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第一章 血を受け継ぐ者
第6話
しおりを挟む「じゃあ行くか」
「はい」
玄関で待っていた戒さんと一緒に家を出て
学校まで歩いていく。
しばらく続く野原を抜けると
小さな商店街に出た
そして更に歩き進めると
森に囲まれたこの村にはあまりふさわしくないくらい
大きな学校が建っていた。
「ここが白薔薇学園、明日からお前が通うところ」
「大きい学校ですね」
「まあな、田舎のクセに建物だけは立派なんだよ。まあいいから行くぞ」
戒さんに腕を引っ張られて
学校の中に入っていく。
学校の中は白くてきれいな壁に大きな窓
開放感のある校舎で
あぁ、ここに転校になってよかったかもと思った。
廊下もキラキラしていて掃除が行き届いている。
「掃除は専門業者が来て毎日やっているんだ」
「…なんで私が考えていることが分かるんですか」
「おまえ顔に出やすいんだよ」
「だからっていちいち声に出さないでください!」
「ほんっとかわいくねぇな!」
「かわいくなくて結構です!」
出会って全然経ってないのに
なんですぐにケンカになってしまうんだろう。
こんなこと今までなかったのに!
もう少しうまく人とはやっていけると思っていたのに!
それからも口を開けばケンカをしてしまう。
そんなことをしているうちに理事長室の前についてしまった。
戒さんが扉を3回ノックすると
「入って」という女の人の声がした。
ドアを開けると
そこにはキレイな女の人が1人
広い部屋の窓際に立っていた。
一面の赤いじゅうたん
一歩足を踏み入れるとふわっとした感触がスリッパの上からも伝わる。
広い机の上には真っ白な薔薇の花が活けられていた。
「理事長、一之瀬珠姫を連れてきました」
「ごくろうさま、戒は外で待っていて頂戴」
「はい」
さっきまでの戒さんとはまるで別人のように礼儀正しく
そして少し緊張しているようにも思える。
理事長の言うとおりに戒さんは部屋を出て行ってしまって
取り残されてしまった私は
理事長と向き合ったまま固まってしまった。
「初めまして、白薔薇学園理事長の椿です」
「初めまして、一之瀬珠姫です」
「ふふ、硬くならないで?そこのソファーに腰をかけてお話しましょうか」
理事長に促されて
私はソファーに腰をかけた。
革張りの真っ黒なソファー
この部屋にはお似合いだけど
さっきまで歩いてきた道のりを思い出すと
この学校はまるで異世界のようで、村とは雰囲気が違いすぎる気がする。
「ふふ?何かおもしろいことでもあった?」
「い、いえ何も、あの…それよりも、なんで私をここに呼んだのですか?私、理事長とは初対面ですよね?」
「そうね、あたなとは初対面よ。だけど、あなたのお母さんとは知り合いよ?ずっと昔からね」
「お母さんと知り合いだったんですか?」
「そうよ?聞いたことない?この学校のことやこの村のこと」
「いえ、何も」
だって私はさっき戒さんに案内された家が
お母さんの実家だということも始めて知ったし
この村にだって来た記憶がない。
「で、お母さんは元気なの?」
「いえ、3年前に他界しました。ずっと病気がちだったもので」
そう、私のお母さんは3年前に病気で死んでしまった。
泣いて叫んで、お母さんの遺体からずっと離れられなかった。
私には気になることがあった。
それはお母さんの葬式のとき。
お父さん側の親戚は何人も集まっていたのに
お母さん側の親戚は誰一人来なかった。
考えてみれば幼少期から
お母さんの親戚に会ったことがなかった。
お母さんに聞いても、なんだか複雑な顔をして話を逸らされてしまった。
子供ながらに、言いたくないんだと思って
それ以来聞いたことがなかったけど、
お葬式が終わったその日、お父さんに訪ねてみた。
「お母さんの親戚って来ないの?」と
でも、なんだかんだとはぐらかされてしまった。
私はずっとそれが不思議で仕方がなかった。
それなのに今、こうしてお母さんが育った村へ私は来ている。
なんで今頃
私はそれがずっとひっかかっていた。
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