て希少で、肉を目的に狩る魔物では無い筈なのだ。
「ほっほっほっほ、すまん待たせたの」
ようやくギルドマスターのソルバが現れ、カウンターの上にずっしりとした皮袋を置いた。
「構わん。 それは……買い取りの代金か?」
「そうじゃ。 と言っても……セムネイル殿が来た時に不躾な冒険者達を殺してしもうたじゃろ? やはり、衛兵の方で問題になりかけての。 解決する為に、幾らか金貨を使わせてもらっておる。 残っているのがざっと金貨250枚じゃな」
セムネイルからすると大した金額では無いが、様子を窺っていた冒険者達からは驚きの声が上がる。
「そうか、すまん助かった。 それと、ソルバに伝えていなかった事がある。 実は……奴隷市場で、ジェイソン達を助けて匿っているんだが。 本人達の意向で、俺のとある拠点にいるんだ。 問題無いか?」
「何と! そうか……生きておったか。 いやはや、セムネイル殿には感謝してもしきれんのぉ。 勿論、問題等無い。 そうか……奴隷市場に囚われておったのか。 ギルドマスターとして不甲斐ないのぅ。 奴隷等という制度をあの時止められなかった儂の罪か……」
ソルバは歯を食いしばり、怒りをあらわにする。
どうやら、ソルバの過去には奴隷制度に対する確執があるようだ。 そして、勘の良いソルバは気付く。
「ん? ならば、本当に奴隷市場を壊滅させたのは……」
ソルバの言葉を制止させる様に、セムネイルは頼み事を被せた。
「ソルバ、この代金はお前に預ける。 もし、お前に衛兵を使う権力があるのならば、この代金は奴隷市場を再建させない為に使ってくれ」
セムネイルはソルバが奴隷制度を憎んでいると判断し、代金の入った皮袋を手渡した。
「ほっほっほっほ……これは、信頼に応えねばなりませんな。 必ずや、お約束しましょう。 二度とこの街に奴隷を扱うクズ共を蔓延らせたりしませぬ」
「ふっ、頼むぞ。 それと、今日から竜の洞窟攻略に入る。 地図をくれるか? 実は竜の肉を大量に確保しないといけないんだ」
「ほっ! 竜を食用肉と同じ扱いですか……。 ぜひ、一度儂も食べてみたいものですな。 地図は此方ですじゃ。 入口は秘匿させておりますので、近付けばセムネイル殿なら分かるかと」
セムネイルは地図を受け取り広げる。
「了解だ。 それと、ソルバの仲間が使っていたらしき装備や武器があれば回収するからその時は確認を頼む。 じゃあな」
セリス達はソルバに会釈し、セムネイルに続いて冒険者ギルドを出て行った。
「ギルマス、大丈夫ですか?」
心配そうなリポンがソルバに話し掛けると、ソルバは静かに涙を流していた。
「ほっ! すまんすまん、この年になると涙もろくていかんな。 ほっほっほっほ……アレが極悪非道な魔王じゃと? 何処がじゃ……」
危険な筈のダンジョンで冒険者の形見を探す。 これは本来ご法度な行為だ。
何故なら、そんな事をダンジョンでしていたら探している本人も骸の仲間入りを果たすからである。
しかし、セムネイルからすると、ついでの事であり全く負担にもならないのだが長年冒険者をしていたソルバは嬉しさで涙を流した。
「さて、儂もやるべき事をやらねばな。 リポン、儂はちと衛兵の詰所に行ってくる。 後は頼むぞ」
「はい、勿論ですギルマス。 ギルドの業務はお任せ下さい」
ソルバが去った後、残された受付嬢リポンは薄く紅く光った目で不敵に笑う。
「ふふ……馬鹿ね。 今、竜の洞窟に行けば流石の最強最悪の魔王でも生きては帰れないでしょうに」
しかし、クエストを受けに来た冒険者が近づくと目の色は元に戻り、何時もの様子に戻るのであった。
18
あなたにおすすめの小説
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる