白薔薇の紋章

サクラ

文字の大きさ
27 / 37
第4章 生贄

第5話

しおりを挟む
「本当に、この先に何かあるのか?」

バラの模様をさわりながら蛍さんにそう聞かれる


「多分…なんでとか理由を聞かれても困るんですけど。多分何かあると思うんです」


「珠姫がそういうなら、きっと何かあるはずだ」


蛍さんがしゃがみながら、バラの模様を指で撫でた。


「白薔薇姫の直感がそう言うんだからきっと何かがあるんだろうな」

鳳先生もバラの模様を手のひらで撫でた。


「力が目覚めていないだけど、珠姫には白薔薇の血が流れてるのは確かだし、何か感じることがあっても不思議じゃないよな」

蓮さんもバラの模様を指でなぞる。



「なんでみんなバラの模様触ってんの?そんなにいいさわり心地なの?」

「戒さんも触ってみれば?」

「なんでだよ。倫が触ればいいだろ」

「え?もしかして怖いの?だっさぁ!」

「うるせぇ!こんなもんが怖いわけねーだろうが!」

倫の挑発に乗った戒さんもバラの模様に触れた。

「え…?」

4人が触ったバラの模様が光った。
あまりのまぶしさに何も見えない。

「なんだこれ!蛍!何これ!」

「オレも分からない…」

「オレ達四霊が触ってから光り出す…やっぱりこの扉の向こうに何かあるのかもしれない」

「先生なんだから知っておいてよこれくらい!でもなんだろう不思議」


「どうしたんだろう、急に光って…まぶしくて何がどうなってるか分からないし
珠姫、目は大丈夫?」

「大丈夫…バラの模様が光っている見たい」

「見えるの?」

「うん」


光出した時は何が起こっているか分からなかったけど
今ははっきりと見える。

引き寄せられるように扉に近づき
戒さんと蛍さんの間に無理やり体をねじ込んで
取っ手も思い切り引っ張った。

「開いた」

扉が開くと同時に光が消えた.
みんなで扉の中をのぞくと階段が見えた。

「地下があんのか?」

「そうみたいだな…」

「なんでさっきまで開かなかった扉が急に開いたんだ?」

「これは予測だが、オレ達四霊の力と白薔薇姫の力が合わさって初めて開くのかもしれないな」

「マジか…すげぇな」


「ねえみんな!驚いているのは分かるけど中に入ってみようよ!珠姫が言うとおり何かあるかもしれないし!」

倫が蛍さんの腕を引っ張って立たせる。
それに続いてみんなも立ち上がり
戒さんを先頭に地下へと降りて行った。


地下は洞窟のようになっていて真っ暗だった。
足元は石畳のようになっていて少しひんやりしている。
暗くて見えないからみんなは携帯をだして
その光を頼りに前に進んで行く。


「わっ!」

キョロキョロして歩いていたら石畳の隙間に足を引っ掛けた
よろけたせいで戒さんの背中に軽くぶつかってしまった。


「どうした?」

「躓いちゃって、ごめんなさい」

「どんくせぇな」

「暗いんだから仕方ないじゃないですか!」

「かわいくねぇな」

ほら、と戒さんが手を出しだした。
その行動の意味が分からなくて黙っていると
手を掴まれた。

「な、何…?」

「転んだりしたら危ねぇから」


え、それって手をつないで歩くってこと?
恥ずかしい!


「大丈夫です!もう躓きません!」

「いいから黙って繋がれておけ。転ばれたら迷惑だ」

「で、でも…」

「いいから!」


手を離そうとしても戒さんの力のほうが強くてびくともしない。
ここで立ち止まるのは時間の無駄だし
仕方ないと自分を納得させて
戒さんに手を引かれながら先に進んだ。

手、大きいし温かい。
そういえば男の人と手をつないだのはこれが初めてかもしれない。
それに気づいてしまったらもう最後
恥ずかしさで顔が熱くなっていく。
暗くてよかった。きっと顔が真っ赤になっているはずだ。


あぁ、もう
普段は優しくないくせに
ふいに優しくなんかしないでほしいな…

心臓がどきどきしている。
みんなに聞こえていないといいんだけど。
特に戒さんには聞こえないでいてほしい。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

包帯妻の素顔は。

サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...