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第233話 追い詰められた姉妹
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リポンはひたすらに走り続け、小さな町パイムまで半分の距離まで来たという所で目前に妹のリパンがゴブリンの群れに襲われているのが見えた。
「リパン!? そんな……どうして此処に?! 待ってて! 直ぐに助けるから!!」
リパンは幾匹かのゴブリンを倒したのか、地面には焼けたゴブリン達の骸が倒れている。
しかし、まだ20匹程のゴブリン達に囲まれておりリパンは既に腕や足を掴まれ衣服を毟り取られている所だった。
「きゃぁぁぁ! やめて、やめてよ! ダメ……もう魔力が切れて……いやぁぁぁぁぁ!」
まだ姉が助けに来ているとは知らないリパンは悲痛な悲鳴を上げ、必死に抵抗しているが第2世代の魔人といえど力は弱くゴブリンにすら力負けし、押し倒される。
「やめて! 妹から離れてー!!」
リポンは叫びながら接近するが、氷魔法を使えばリパン諸共傷付ける事になる為に素手で立ち向かうしかない。
「「「「「ギギガガガ!」」」」」
ゴブリン達はいやらしく笑い、リパンの肌を舌で舐め上げた。
「やだ! やだやだやだ! いやぁぁぁ! お姉ちゃぁぁぁぁぁぁん!!」
「ギギギギ!」
「やめてぇぇぇぇ!!」
完全に衣服を剥ぎ取ったゴブリンはリパンに覆いかぶさるが、次の瞬間には首が飛んだ。
「……ギガ?」
間抜けな鳴き声を上げながらゴブリンの首は落ち、リパンの直ぐ側に姿を出したセムネイルが魔剣に付着した血糊を飛ばす。
「セリス、リン、ノラ、グラ、皆殺しにしろ」
セムネイルの合図と同時にリポンの背後を追い抜いた影達がゴブリン達を攻撃し始めた。
「勿論です! 女の敵は滅殺ですわ!! 雷の一矢!」
セリスの杖から無詠唱で射出された雷の矢がゴブリン達の頭の中を貫通し感電死させていく。
「許せません!! 速射!」
飛び上がったリンの弓からは魔力の矢が一瞬で数本放たれ、正確無比にゴブリン達の額に突き刺さる。
「アオーーーン! 俺、お前達大嫌いだ! 狼流奥義回転乱舞!」
漆黒の大剣をノラは横向きに振り回しゴブリン達を切り刻んだ。
「残りの首は……貰うね」
そして、残ったゴブリン達をグラが2本の魔剣を振るい駆逐する。
「「……えぇ?!」」
一瞬で殲滅されたゴブリン達の屍を見渡し、姉妹は同じ驚きの声を上げるのであった。
◆◇◆
「さて、リポンよ。 俺達は既に、お前が目の色を魔族と同じ赤色に変化する所も角を生やす所も見ている。 正直に話せば……何をしている?」
セムネイルはゴブリン達の死骸から離れた場所に移動し、全裸にされていたリパンに衣服を提供した事で敵意は無いと示したつもりだったのだがリポンはガタガタ震えながら妹を抱きしめていた。
「ありがとうリパン……連絡が取れない私を助けに来てくれていたのよね。 でも……ごめんね。 お姉ちゃん……取り返しのつかない事をしたの。 本当にごめんね……」
リポンは涙を流しながら妹に許しを請う。
「お姉ちゃん……いやだよ。 私も……側にいる」
そして、リパンも泣きながら首を振るい抱きしめる手を強めた。
「ダメよ……リパンは生きて。 かの悪逆非道な魔王セムネイル様でも、貴女の事は助けてくれる筈よ」
しかし、リポンは妹の手を引き剥がしセムネイルの下へと行こうと立ち上がった。
「いや、だからだな」
明らかに人生最後の別れをしているリポン達にセムネイルは頭を掻きながら弁明しようとするが死を覚悟したリポンは聞く耳を持たない。
「お、お待たせし、しました……セムネイル様。 わ、私は……謀略と叡智の魔王アスモ様に作られた第2世代の魔人という種族です」
セムネイルはアスモの名前が出た事に眉をひそめる。
「つ、つまり……アスモ様の部下である魔王様達の協力者であり魔族様達の内通者……です。
セ、セムネイル様達が危険な状態にある竜の洞窟に向かうのを止めなかったのも……す、全て私の独断です! だから、だからどうか妹の命だけは!! 私は、私は殺されてもいいです! ですが、どうか妹の命だけは……」
リポンは地面に手をつき、妹を助ける為に全てを正直に白状した。
追い掛けて来たという事は、全て見抜かれていると判断したのだろう。
「おい、聞けリポン。 俺はお前達を殺さん。 第一、殺すならさっき妹のリパンが襲われている所を助けないだろ」
セムネイルはなるべく優しい声色でリポンを諭すが、リポンの震えは止まらない。
「そ、それは……私達を自らの手で殺す為ですよね。 そ、そうですよね。 そうに決まってます! だ、だって貴方は……あ、あの極悪非道な魔王セムネイル何ですよ?!」
全くセムネイルを信用していないリポンの様子にセムネイルは天を仰ぎ、セリスは吹き出した。
「ふふふっ、貴方様は凛々しいお顔をしてますから」
「えぇ……セムネイル様の何処が極悪非道なのでしょうか。 私には理解出来ないです」
「あはは、大昔だったら有名な話しだったのよ? 敵は皆殺し、敵対するなら覚悟しろ。 かの魔王は極悪非道なりってね。 セムネイルも気に入って自称してたぐらいだから。 いやぁ、生き残ってる魔王達のトラウマ何だろうね~。 未だにそれを伝えてるって事は」
「……ん? 何で敵を皆殺しにするのが極悪非道なんだ? 普通じゃないのか??」
妻達の雑談を聞きながらセムネイルは、土下座するリポンと姉を守る様に縋るリパンをどう説得すべきかと頭を悩ませるのであった。
「リパン!? そんな……どうして此処に?! 待ってて! 直ぐに助けるから!!」
リパンは幾匹かのゴブリンを倒したのか、地面には焼けたゴブリン達の骸が倒れている。
しかし、まだ20匹程のゴブリン達に囲まれておりリパンは既に腕や足を掴まれ衣服を毟り取られている所だった。
「きゃぁぁぁ! やめて、やめてよ! ダメ……もう魔力が切れて……いやぁぁぁぁぁ!」
まだ姉が助けに来ているとは知らないリパンは悲痛な悲鳴を上げ、必死に抵抗しているが第2世代の魔人といえど力は弱くゴブリンにすら力負けし、押し倒される。
「やめて! 妹から離れてー!!」
リポンは叫びながら接近するが、氷魔法を使えばリパン諸共傷付ける事になる為に素手で立ち向かうしかない。
「「「「「ギギガガガ!」」」」」
ゴブリン達はいやらしく笑い、リパンの肌を舌で舐め上げた。
「やだ! やだやだやだ! いやぁぁぁ! お姉ちゃぁぁぁぁぁぁん!!」
「ギギギギ!」
「やめてぇぇぇぇ!!」
完全に衣服を剥ぎ取ったゴブリンはリパンに覆いかぶさるが、次の瞬間には首が飛んだ。
「……ギガ?」
間抜けな鳴き声を上げながらゴブリンの首は落ち、リパンの直ぐ側に姿を出したセムネイルが魔剣に付着した血糊を飛ばす。
「セリス、リン、ノラ、グラ、皆殺しにしろ」
セムネイルの合図と同時にリポンの背後を追い抜いた影達がゴブリン達を攻撃し始めた。
「勿論です! 女の敵は滅殺ですわ!! 雷の一矢!」
セリスの杖から無詠唱で射出された雷の矢がゴブリン達の頭の中を貫通し感電死させていく。
「許せません!! 速射!」
飛び上がったリンの弓からは魔力の矢が一瞬で数本放たれ、正確無比にゴブリン達の額に突き刺さる。
「アオーーーン! 俺、お前達大嫌いだ! 狼流奥義回転乱舞!」
漆黒の大剣をノラは横向きに振り回しゴブリン達を切り刻んだ。
「残りの首は……貰うね」
そして、残ったゴブリン達をグラが2本の魔剣を振るい駆逐する。
「「……えぇ?!」」
一瞬で殲滅されたゴブリン達の屍を見渡し、姉妹は同じ驚きの声を上げるのであった。
◆◇◆
「さて、リポンよ。 俺達は既に、お前が目の色を魔族と同じ赤色に変化する所も角を生やす所も見ている。 正直に話せば……何をしている?」
セムネイルはゴブリン達の死骸から離れた場所に移動し、全裸にされていたリパンに衣服を提供した事で敵意は無いと示したつもりだったのだがリポンはガタガタ震えながら妹を抱きしめていた。
「ありがとうリパン……連絡が取れない私を助けに来てくれていたのよね。 でも……ごめんね。 お姉ちゃん……取り返しのつかない事をしたの。 本当にごめんね……」
リポンは涙を流しながら妹に許しを請う。
「お姉ちゃん……いやだよ。 私も……側にいる」
そして、リパンも泣きながら首を振るい抱きしめる手を強めた。
「ダメよ……リパンは生きて。 かの悪逆非道な魔王セムネイル様でも、貴女の事は助けてくれる筈よ」
しかし、リポンは妹の手を引き剥がしセムネイルの下へと行こうと立ち上がった。
「いや、だからだな」
明らかに人生最後の別れをしているリポン達にセムネイルは頭を掻きながら弁明しようとするが死を覚悟したリポンは聞く耳を持たない。
「お、お待たせし、しました……セムネイル様。 わ、私は……謀略と叡智の魔王アスモ様に作られた第2世代の魔人という種族です」
セムネイルはアスモの名前が出た事に眉をひそめる。
「つ、つまり……アスモ様の部下である魔王様達の協力者であり魔族様達の内通者……です。
セ、セムネイル様達が危険な状態にある竜の洞窟に向かうのを止めなかったのも……す、全て私の独断です! だから、だからどうか妹の命だけは!! 私は、私は殺されてもいいです! ですが、どうか妹の命だけは……」
リポンは地面に手をつき、妹を助ける為に全てを正直に白状した。
追い掛けて来たという事は、全て見抜かれていると判断したのだろう。
「おい、聞けリポン。 俺はお前達を殺さん。 第一、殺すならさっき妹のリパンが襲われている所を助けないだろ」
セムネイルはなるべく優しい声色でリポンを諭すが、リポンの震えは止まらない。
「そ、それは……私達を自らの手で殺す為ですよね。 そ、そうですよね。 そうに決まってます! だ、だって貴方は……あ、あの極悪非道な魔王セムネイル何ですよ?!」
全くセムネイルを信用していないリポンの様子にセムネイルは天を仰ぎ、セリスは吹き出した。
「ふふふっ、貴方様は凛々しいお顔をしてますから」
「えぇ……セムネイル様の何処が極悪非道なのでしょうか。 私には理解出来ないです」
「あはは、大昔だったら有名な話しだったのよ? 敵は皆殺し、敵対するなら覚悟しろ。 かの魔王は極悪非道なりってね。 セムネイルも気に入って自称してたぐらいだから。 いやぁ、生き残ってる魔王達のトラウマ何だろうね~。 未だにそれを伝えてるって事は」
「……ん? 何で敵を皆殺しにするのが極悪非道なんだ? 普通じゃないのか??」
妻達の雑談を聞きながらセムネイルは、土下座するリポンと姉を守る様に縋るリパンをどう説得すべきかと頭を悩ませるのであった。
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