ミルクティー

サクラ

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ミルクティー

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同窓会を抜け出して二人きりになった私たち。
長年会っていなかったのが信じられないくらい盛り上がった。
中学時代の思い出話で3時間もしゃべってしまった。

そして別れ際
また会おうと言われて連絡先を交換した。
何これキセキ!?
ヤバい、思い出しただけで顔がにやける。





「連絡先交換したくらいで浮かれないでよ。中学生かよ!」


「べっ別にいいじゃない!私は嬉しいんだから!」


「せっかくお酒が入って、いいムードのバーで昔話に花咲かせるだけで終わるなんて…」





いいじゃん、私にしては大進歩だと思うよ?
告白すらできなかった相手と再会して
連絡先まで交換!なかなかじゃない?
うん、まあ
真崎くんから言ってくれなかったら無理だったと思うけど。



「ちえ!なんかこう、大人な話が聞けると思ったのに。テンションあがって、ホテルから朝帰り!みたいな」


「ゆり…そんな簡単に真崎くんが誘ってきたら、すっごく嫌なんだけど」

もちろんその逆で
私が誘ってすぐについてきても嫌なんですけど!
わかってる、その前に誘えないけどね!











「おはよーございまーす♪」


「お、はよう、中島さん。今日はやけに機嫌がいいのね?」




同僚が思わず引きつってしまうくらい
私は朝から機嫌が良かった
なんでって?
だって、昨日、ゆりと飲んでいたときに

「明日ご飯でもどう?」

って、メッセージが来たの!!!ベットの上で転げまわって床に落ちたわ!
そりゃ、機嫌もいいってものですよ!
普段は絶対に履かないスカートなんか選んでしまうくらいには
ちょっとスキップしてしまうくらいには機嫌がいい。
いつもと違う私にまわりは引いている気がするけれど、そんなこと今はどうでもいい!




席に着いて、コーヒーを一杯飲む。
あぁ、インスタントのコーヒーですらおいしく感じる。
世界ってこんなにキレイで素敵だったのね!




「…さん、中島さん!!」




「うわっ!はい?なにどうしたの?」

びっくりして椅子から転げ落ちそうになったのをなんとか踏ん張る。
声がするほうに顔を向けると酒井くんが書類を握り締めて立っていた。
そうだった、頼んでいた書類のチェックするんだった。
浮れていて忘れていたわ。
今まで仕事のこと忘れたことなんてなかったのに。
だめだめ、しっかりしなくっちゃ!



「あの、これ昨日頼まれた書類です」



「あ、そうそう、そうだったね。今見るね!」




今だったら、どんな間違いがあったとしても笑って許せる
どれどれ?ふんふん、ほうほう…



「酒井くん、ここ間違ってる。でも他は全部いいよ!すごいじゃない!ちゃんとできて。これからもこの調子で頑張ってね!」


珍しくミスが少ない。
機嫌がいいのも相俟ってちょっと大げさに褒めてみる。
この調子で仕事してくれたら
来年酒井くんが私から離れても大丈夫、私の仕事も減って万々歳!
にこりと笑って酒井くんを見たら
彼の目から大粒の涙がボロボロと零れ落ちている。

「さ、酒井くん!?」


なに?なんで泣いているの!?
私なにか変なこと言った!?



「じ、じぶん…」


「は、はい?」

どうしよう、これってパワハラとかになるの?
身に覚え一切ないけど
どうしよう、どうすればいいの!?



「自分!中島さんにそう言ってもらえるのがなによりも幸せです!!これからもよろしくお願いします!」


大声でそういうと、酒井くんは私に向かって体を直角に曲げた。

ちょっとやめてよ!みんな見てるし!恥かしい!
そんな大げさな、私にちょこっと褒められた(?)くらいで泣かなくても
熱い男だなぁ。いや、いいんだけどさ。パワハラで訴えられるわけじゃないし。



それから一日中感動しっぱなしの酒井くん
それを見るたびに恥ずかしくなってしまって、仕事がはかどらない
え?はかどらないのは他にも理由があるだろうって?

うん、あります。
だって、今日は真崎くんとお食事だから♪早く仕事が終わらないかな!










「はるか!ごめんなぁ、自分から誘っておいて遅れた」



「ううん、今来たから」




約束の時間を5分過ぎて真崎くんがやってきた。
私のために走ってくれた。
もう、それだけでおなかがいっぱい。
ごちそうさまです。

それから、真崎くんのお勧めの店があるって言われて連れて行ってもらった。
この前のバーもそうだけど、なんでこんなおしゃれな店をたくさん知ってるんだろう。

それだけ、いろんな女の子とデートしたことがあるのかな?
手を見ると、指輪をしてないから結婚はしてないと思う。
指輪のあともないから、今はずしているだけってこともないし。

でも、彼女はどうなのかな?
いるのかな?いたら、私とこうして食事するのはやばいよね?

「真崎くん?」


「何?」



「彼女っているの?」




よし!よく言った私!えらいぞ私!!
ここが肝心、彼女がいたら無理に奪おうとかそういうのじゃない。
いい友達としてこれから付き合っていけばいいだけだし。
まあ、せっかく芽生えた恋心なんだけど。
彼女がいたら仕方ないしね。



「いないよ。別れちゃった。忙しすぎて構ってくれない人は嫌だって」



「えっ!本当?同じだね?」



「え?はるかも?」



やば、ついうれしくて自分のことまで話しちゃった…
これじゃあフラれましたって言ってるようなものじゃない。
まあ、本当のことだから別にいいんだけど。



「仕事が忙しくなるとさ、ほかのこと考えなくなるみたいでオレ。つい連絡するのも忘れるし、彼女から来ても無視しちゃうこともあるんだよな」



「それも私と同じだね」



今、彼女がいないんだ!という喜びと
やっぱり彼女がいたことあるんだ。という悲しみがいっぺんにやってくる。
彼女くらいいてもおかしくない。
真崎くんかっこいいし、いないほうがおかしい。
でも、なんだか悔しい。
真崎くんの彼女だった人たち全員に嫉妬してしまう。
私の知らない時間を知っている彼女たち全員に嫉妬してしまう。

でも今はいないんだから、気持ち切り替えてはるか!
これはチャンス!チャンスよ!


「それよりさ、はるか、仕事大丈夫だった?」



「え?うん、大丈夫だよ?なんで?」



「いや、同窓会のあったあの日さ、仕事忙しいし、後輩は出来が悪いし!私こんなに頑張ってるのに!って叫んでいたから…」




うそ!そんな事を言ってたの!?
舞い上がっていてすっかり忘れていた。
最悪、印象最悪ですよ!
そんなことを真崎くんに愚痴っていたなんて。



「だから、今日は息抜きになればいいなって思ってさ、ほら、はるかって中学のときも、委員会で張り切りすぎてたことあるから」




「真崎くん…」





真崎くんとは同じ委員会だった。
3年生のときに委員長に選ばれて、それがうれしくて。
張り切っていた。
張り切りすぎて、疲れちゃって。
でも、その姿を誰にも見せたくなくて隠してた。

なのに、真崎くんは私が隠していたことに気がついて
息抜きって言って自転車で海に連れて行ってくれたこと会ったよね。


それまでは、いい友達だと思っていた。
だけど、一気に好きになった。

私の特別な人になった。

それなのに…卒業前のあの日…




「はるか?」


「あっうん!ごめんボーっとしちゃって…ありがとう」



やばい、やばい。意識だけ昔にタイムスリップしちゃうことだった。
昔のことなんて、今はどうでもいいよね?




「そんなに疲れるまで頑張って、お疲れさん…」


ぽんぽんって頭をなでながら
優しい目でそんなことを言うから
思い出してもしかたないって分かってるのに
あの、海へ連れて行ってくれたことを思い出して

あの時もこうしてくれた。この手がうれしくて涙が出た。
だから、今日も
泣いてしまった。不覚にも。



「ご、ごめん、泣かせるつもりはなかったんだけど」



「あ…違うの!うれしくてつい」




そっか、そうなんだよね
酒井くんもきっと、誰かに褒められたかったんだ。
私も、誰かに「お疲れ様、よく頑張ってるね」って言われたかったんだ。

いつも頑張ってるから、張り詰めているから
まわりも頑張れって言うから
だから、がむしゃらに働いていたけど
私、本当はすごく疲れていて
こうして、誰かに慰めてもらいたかったんだ。


すごいな、真崎くん。
私がしてほしかったことさらっとしてくれて。
本人は無意識なんだろうけど。





泣いてしまって、店の中に居づらくて
私たちは逃げるように店を出た。



「あの、今日はありがとう、誘ってくれて。おかげでいい息抜きになったよ」



「そうよかったじゃあ、またな」



ねえ神様
これはチャンスなんでしょうか?
もう一度、私に告白をさせるチャンスと
思ってもよいのでしょうか…
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