【改訂版】鬼畜過ぎる乙女ゲームの世界に転生した俺は完璧なハッピーエンドを切望する

かてきん

文字の大きさ
96 / 115

第96話 バッドエンドに向かって

しおりを挟む
 小さい寝息が聞こえ、シバがぐっすりと眠っているのだと分かる。
 外は明るみ始め、時計を確認すると朝の五時半だ。
 俺の背中に回された手をそっと退け、シバの腕の中から抜けると足音を立てないようにリビングへ向かう。
 そして静かに服を着替え、寝間着を洗濯かごに入れた。
(シバ、大好きだよ)
 俺は心の中で彼にそう告げると、そっと部屋を出てシバの宿舎を後にした。
「急ごう」
 俺は走って騎士棟の馬小屋を目指した。
 昨日はシバの寝かしつけによって眠ってしまったが、夜中に緊張で目を覚ましてそのまま考え事をしていた。
 アックスがエマの世話をするのは決まって出勤前の朝と退勤後の夕方。今はまさに彼が馬小屋にいる時間なのだ。
 走って騎士棟の横を通り目的の場所へ着くと、俺の予想通りアックスがいた。今着いたばかりのようで、俺に背を向けて馬小屋の扉を開けている。
「アックス……」
 俺はアックスに走って近寄ると、後ろから声を掛けた。
「セラ?」
 アックスは驚いていたが、すぐにいつもの優しい顔に戻る。
「座って話そうか」
 俺達は馬小屋近くのベンチに座る。シン…とした空気が流れるが、俺は声を絞り出す。
「昨日はすみませんでした」
 俺は頭を下げて謝る。
 昨夜、俺は彼に対して失礼なことをした。アックスにそれを謝ることも目的ではあったが、今からバッドエンドを迎えるであろう俺は、シシルだけでも助けてくれとお願いをする為にここへやって来た。
「あれは約束じゃない。もし来てくれるならって言っただろ?」
「でも俺、連絡もせずに……本当にすみません」
「セラは謝らなくていい」
「アックス……」
 俺はどう声を掛けて良いのか分からない。告白まで進んだゲームの攻略者の誘いを断る主人公などいないだろう。結ばれなかった俺達はどうなってしまうのか……考えると恐ろしくなる。
(やっぱり他の攻略者達と同様、アックスも闇落ちして俺を酷い目に合わせるのかな)
 某動画投稿サイトで、眼鏡側近ウォルと第二王子エヴァンを攻略しようとして失敗に終わった動画を見たことがある。主人公が間違えた会話選択をした場合は、決まって彼らが自分の闇の部分をさらけ出し、主人公を罰した。
 俯いて黙っていると、アックスがスッと手を伸ばし俺の頭を撫でてきた。思ってもみなかった行動に、バッと顔を上げる。
「本当に気に病まないでくれ。セラの気持ちはもう分かっている」
 アックスは俺を撫でながら優しい声で言う。
「だが時々、セラが俺に友達以上の好意を抱いているんじゃないかと勘違いすることがあったんだ」
「それは……!」
 アックスの勘違いではない。 俺はアックスと本当に恋人になるつもりで、好きになってもらおうと行動してきた。
 しかし俺が最終的に好きになったのはシバだ。それを説明するわけにもいかず、拳を握ってまた黙ってしまう。
「俺も、自分のセラに対する気持ちが恋愛感情なのか、友人への好意なのか分からなかったんだ」
 アックスの顔は真剣で、その言葉が本心であると伝わってくる。
「街でダンスをした日、セラと口がぶつかりそうになっただろ? 何も気にしてない様子のセラを見て、俺はセラとずっと友達でいようと思ったんだ」
(だから帰りの馬車は、ゲームと違って目の前の席に座ったのか……)
「昨日は、ただ自分とセラの気持ちをはっきり確かめ合いたかっただけだ。もしセラが俺を好きなら……と悩んだが、やはり違ったみたいだな」
 全てを話してすっきりした顔のアックスは、からかうように口の端を上げる。
「セラ、好きなやつがいるんだろ?」
「……え」
「見てたら分かる。当ててやろうか?」
 アックスは意地の悪い顔をわざと作っている。
「アインラス殿か?」
「は、え……ッ!」
 いきなりその名前を挙げられ、俺は動揺して変な声が出た。その反応を見てアックスが笑う。
「彼は幸せ者だな」
 アックスはそう言って俺の頭をくしゃりと撫でると、俺の顔をまっすぐと見た。
「改めて言うのも照れるが、これからも友として一緒にいてくれないか?」
 アックスは少し耳を赤くしつつ、俺に問いかけた。
「俺は、セラと今まで通りの関係でいたいと思っている。セラの良き友としてずっと一緒にいたい」
 こんな展開は知らない。照れながらそう話すアックスをじっと見つめてしまう。
(だって、ゲームはどれもハッピーエンドかバッドエンドか二択で。こんなことって……)
 一体どうなっているのかと混乱していると、アックスが笑いながら手を差し伸べてきた。
「おい。返事をくれないのか?」
(友情エンドなんて、あり得るの⁉)
 この光景が信じられなかった。しかし、これからもアックスと友人として仲良く付き合っていけるのだと思うと、胸が温かくなる。
(アックスが、俺と友達でいたいって言ってくれた……)
 片手を差し出しているアックスの手を両手でしっかり握り、真っ黒な瞳を見て言った。
「はい。アックスとずっと一緒にいます……!」
「誰と、ずっと一緒にいると?」
 早朝であり誰もいないはずの場所に、聞きなれた低い声が響いた。後ろを振り向くと、無表情で殺気を放つシバがこっちを見て立っていた。
(なんでここに?)
「アインラス様!」
「セラ、来い」
 俺は唖然としており、アックスはその様子を窺っている。シバは、アックスの手に添えられた俺の手を掴むと、ぐいっと自分の方へ引いてきた。
「いた……っ、」
 いつもはふんわりと優しく握る手がぎゅっと俺の手首を掴む。強い力ではないのに、条件反射で『痛い』と口に出してしまった。
「やめろ。セラが痛がってる」
「トロント殿は黙っていてくれ。私はセラに話がある」
「アインラス殿は勘違いしている。私とセラは、」
「話は本人から聞く」
 シバは俺の左手を掴んで立ち上がらせ、アックスは俺を助けるように右の手を掴む。
「アインラス殿、落ち着いてくれ」
「手を離せ」
「セラに乱暴なことをするな」
 張りつめた空気の中、俺は深呼吸してシバの顔を見上げた。
 すぅ……
「シバ! 愛しています!」
 俺の大声が響き、その音量に驚いたのか、二人は俺を見下ろして黙っている。
「全て話しますから、帰りましょう」
 黙ってしまったシバを今度は俺が引っ張り、ぺこっとアックスに頭を下げた。
「早く誤解を解いた方がいい」
 アックスはさっきまでの剣幕が嘘のように噴き出して笑うと、軽く手を上げて俺達を見送った。

 大きなシバの手を掴み、無言で宿舎まで向かう。シバは何も発さず静かに付いて来た。さっきまではバッドエンドへの覚悟のみを胸に宿舎を出たが、こうなってみるとシバに対して罪悪感を感じる。
(恋人になった次の日に別の男の手を取って笑ってるなんて……シバ絶対傷ついたよね)
 シバの宿舎に着き、部屋の中へ入る。俺はやっと後ろにいるシバを振り返ると、謝ろうと口を開いた。
「シバ、ごめんなさ、」
「セラ」
「っわ……!」
 俺が謝罪の言葉を言い終わる前に、シバが俺を強く抱きしめた。ぎゅう……と存在を確かめるように強く抱かれ、本当に心配を掛けてしまったのだと胸が痛んだ。
「朝起きたら君がいなかった」
「すみません」
 シバは俺を胸に抱きながら、静かに続ける。
「起きたら、目覚めのキスをするつもりだった。そして寝坊する君をリビングで待って、一緒に昼食を作ろうと思っていた」
 そう告げるとぎゅっと抱きしめていた腕を緩めて視線を合わせる。
「まさかと思い騎士棟へ行ったら、トロント殿の手を取っている君が見えて……心臓が止まったかと思った」
 シバは、俺を掴んだ方の手首を優しく撫でる。
「すまない。痛かったか?」
「いえ。びっくりして、つい痛いと言ってしまっただけです」
「声を掛けて話を聞こうと思ったんだ。しかし、セラが私を名前で呼ばなかったから、酷い言い方になってしまった」
 急に現れたシバに対して、俺は確かに『アインラス様』と呼んだ。彼は俺がアックスへ向けた言葉と、シバへの呼び方が変わったことで焦ったようだった。
「それはアックスの前ですし。元々、二人きりの時に名前を呼び合う約束でしょう?」
「それはやめる。セラには常に名前で呼んで欲しい」
 拗ねた声が可愛らしく、愛しさが溢れてシバの厚い胸に抱き着く。
「君が愛していると言ってくれて安心した。しかし、なぜトロント殿と会っていたのか説明してほしい」
 安心したと口では言っているが、納得はしていないようだ。
 俺は覚悟を決めた。
「分かりました。長くなりますが良いですか?」
(シバにこれまでのこと、ちゃんと話さなきゃ)
 エンディングを無事迎えた俺は、誰にも話せなかったこの一年間の出来事をシバに伝えようと決めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

【完結】白豚王子に転生したら、前世の恋人が敵国の皇帝となって病んでました

志麻友紀
BL
「聖女アンジェラよ。お前との婚約は破棄だ!」 そう叫んだとたん、白豚王子ことリシェリード・オ・ルラ・ラルランドの前世の記憶とそして聖女の仮面を被った“魔女”によって破滅する未来が視えた。 その三ヶ月後、民の怒声のなか、リシェリードは処刑台に引き出されていた。 罪人をあらわす顔を覆うずた袋が取り払われたとき、人々は大きくどよめいた。 無様に太っていた白豚王子は、ほっそりとした白鳥のような美少年になっていたのだ。 そして、リシェリードは宣言する。 「この死刑執行は中止だ!」 その瞬間、空に雷鳴がとどろき、処刑台は粉々となった。 白豚王子様が前世の記憶を思い出した上に、白鳥王子へと転身して無双するお話です。ざまぁエンドはなしよwハッピーエンドです。  ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

処理中です...