心霊ロケで廃墟ホテルに行ったらトンデモナイ目に遭った話。

みららぐ

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これ以上、このホテルでの撮影は危険じゃないか。
もう今すぐにでも中断して、局に戻ったらどうか。

出演者の私たちを含めみんながそう言ったが、それを許さないディレクターさんがトンデモナイ提案をしてきた。

「わかった。じゃあ、さっき骸骨を見つけた部屋で誰か一人だけ1時間ほど過ごして貰って、他の奴らは別室でその様子をモニターで見ながら待機しよう。それが終わったら撤収《バラす》」
「一人!?ひ、一人であの部屋にですか!?」

しかしもちろん大した取れ高が撮れていないなかですぐに帰れるわけもなく、未だに霊媒師さんも見つかっていないということで、ディレクターさんはそれを許さない。
そして例のその客室で誰が一人で過ごしてみるか、という話し合いの中で、私はマネージャーさんに推され泣く泣くそれを立候補する羽目になった。

これを乗り切って放送されれば、お前の名前は絶対に世に知れ渡る!と。
そんなことを言う非常識なマネージャーさんを心から恨んだが、それでも確かにそれは一理あるかもしれない。
いや、心霊番組に出演するのはこれを最初で最後にしよう。
せっかくだから「思い出」としてやってみるか。
…超絶こわすぎるけど。

私が立候補したらそれを聞いていた芸人さん2人に物凄く心配されたけど、大丈夫とは言えない顔で大丈夫と口先だけでそう言った。

「じゃあ香音ちゃん、カメラの準備あるからちょっとだけ待ってて」

私はそう言われ、そこから約30分後に悪夢のようなひと時を体験することになるのだった────…。

…………

「…失礼しまーす…」

例の客室にたどり着くと、その中も異様な雰囲気が漂っていた。
部屋の広さは10帖といったところだろうか。見た感じ小型カメラが数か所に設置してある。
相変わらずこの部屋もカーテンがビリビリに破られていて、壁紙も派手に剥がれ落ちている。
ホテルだから大きなベッドが1つだけあるが、とてもじゃないけど座る気になれない。

私が辺りをキョロキョロしていると、その時耳につけているイヤホンから別室で待機している芸人さんの声が聞こえてきた。

「香音ちゃん、聞こえるー?」
「あ、はーい。聞こえまーす」
「そっちどう?どんな感じ?」
「…いや、めちゃくちゃ不気味です。あの、もうそっち戻ってもいいですか?」

私がこの状況に耐え切れずにそう言ったら、芸人さんに「まだ5分も経ってへんよ」と突っ込まれた。
いや、だとしてもこの状況は思っていたよりもヤバい。

だってついさっきまで一緒にいたスタッフさんたちも誰一人としていないわけだし、一気に辺りがシーンと静まり返ってしまっている。
皆は私がいる階の一つ下の1階にまで下りてしまっているし、今この2階にいるのは私だけ、という状況だ。

特別何かある、というわけではないけれど、そばにあるクローゼットの中には骸骨が…と思ったらもう怖くてたまらない。
っていうかこの骸骨って、所謂白骨化した人の遺体…だよね?
警察に言うべきだよね?…いや、もしくは既に通報済みなのかな。
だけど今はそんなことよりもとにかく恐怖の方が勝って、私はそのうちにあまりの恐怖で芸人さんに「何か歌って下さい」とお願いした。

…───しかし、お願いした直後だった。

「…!」

えっ…?

次の瞬間、鍵のかかっていないこの客室のドアから、2回ほどノックをする音が聞こえてきた。

「…うん?いま、ドアからノックの音が…聞こえてきました」
「え、ノック?嘘やん!」
「誰かこっち来てます?スタッフさんとか…」

しかし私がそう聞くと、耳のイヤホンから芸人さんの明らかに動揺した声が聞こえてくる。

「…いや、誰も行ってへんよ」
「え、」
「ちょお香音ちゃん!やめてーもう、怖いってぇー!」
「え、や、だって本当にっ…!」

そして私が芸人さんにそう言ったその直後、またしても同じノックの音が聞こえてきた。

「えっやだ!ほらまた!!」
「なぁ香音ちゃん、それ出れる?ドアの向こう見れる?」
「っ、無理です!誰か迎えに来て下さい!」
「香音ちゃん、勇気出して。一回ドア開けて、廊下の様子見てみよか」
「!…~っ、」

だけど芸能界というのは厳しいようで、いくら恐怖に怯えていてもここで何が何でも勇気を出さないといけないらしい。
そばには白骨化した遺体があるクローゼット。
そしてその前を通り過ぎた先には、この客室のドアがあって、そこでまたノックの音がコンコン、と聞こえてきた。

「!!…っ」

…誰…?

出来ればそのドアのノックの音に反応なんてしたくないけど、この恐怖を乗り越えれば、芸能界で名前が売れるなら…。
私はそう思って勇気を出すと、スタッフさんから借りた手持ちカメラを自分の外側に向けながら、ゆっくりとそのドアに近づき、手を伸ばした…。

「で、出てみますね」
「おう、気ぃ付けてな」
「…」

そして私はドアを開ける直前に一旦深く深呼吸をすると、大きな勇気を振り絞ってそのドアをゆっくりと開けた。

…すると、ドアの向こうに立っていたのは…




「っ、きゃぁぁあああーっ!!?」





さっき、1階の売店に立っていたはずの、あのマネキンだった。





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