心霊ロケで廃墟ホテルに行ったらトンデモナイ目に遭った話。

みららぐ

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「わぁっ!!…って、突然驚かすん無しやで」
「あほ!いまお前の声にビビったやないかい!」
「もーやめてくださいよ~」

エントランスに入って、奥に進もうとした矢先、私の前を歩く芸人さんがそう言った。
やるだろうな、とは思っていたけれど、そうやって突然大きな声を出すのだけは本当にやめてほしい。
いきなり驚かすから芸人さんが相方に叩かれていて、その姿を後ろで見た時は思わず少し笑ってしまった。

…しかしその和やかな雰囲気は、突如霊媒師の女性が発した言葉によって、一気に再び大きな恐怖に包まれる。

「あ、この奥にあるロビーの受付見えるでしょ?そこに女性が…まだ20代前半かな?立っていて、物凄い勢いでこちらを睨んでいます」
「え、えぇ!?あそこ、あの受付のところですか?」
「そうそう。連続して殺人事件があったホテルだから、当時働いてて殺されてしまった従業員かな?彼女、頭から血を流しています。あんまり受付ところ、じっと見つめすぎないで下さいね。万が一目が合ったりなんかしたら大変ですから」
「いや先生、そんなこと詳しく言わんといて下さいよ!」

この廃墟ホテルのロビーは、エントランスから入ってすぐ目の前に広がっている。
ロビーにはたくさんの椅子やテーブルが乱雑に散らばっており、その向こうに受付がある。
ロビーに備え付けられた窓やカーテンが大きく破られており、その光景にもまた大きな不快感や恐怖を感じずにはいられない。

……あの受付に、いま、女性の霊がいるんだ…。
霊媒師さんは「見つめすぎないで」と言っていたけれど、私は気になって何度も何度もそこに目を遣ってしまう。

「…受付のほう、何枚か写真撮ってみますか?」

私はそう言うと、事前にスタッフさんから預かっていたカメラを手に持った。
もしここで何かが映れば、それが取れ高になる。
怖いから何も映らないでほしいけど、私の名前を世に知らしめるという意味では、映ってほしい。
私はそんな複雑な思いを抱えながら、受付を何枚かデジカメに収めた。…が、結果は何も映っていない。

「あっ。あそこ売店ちゃう?」
「え?」

そして写真を撮った直後、芸人さんがそう言って売店らしき場所を指差した。
その声にその指で差した先を見てみると、確かにそこには薄汚れた木の板に「売店」と書かれてある。
もちろん商品自体は全く残っていないが、そこに一体だけ立つ女性の白いマネキンと目が合った。

「っ…!」

今のマネキンは顔のパーツまでは全く描かれていないが、30年前のものともなると、顔のパーツがくっきりと描かれてあって思わずゾッとした。
マネキンのその大きな目が、ギョロ、とこちらを睨んでいるように見える。

「ちょっとこれは…なんとも言えない雰囲気ですね」

私はそのマネキンを見るなり思わずそう言うと、苦い表情を浮かべた。
さすがに手で触れる気にはなれないが、その不気味な目から不思議と目が離せない。

「さっきから色んなモン倒れてはるけど、このマネキンだけ倒れてないんやね」
「あ、ほんまや。なんでやろ」

そして不意にそう言った芸人さんたちの言葉に、私も「確かに…」と呟いた。
しっかり固定されているわけではないのに、確かにこのマネキンだけちゃんと立っている。
…ますます不気味だなぁ。
そんなマネキンにそう思ってしまったのは私だけではないようで、隣に立つ芸人さんも2人とも似たようなことを口にしていた。

「…香音ちゃん、とりあえず写真撮っとこか。マネキン」
「あ、そうですね」

そしてそう言った芸人さんの言葉に、私は早速同じデジカメでマネキンの写真を撮った。

…………

その後は、1階のトイレや大浴場、
そして2階の客室をなんとなく見て回り、気になったところは全て写真を撮った。
途中、霊媒師さんに「この部屋の奥で男性が横たわっています」とか「この廊下に老婆が立っていますので気を付けて下さいね」などと言われ、その度に3人でビビりながらもロケを続けていた。

そして、ロケを続けること約1時間ほど。
意外にも特に何かが起こるわけでもなく、奇妙な音や声などが聞こえることもないまま次に3階に上がろうとした時…


そこで、事件は起こった。


「次、3階やな」
「いやーさすがに3階で何かあってくれへんとこれオンエア危ないで」
「えっ、せっかく頑張ってるのにお蔵入りとか勘弁して下さいよぉ」

3人でそんな会話を繰り広げながら、なんとか和やかな雰囲気を出しつつ3階に繋がる階段を上りきった時、不意に後ろで男性のスタッフさんが言った。

「え、あれ?ちょっとゴメン」
「…え?」
「?」

最初に気が付いたのは、ディレクターさんだった。
私たちがその声に後ろを振り向くと、ディレクターさんが突如、思いも寄らなかった言葉を口にした。


「霊媒師さん、居なくない?」

「…えっ」




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